アマチュア団体殺人事件

深海雄一郎

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三島武彦のマンションから、佐藤修二の住んでいるアパートまで、車で、30分ぐらいかかった。見るからにみすぼらしいアパートであった。佐藤修二の部屋は、二階の、真ん中あたりにあった。部屋に入ると、居間の方で、首を縄で、くくって死んでいる、男の遺体があった。
「インターホンを鳴らしても、応答がなく、部屋の鍵が開いていたので、中に入って、遺体を見つけました。管理人に、確かめたところ、佐藤修二本人に間違いありません。これが、机の上に置いてあった遺書です。」
部下の刑事がそう言って、矢口に、遺書を渡した。
矢口は、遺書を確かめると、佐藤修二の遺体を見つめた。首筋の方を見て、急に顔色を変えて言った。
「これは、自殺に見せかけた他殺だな。」
部下の刑事は、驚いた顔をして、「どうしてですか。」
「この首筋をよく見ろ。吉川線があるだろう。」
吉川線とは、犯人によって、首を絞められた際に、被害者がもがいて抵抗して、自分の首を爪で引っ掻くことでできる、線のことである。その線が、佐藤の首筋に残っていた。
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