~巻き込まれ少女は妖怪と暮らす~【天命のまにまに。】

東雲ゆゆいち

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第一話:選ばれし七名。

03選ばれし七名。

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「えっ!?」


(戦う!?)


急に不穏な空気へとなり、周りもざわつく。

今まで平穏かつ平凡に暮らしていたのにも関わらず戦場へおもむけと言うのだろうか。


(それなら適材適所できた人がおもむくべきでは……?)


「戦うとなると不安も大きいだろう。だが、何も武装も無しに戦えとは言ってはいない。君達には妖である狛犬の力を借りる事が出来る」


次第に内容が胡散臭うさんくさくなってきた。


(妖の力?それを人間が借りてどうするの?)


それならその狛犬が戦った方が数倍早いに決まってる。


「それならば狛犬に戦ってもらっては?わざわざ力の無い人間が出向く必要性があるのでしょうか?」


先程と同じ女性の質問に、周りもうんうん頷いている。


「妖怪が一匹とは限らないだろう?たくさん来れば人数も必要になる。君達には式神を使い、手助けをして欲しいと考えている。そして、この初の転移を試してもらいたい」


(一番はむしろ最後の一言が本音なんじゃ……?)


納得のいかない雰囲気が立ち込める。危険が無いとは言い切れない。

戦いとなればもしかして、は必ず起こり得る。

そう分かっていて、誰が一言返事で了承出来るだろう。


(私だって、怖い)


こんなよく分からない事に命をかけるなんて、出来るならしたくない。

紗紀は言い知れぬ恐怖に俯き。

拳を固く握り締めた。

まだ十八歳という若さなのだから仕方もない。


「君達の不安は痛い程理解出来る。だからこそ報酬ほうしゅうは手厚くしよう。この任務が無事に終われば、君達には老後の生活まで裕福に過ごす権利を与える。働きたく無い者は働かなくてもいい。入りたい会社や学校に行かせる事も可能だ。やってみたい事、習い事、何でもさせよう。この任務に勤(いそ)しみながら未来について深く考えてみてはいかがかな?」


その言葉に不穏にざわついていたはずが、なぜか明るい雰囲気へと包まれる。

結局はお金なのかもしれない。

正直な話、これから一人で何の保証も無く生き抜くのに自信が無かった。

紗紀には守るべき者も、残されて泣く者も居ない。

両親は紗紀が小学生の頃に離婚し、今はお互い新しい家庭を築いている。

高校まで育ててくれていた祖母も紗紀の就職が決まり、引越した矢先に亡くなった。

そう、何も無いのだ。

ならば、このけに乗るのも悪い話では無い。


(せっかく選んでもらったんだ。必要とされてるならば私でいいなら、やってみたい)


大きなチャンスのように感じた。


「引き受けてくれる者はここにサインを。会社や学校、その他の者達にはこちらから連絡しよう」


悩んでいたはずなのに、結局全員がその契約書にサインをしていた。


「ありがとう、本当にありがとう。君達の事を私はほこりに思う。そしてどうかこの国を、君達の力で救って欲しい」


わざとらしくハンカチで涙を拭いながらそう言うと、男は立ち上がった。そうして壁際にスーツ姿で立っていた七名を手の平で指し示す。


「さて、紹介をしよう。こちらが神社を守っている狛犬の皆様だ」


紗紀は思わず唖然あぜとしてしまった。


(イメージと違う!)

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