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1章
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最中に考えることではないが、今日はタバコを吸うことにはならなさそうだと感じた。胃袋を掴んだ後の情事だからか? 思案に耽りそうになる。
「っおい、上の空・・・・・・とか、俺に失礼っとか考えないのか?」
「あ、ごめん! 柳瀬のこと考えてた」
「実物目の前にして、何いってんだ」
「ごめんってば! ちゃんと構ってあげるから、許して?」
快感だけを抉り取るように、柳瀬の奥に直進しては引き返し、嬌声の呼応が返ってくる。どうにも、一条と柳瀬はいわゆる「相性が良い」というのだろう。
何をどう弄っても、互いに悦楽の坩堝に嵌っていく。結局一条は、一晩中柳瀬を抱き潰してしまい、夜更け頃に気絶する形で眠った。
疲れ果て眠る柳瀬を横目に、前回同様ベランダに出てキャビネットから取り出したタバコを片手に遠くを見る。柳瀬が部屋で眠っているので実際に吸うことはしない。それに、キスをするのにオプション料を求めてきたことは以前と何ら変わらない。
しかし、ウリをやっている割にははみ出した分は返し、夕飯の材料費は柳瀬が持つ、このようなお金の回り方であるから大体が柳瀬の赤字だ。明確な根拠はないものの、月2000円の月払いにおいて夕飯を当たり前のように馳走になっている。
朝焼けの町並みを見て、多少の希望が見えたような気がした。
ベランダから寝室、もといリビングに戻り、タバコを直す。それからベッドに再び入って柳瀬を抱き寄せれば、柳瀬の香りと一条宅のシャンプーが混じった匂いがする。
柳瀬が起きたらオプション料と一緒に来月の分も払おう。それまで惰眠を貪っていよう。
二度寝を決行した一条にぎゅうぎゅうに抱きしめられている柳瀬は、夢にうなされることになった。
(んぅ・・・・・・苦しい、俺これ以上食えない――)
大量の唐揚げを前に大敗を喫した柳瀬は、苦しさに耐えかねて目を閉じる。すると意識が浮上してきて夢から覚める。そして、急にシーンが切り替わった原因を知る。
「一条、てめ・・・・・・」
一条の絞め技並みの力加減に胸や腹が圧迫されていた。その締め付けをゆっくり解除して、ベッドを立つ。柳瀬が抜けたベッドは本来の使用可能人数に戻ったはずだが、一条は未だ柳瀬が腕を解いたままになっていて、抜け殻でも抱いているかのごとく空間が開いている。
眉をしかめ、指をわきわきとしている。寝ながら存在を確かめているかのようだ。
「クク、その手なんだよ・・・・・・気持ち悪ぃ」
わきわきしている一条を尻目にトイレへ行く。その帰りにキッチンへ向かうと、コンロには鍋が一つある。中を覗けばミネストローネが作られていた。これも具沢山で栄養面に気を遣われたメニューだ。
「・・・・・・」
完全に目が覚めた柳瀬は再度リビングに戻り、ベッドにもたれるように座る。一条を起こすのも躊躇われるが、暇だ。辺りを見回して、生徒会長なる者成績上位を収めているだろう、そう思って一条の鞄や本棚を漁る。普段邪魔している時は、大抵家主が起きていることが多く、特段「宝探し」のようなことを目がある状態ではやれなかった。
そこで、柳瀬は気付いてしまった。幾度となく邪魔してきた一条宅の宝探し、いわゆる紙媒体でオカズとしている物を探したことがなかったのだ。
たしかに、初めはウリをする相手としか認識していなかったために、興味がなかった。しかし、今は――。
連立された本の上にかさばるように重ねてあった雑誌が、ばさばさと落下する。何の雑誌かと拾うと「男性の胃袋を掴めるガッツリ飯50選!!」が目に飛び込んできた。それも季節に合わせて4冊コンプリートしていて、ところどころ付箋を貼っているのを見る限り実用化しているようだ。
呆れた笑いが一笑。
付箋のページをめくれば、メモ書きで「柳瀬に好感触」、「栄養面に特化しているため、柳瀬には不人気」と実践した結果を記している。それに、4冊とも皺がついて本の厚みが増していることで、使い込まれているのがよく分かる。
