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1章
ep1 代替制度~優紀~
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2025年、日本では国家主導で秘密裏に実験が行われる事になった。
昨今の少子化は国として存亡の危機にあると判断した政府は特別なバディ制度を実施する事により高校生の恋愛を活発にしようと計ったのだ。
今回はその一組の話をしよう。
「そうだ、歩いて自分の教室まで向かえ。」
耳の奥に取り付けられたイヤホンからそう声がする。
高校1年生の有田 優紀はその声の指示通りに動く。
「由美を見つけたら笑顔で手を振れ。」
優紀は教室に入るなりクラスメイトの園田 由美を探した。
「あ、優紀君おはよー。」
由美は優紀を見つけるなり手を上げて、挨拶してくれる。
それに対して無言の笑顔で手を振る優紀。
「近づいて、おはようと言え。」
「おはよう。」
「昨日の「ワンともランド」見た?」
「昨日の「ワンともランド」見た?」
もうこの操作される生活を始めて半年以上は経っている。
バディからの指示を正確にこなすのも慣れたものだ。
「見た見たー。最初に出てた子めっちゃ可愛かったよねー。」
「だよねー。いつかあの犬種飼ってみたいなぁ。」
優紀の性格、生活は高校生活の3年間、バディによって買われている。
契約満了時に支払われる多額のお金の代わりに家にいる時以外の全ての行動がバディの指示通りなのだ。
この契約は家族自身も知らない。
限られたルートから実験の被験者を選定しているのだが、バディから資金が出ているらしいので、それでも、もう一度高校生活を送りたいと思っているお金持ちの人間もいるのだろう。
耳奥にイヤホン、眼鏡には収音機とカメラが内蔵されている優紀が指示通りに会話していると、ホームルームのチャイムが鳴る。
「またね。」
優紀は由美の手を優しく触ってから、自分の席に歩いて座る。
本来の優紀ならこんな事は絶対にしないだろう。実験が始まったのは5月からだったが、それまでは由美と会話する事もなかった。
由美だけではない、女子と話すだけすら億劫だった優紀が今のバディとの契約を結んでから頻繁に女子に声をかけるようになり、周りの男友達からもよくいじられたものだ。
そんな男友達との会話をもバディは楽しんでいるようで、時々イヤホンから笑い声が聞こえたりもした。
初めの方に大変だったのはバディの笑うタイミング、怒る感覚、悲しむ声などがわからずに会話をすると優紀は言ってる事と表情、仕草が連動できずに取り繕うのが大変だった。
それも半年もすると慣れてきたものだ、今では周りの人たちも不思議がる表情をせずに話しかけてくれる。
「で、ここがテスト範囲だから良く覚えとくように。」
教師の声を聞きながら、黒板をノートに写す優紀。
授業中の声も聴いているのだろうが、指示自体は「しっかりノートに書くように。」という適当な物だった。
しかし、テストとなるとバディからの指示通りに答える事になる。幸いだったのはバディの頭が良かった事だろうか、優紀は何も考える必要がなく、言われるがままに答案用紙を埋めていくといつも90点から100点だった。
学年の中でも1、2を争う頭の良い人として認知される優紀。実際はほとんどのテストの答えがわかっていないのだが。
体育の授業ではある程度は指示に対応するものの、50m走で6秒切れなどの肉体的に限界がある事はせずに済んだ。ある程度、この辺の線引きはされていたので助かる。
それでも困難な事は沢山あった。
優紀がお弁当を食べてる時も甘い、辛いなどの細かいニュアンスがバディには伝わらない。
優紀がやりたいと思う状況に見舞われても指示がないと動く事ができない。
優紀が本当に好きな人がいても、その人を見る事すら叶わなかった。
それでも優紀は高校生活3年間をやり抜くしかなかった。
契約書には3年間を終えてからお金の支払いを受ける事になっている。
そのお金は一生を送るには十分な金額だと、高校生の優紀にもわかる額だったからだ。
国が仲介に入ってくれる事で信用もあり、命の危機に瀕するような滅茶苦茶な指示もなかった。
「今日は授業終わりに由美をクリスマスデートに誘うぞ。」
イヤホンから声がする。
たまにこんな感じに先に指示があると動きやすくて優紀は助かっていた。俺のバディは中々に人を操るのに長けているようだ。そう思いながら、チャイムの音を聴くと由美が教室から出て行かないうちに声をかける。
「園田さん、クリスマスイヴの日空いてる?」
「園田さん、クリスマスイヴの日空いてる?」
優紀はクラスメイト全員が見ている中で由美にクリスマスの予定を確認した。
「そこは近づいて、小声で言う所だろうが。」
バディからの不機嫌そうな注意が入った。
何で注意が入ったかは直ぐにわかる。優紀と由美はクラスメイトに囲まれて質問責めにあってしまったからだ。
バディが面倒臭そうにあれやこれやと回答していく。
優紀はそれを一言一句聞き逃さないつもりでそのまま声にするだけだ。
「24日。空いてるよ?」
恥ずかしそうな声で聴こえた方を向くと由美が顔を真っ赤にして優紀を見ている。
その後はクラスメイトが盛り上がる中、デートの時間、待ち合わせ場所を決める事になった。
二人きりで学校外で会うのは初めてだ。
