アヤ取り

ゴンザレス

文字の大きさ
2 / 39

2

しおりを挟む
「事件に巻き込まれた子……か。子どもとはいかに数奇な運命に巻き込まれながら生まれてくるものというのが分かるな。だが、安心しろ。あの子は実直に育っている」
「そうですか……。一安心ですね。では——」
「あの子を引き取らないのか」
「……っ」

 鴬はスマホ越しに見ていた2人から、視線を上げて目を丸くする。正気の沙汰ではない桔平に、今すぐ割って入って説得したい、だが、人払いをさせていただけに、此処で見つかってしまうのは何よりもまずい事を知っていた。

 言いようのない焦燥感に駆られて、スマホを持つ小さな手が震える。

 この映像が証拠として使える日が来るかもしれない、その一心で震える手で撮り続ける。

「引き取れないです……。赤の他人を勝手になんて……」

(そうだよ、普通に考えてあり得ないでしょ)

「……じゃあ、こうしようじゃないか。お前さんの誠実さに免じて、定期的に仁作の情報を久我さんに渡すことにしよう」
「そんな事、してもらえるんですか……?」
「まぁ、それなりの見返りをもらうに決まってる。こちとらボランティアやれる程余裕はないんでね。こっちの信念を貫き通すため、日々齷齪あくせくしてんだ。何より——警察との癒着はこちらとしてもありがたいしな」
「……そうなりますよね」
「その覚悟無しでウチの玄関跨いだとは言わせんぞ」
「いえ……その覚悟もしてきました」
「じゃあ、早速交渉と行こうじゃないか」
 交渉の言葉に反応した鴬は、眉をひくつかせて見守る。
「ウチも他と同様極道一家だ。一本独鈷いっぽんどっこでやっているとはいえ、やはり法に抵触するようなこともたまにはやってる」

 常盤組は大きな組織ではなく、常盤をピラミッドの頂点としてその下に数個の弟分となる組があるだけで、他所の大きな組織と比べると見劣りする。
 しかし、常盤組の真髄は「信念に基づく教育」であり、これが他所とは違う強みとなって周りを圧倒している。まさに一本独鈷の組織と言ってもいい。

「……ええ、そのようですね」
「……だが、お前さんハムと呼ばれる警察なら、私らが事を起こすまで監視し続けるのだろう? 他所の組のモンが捕まる時は決まって、賭場で闇取引きをした直後であったり、抗争なら発砲した直後であったりと、話が上がってる」
「そちら側の人にハムと呼ばれたのは初めてですね」
「なぁに、私は揶揄して言ってるんじゃない。そのやり方なら私らもお前さんの情報提供に協力してやれるだろうって話だよ。こっちだってグレーなことは実際にやってるんだ、大きな事をしなければ目を瞑ってもらえる、と捉えてもいいということだもんな?」

 急に高圧的な態度を示し出した桔平の策略を、鴬はまじまじと凝視する。

「流石ですね——分かりました」
「おっと、それだけと思うのか。うちの大事な息子の近況報告をしてやるってんだぞ? そんなに安いわけないだろう」
「……」
「こちらに被害が及びそうな事案が発生した場合、逐一こちらに連絡を寄越すこと。これは組を守るというより、仁作の身を守ることになると考えれば、そう難しい話ではないだろう」
「……はは、仮にも極道ってわけですか」
「そうだな。加えて、こちらからの情報開示は一切行わない。それにやりとりは全て書簡で行う」
「それを了承するだけのメリットは——」

 ここで桔平が食い気味に「仁作は何にも替えがたい宝物だろう」という。

「はい……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

処理中です...