「俺は何でも好きだったけど」
――分かるからこそ、この本を見て見ぬ振りする他なかった。
「っおい、上の空・・・・・・とか、俺に失礼っとか考えないのか?」
「あ、ごめん! 柳瀬のこと考えてた」
「実物目の前にして、何いってんだ」
「ごめんってば! ちゃんと構ってあげるから、許して?」
快感だけを抉り取るように、柳瀬の奥に直進しては引き返し、嬌声の呼応が返ってくる。どうにも、一条と柳瀬はいわゆる「相性が良い」というのだろう。
何をどう弄っても、互いに悦楽の坩堝に嵌っていく。結局一条は、一晩中柳瀬を抱き潰してしまい、夜更け頃に気絶する形で眠った。
疲れ果て眠る柳瀬を横目に、前回同様ベランダに出てキャビネットから取り出したタバコを片手に遠くを見る。柳瀬が部屋で眠っているので実際に吸うことはしない。それに、キスをするのにオプション料を求めてきたことは以前と何ら変わらない。
しかし、ウリをやっている割にははみ出した分は返し、夕飯の材料費は柳瀬が持つ、このようなお金の回り方であるから大体が柳瀬の赤字だ。明確な根拠はないものの、月2000円の月払いにおいて夕飯を当たり前のように馳走になっている。
朝焼けの町並みを見て、多少の希望が見えたような気がした。
ベランダから寝室、もといリビングに戻り、タバコを直す。それからベッドに再び入って柳瀬を抱き寄せれば、柳瀬の香りと一条宅のシャンプーが混じった匂いがする。
柳瀬が起きたらオプション料と一緒に来月の分も払おう。それまで惰眠を貪っていよう。
二度寝を決行した一条にぎゅうぎゅうに抱きしめられている柳瀬は、夢にうなされることになった。
(んぅ・・・・・・苦しい、俺これ以上食えない――)
大量の唐揚げを前に大敗を喫した柳瀬は、苦しさに耐えかねて目を閉じる。すると意識が浮上してきて夢から覚める。そして、急にシーンが切り替わった原因を知る。
「一条、てめ・・・・・・」
一条の絞め技並みの力加減に胸や腹が圧迫されていた。その締め付けをゆっくり解除して、ベッドを立つ。柳瀬が抜けたベッドは本来の使用可能人数に戻ったはずだが、一条は未だ柳瀬が腕を解いたままになっていて、抜け殻でも抱いているかのごとく空間が開いている。
眉をしかめ、指をわきわきとしている。寝ながら存在を確かめているかのようだ。
「クク、その手なんだよ・・・・・・気持ち悪ぃ」
わきわきしている一条を尻目にトイレへ行く。その帰りにキッチンへ向かうと、コンロには鍋が一つある。中を覗けばミネストローネが作られていた。これも具沢山で栄養面に気を遣われたメニューだ。
「・・・・・・」
完全に目が覚めた柳瀬は再度リビングに戻り、ベッドにもたれるように座る。一条を起こすのも躊躇われるが、暇だ。辺りを見回して、生徒会長なる者成績上位を収めているだろう、そう思って一条の鞄や本棚を漁る。普段邪魔している時は、大抵家主が起きていることが多く、特段「宝探し」のようなことを目がある状態ではやれなかった。
そこで、柳瀬は気付いてしまった。幾度となく邪魔してきた一条宅の宝探し、いわゆる紙媒体でオカズとしている物を探したことがなかったのだ。
たしかに、初めはウリをする相手としか認識していなかったために、興味がなかった。しかし、今は――。
連立された本の上にかさばるように重ねてあった雑誌が、ばさばさと落下する。何の雑誌かと拾うと「男性の胃袋を掴めるガッツリ飯50選!!」が目に飛び込んできた。それも季節に合わせて4冊コンプリートしていて、ところどころ付箋を貼っているのを見る限り実用化しているようだ。
呆れた笑いが一笑。
付箋のページをめくれば、メモ書きで「柳瀬に好感触」、「栄養面に特化しているため、柳瀬には不人気」と実践した結果を記している。それに、4冊とも皺がついて本の厚みが増していることで、使い込まれているのがよく分かる。
「俺は何でも好きだったけど」
――分かるからこそ、この本を見て見ぬ振りする他なかった。
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