おそらくこの日、バディは由美に告白しようと思っているのだろう。
そして、優紀は自分の感情を押し殺して、イヤホンから聴こえる声を頼りにその場を乗り切る事しかできなかった。
昨今の少子化は国として存亡の危機にあると判断した政府は特別なバディ制度を実施する事により高校生の恋愛を活発にしようと計ったのだ。
今回はその一組の話をしよう。
「そうだ、歩いて自分の教室まで向かえ。」
耳の奥に取り付けられたイヤホンからそう声がする。
高校1年生の有田 優紀はその声の指示通りに動く。
「由美を見つけたら笑顔で手を振れ。」
優紀は教室に入るなりクラスメイトの園田 由美を探した。
「あ、優紀君おはよー。」
由美は優紀を見つけるなり手を上げて、挨拶してくれる。
それに対して無言の笑顔で手を振る優紀。
「近づいて、おはようと言え。」
「おはよう。」
「昨日の「ワンともランド」見た?」
「昨日の「ワンともランド」見た?」
もうこの操作される生活を始めて半年以上は経っている。
バディからの指示を正確にこなすのも慣れたものだ。
「見た見たー。最初に出てた子めっちゃ可愛かったよねー。」
「だよねー。いつかあの犬種飼ってみたいなぁ。」
優紀の性格、生活は高校生活の3年間、バディによって買われている。
契約満了時に支払われる多額のお金の代わりに家にいる時以外の全ての行動がバディの指示通りなのだ。
この契約は家族自身も知らない。
限られたルートから実験の被験者を選定しているのだが、バディから資金が出ているらしいので、それでも、もう一度高校生活を送りたいと思っているお金持ちの人間もいるのだろう。
耳奥にイヤホン、眼鏡には収音機とカメラが内蔵されている優紀が指示通りに会話していると、ホームルームのチャイムが鳴る。
「またね。」
優紀は由美の手を優しく触ってから、自分の席に歩いて座る。
本来の優紀ならこんな事は絶対にしないだろう。実験が始まったのは5月からだったが、それまでは由美と会話する事もなかった。
由美だけではない、女子と話すだけすら億劫だった優紀が今のバディとの契約を結んでから頻繁に女子に声をかけるようになり、周りの男友達からもよくいじられたものだ。
そんな男友達との会話をもバディは楽しんでいるようで、時々イヤホンから笑い声が聞こえたりもした。
初めの方に大変だったのはバディの笑うタイミング、怒る感覚、悲しむ声などがわからずに会話をすると優紀は言ってる事と表情、仕草が連動できずに取り繕うのが大変だった。
それも半年もすると慣れてきたものだ、今では周りの人たちも不思議がる表情をせずに話しかけてくれる。
「で、ここがテスト範囲だから良く覚えとくように。」
教師の声を聞きながら、黒板をノートに写す優紀。
授業中の声も聴いているのだろうが、指示自体は「しっかりノートに書くように。」という適当な物だった。
しかし、テストとなるとバディからの指示通りに答える事になる。幸いだったのはバディの頭が良かった事だろうか、優紀は何も考える必要がなく、言われるがままに答案用紙を埋めていくといつも90点から100点だった。
学年の中でも1、2を争う頭の良い人として認知される優紀。実際はほとんどのテストの答えがわかっていないのだが。
体育の授業ではある程度は指示に対応するものの、50m走で6秒切れなどの肉体的に限界がある事はせずに済んだ。ある程度、この辺の線引きはされていたので助かる。
それでも困難な事は沢山あった。
優紀がお弁当を食べてる時も甘い、辛いなどの細かいニュアンスがバディには伝わらない。
優紀がやりたいと思う状況に見舞われても指示がないと動く事ができない。
優紀が本当に好きな人がいても、その人を見る事すら叶わなかった。
それでも優紀は高校生活3年間をやり抜くしかなかった。
契約書には3年間を終えてからお金の支払いを受ける事になっている。
そのお金は一生を送るには十分な金額だと、高校生の優紀にもわかる額だったからだ。
国が仲介に入ってくれる事で信用もあり、命の危機に瀕するような滅茶苦茶な指示もなかった。
「今日は授業終わりに由美をクリスマスデートに誘うぞ。」
イヤホンから声がする。
たまにこんな感じに先に指示があると動きやすくて優紀は助かっていた。俺のバディは中々に人を操るのに長けているようだ。そう思いながら、チャイムの音を聴くと由美が教室から出て行かないうちに声をかける。
「園田さん、クリスマスイヴの日空いてる?」
「園田さん、クリスマスイヴの日空いてる?」
優紀はクラスメイト全員が見ている中で由美にクリスマスの予定を確認した。
「そこは近づいて、小声で言う所だろうが。」
バディからの不機嫌そうな注意が入った。
何で注意が入ったかは直ぐにわかる。優紀と由美はクラスメイトに囲まれて質問責めにあってしまったからだ。
バディが面倒臭そうにあれやこれやと回答していく。
優紀はそれを一言一句聞き逃さないつもりでそのまま声にするだけだ。
「24日。空いてるよ?」
恥ずかしそうな声で聴こえた方を向くと由美が顔を真っ赤にして優紀を見ている。
その後はクラスメイトが盛り上がる中、デートの時間、待ち合わせ場所を決める事になった。
二人きりで学校外で会うのは初めてだ。
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