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1章
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しおりを挟む短い感想ではあるが、口数少なく、とにかく口に放り込む。そのペースは落ちることなく、具沢山の味噌汁をかきこみ、サラダで味変をする。このサイクルは止まらない。
お世辞を並べられるより、このような行動が一条には至福の瞬間だった。
「おかわり」茶碗を掲げ、口内にはまだ唐揚げと白米がミックスしている最中の柳瀬。だぼっとしたスウェットに、風呂上がりの暗くなった金髪頭で少年のように感じる。それを見ていると、母性本能が擽られる女子の気持ちが理解できる気がした。
「ごちそうさま。・・・・・・満足」
そう言って、柳瀬は丁寧に合掌して、食器を片す。
昼にはパンを大量に食らい、それが物足りなくて食堂へ赴き、2日連続で生姜焼きを胃袋に収めてみたもののどうにも満足できなかった。
それがどうだ。一条宅に招かれるのがなんとなく気まずくて遠慮したいはずなのに、こうして唐揚げをおかずに白米を5杯もおかわりをした挙げ句、満足して寛ぐ始末である。
「僕もお風呂入ってくるから、好きなようにしてて」
「サンキュ」
(ん? 俺、風呂入らせてもらうのはすげーありがたかったけど、ん、ん? 流されて泊まる流れになってね?)
テレビをつけているが、もはや耳に入って来ていない。一条とすれ違ったことや、今日やけに「カースト制度」について語る教師のことでむしゃくしゃしていたが、今腹が満たされ心地よい眠気が襲ってくる。
食卓を囲む、ということがこれだけ充足感に満ちるものであるかも十分に感じながら、睡魔に負けてしまおうか、瞼の重みが増してくる。
一条が風呂から上がり、リビングへのドアを開ける。
垂れ流されていたテレビは何かのドキュメンタリーで、柳瀬が見ているとは思えない。
「柳瀬、テレビ見てな――ふふ、寝てる」
ベッドを背もたれに寝落ちしている柳瀬は健やかな寝顔を見せる。
見飽きない寝顔を小1時間見ていたいくらいであったが、寝ている体勢がきつそうなので一条は柳瀬を抱き上げた。ゆっくりとベッドに寝かせて、自分もそこへ入る。朝の支度を予めしておいて良かったと数時間前の自分を褒め称えたい。
シングルという男2人には狭いベッドで、おもむろに柳瀬を抱き寄せる。すっぽりと埋まってしまう華奢な体の何処に先程の飯が収まっているのだろう。感心するまでの大食漢に惚れ惚れする。
常夜灯の灯りに切り替え、一条も目をつむる。
(いや、ここは手を出しても・・・・・・)
艷やかな頬を掌で覆い、そっと自分の唇をあてがう。触れるだけでも柳瀬にとっては理由が必要だ。
「――オプションだぞ、それ」
「起きてたの」
「目が覚めんたんだよ」
「そっか。じゃあ、起きてる柳瀬ともう一回したい」
「オプション――っ!!」
容易く口内への侵入を許し、歯列をなぞれば柳瀬もそういうスイッチを入れてくれる。ツケで払えとでも言わんばかりに睨めつけるが、抵抗の力は微々たるものだ。
息も絶え絶えに、「昨日のこと気にしてないのかよ・・・・・・」柳瀬は組み敷かれている相手を気遣う。
「うーん、忘れてないけど・・・・・・いいよ、明日オプション料払うから」
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