復讐代行

深海雄一郎

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松前の推理

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翌朝、斎藤茜の司法解剖の結果が発表された。死因は家庭用包丁で腹部を刺されたことによる出血死で、死亡推定時刻は午後3時50分から4時ごろと断定された。管理人が被害者の悲鳴を聞いた時刻とも近いことからほぼ間違いないであろう。問題は凶器の行方である。丁寧に洗う時間などなかったはずだから、血がべったり付いたまま、何かに包んで犯人が持ち去ったに違いない。その犯人は、小川英介ではないのか。松前の推理はこうだ。小川はデートに誘う名目で、斎藤茜の部屋に入り込んだ。彼だったら、被害者も怪しまずに部屋に入れるであろう。そして、なんらかの原因で彼女と喧嘩をしてしまい、とっさに台所にあった家庭用ナイフで茜を刺してしまった。彼女の悲鳴で誰かが駆けつけるのは時間の問題だ。彼は急いで、血まみれの包丁を何かに包んで、ドアを開けたまま立ち去った。そして彼女と行くはずだった、あらかじめ予約していた料理店に行き、あたかも、彼女と待ち合わせをしていたかのようにカモフラージュをしたのではないのか。もちろん、これは推測の域を出ない。松前自身、一つの仮説を組みたてただけであり、まだ小川英介を犯人と断定しているわけではない。あくまでも一つの可能性に過ぎないのだ。
被害者が務めていた会社の上司や同僚から話を聞いてみたが、仕事ぶりはよく、評判は悪くなく、むしろいい方で、誰かとトラブルになったということもなさそうであった。となると、以前有力容疑者は小川英介一人だけということになってしまう。『小川が犯人じゃありませんか』田中刑事が松前に行った。『どんなに被害者の身辺を洗っても、有力容疑者は小川一人だけしか浮上しませんからね』
『小川が犯人にせよ。証拠が必要だ。証拠がなければ手も足も出ない。』松前はお茶を飲みながら行った。
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