もう一つの凶器

深海雄一郎

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事情聴取

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霊安室の隣にある空室で、木嶋里美に対する事情聴取が始められた。用意した、机を挟んで、パイプイスに座って、矢口警部補と、木嶋里美は対面する。矢口の隣には、部下の若杉刑事が座っている。
『早速ですが、事情聴取を始めさせて頂きます。申し訳ありませんが、確認のために、氏名と年齢、職業を教えていただけませんか。それと、身分証明書を提示して頂きたい。』
『名前は木嶋里美です。年齢は、23歳です。職業は、この近くの株式会社で事務をしています。』運転免許証を矢口に見せながら言った。矢口はお礼を言って、免許証を返して続ける。
『唐突な質問ですが、木嶋修一さんの、別れた奥さん。つまりあなたのお母様ですが、今どちらにいらっしゃいますか』
『母は、五年前に父と別れた一年後に、病気で亡くなりました。私が高校を出て、働き始めたすぐの事でした。』
『そうでしたか、それはお気の毒に。ご葬式に、お父様はいらっしゃいましたか』
『ええ、来ました。母の遺影に泣きながら、私に謝罪してきました。葬式を挙げる余裕はなかったんですが、親戚の方が援助してくれて。その親戚の方が、父に知らせたみたいです。』
『失礼ですが、離婚の原因は』
『話さなくてはいけませんか』
『できれば』矢口が頭を下げる。『父による家庭内暴力です。母だけでなく、私にも』
『そうでしたか。お話頂き、ありがとうございます。お父様は、何のお仕事をされていましたか。』
『トラックの運転手でした。ですが、腰を悪くしてしまって、仕事を辞めてしまって、それから酒浸りの生活になって、暴力が始まったんです』
『そうでしたか。また、辛いことを思い出させてしまい、申し訳ありません。まだ、質問を続けたいんですが、どうでしょう、少し休憩されますか』
『ええ、できれば十分だけ』矢口は了承して、一旦、事情聴取は中断になった。
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