わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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「お弁当好きなのとってください。席は決まってないので、お好きなところにどうぞ」

 本社ビルで一番大きな会議室が食事会場へと早変わりした正午過ぎ。運ばれて来たお弁当をテーブルにずらりと並べる。都内で美味しいと評判の野菜中心の女性に大人気の仕出し弁当。3種類のメニューを用意していて、私は既に自分用に好きなのものを確保している。

 お茶やコーヒー、食後に食べられる小さな焼き菓子を用意している内に、女性社員達が次々と会議室にやってきた。

 今日は定期的に行われている椛乃社長と女性社員のランチ会。

 社員との距離を縮めたり、意見をヒヤリングすることが目的で、先週は男性社員とのランチ会も実施した。
 参加は強制じゃない。社員それぞれ仕事があるし、参加出来ない人はいる。だけど今日もいろんな部署から女性社員が参加してくれる。
 
 化粧品会社だけあって女性の意見は特に必須。私みたいにお洒落と美容が好きな社員ばかりだから、自然といつもランチ会は盛り上がる。
 
「黒瀬さん準備ありがとう」
「とんでもないです。あ、椛乃社長の分はもう席に用意してます」
「ありがとう。自分の分は?」
「もちろん確保済みです」

 やってきた椛乃社長にVサインを見せると、くすっと綺麗な笑顔が返ってくる。「片付けは手伝うね」と続ける椛乃社長は本当に優しい。
 すると椛乃社長の優しい瞳が私を覗き込んだ。

「……社長?」

 何か顔についてる? いや、ここに来る前に鏡見たから大丈夫だと思うけど――。

「もしかしてちょっと体調悪い?」
「え?」

 ちょっと顔色が悪くみえるから。椛乃社長は、そう続けながら心配そうな表情を浮かべた。すごい、隠してるつもりだったのに分かっちゃうんだ。これだから椛乃社長は凄い。

「実はちょっと喉がイガイガしてて……」
「大丈夫? のど飴あるけど持ってこようか?」
「大丈夫です。持って来てますし、すぐ治ると思います」

 椛乃社長の指摘通り、実はちょっと風邪気味。昨日少し残業して家に帰った時から喉のあたりに違和感があって、唾を飲み込むと時々痛い。

 だけど熱もないし、咳もない。声も枯れている訳ではないので、今のところはのど飴があれば問題ない。けど……朝に比べてちょっとだけ頭が重たい気がしている。気のせいだといいけど……。
 
 些細な変化にも気づいてくれたことに改めてお礼と仕事は問題ない旨を伝えて、椛乃社長に席へ行くように促す。女性社員達も続々と好きなお弁当を取って、適当な席へと座る。
 
 全員が揃えば、ランチ会のスタートだ。
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