もう一つの凶器

深海雄一郎

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事情聴取その2

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10分間の休憩の後、木嶋里美に対する事情聴取が再開した。『それでは、事情聴取を再開させていただきます。』矢口は、木嶋里美に向かって言った。『お父様が所有されていた通帳の口座に、一定期間、お金を振り込まれていましたね』『ええ』『お母様が亡くなられた四年前から、振り込まれています。葬式の際に、振り込んでくれるよう、お父様から頼まれたのですか』
『そうですね。生活に困っていると言われて。』木嶋里美は、下を向きながら言った。矢口は、首をかしげて、言う。
『しかし、あなたの生活にそんな余裕はなかったわけでしょう。自分たちを散々苦しめた男です。泣いて謝ってきた後で、お金を苦心されたら、憤りを感じると思いますが、金目当てで、葬式に来て、自分たちに謝りに来たのかと』
『確かにそうかもしれませんが、やはり父親なので』木嶋里美の言葉に、矢口は、疑念を感じたが、表情を変えずに続ける。『ですが、三ヶ月前までで、振込は終わっていますね。三ヶ月前に何かあったんですか』
『いえ、父の方から、もう振込はしなくていいと言われまして』
『お父様の方からですか。何か他に生活のあてでもできたんですかね』
『さあ、それは分かりませんが。』
『ちなみに、お父様は、携帯電話を所有されなかったみたいですが、どうやっていつもやり取りを』
『近くにある公衆電話から父がかけていました。なんでも、機械音痴で、携帯電話は苦手だと言っていましたから』
『そうですか。事件のあった金曜日の午前七時から八時ですが、どちらにいらっしゃいましたか』
『自宅にいました。会社が始まるのは9時からなので、8時15分ぐらいにアパートを出ました。』
以後、30分間、事情聴取は続いた。終わったのは、午後3時近くのことであった。
『ご協力ありがとうございました。最後にもう一つだけよろしいでしょうか。』『ええ』
『藤浪勤という男をご存知ですか』『いえ、知らないです』少しの沈黙の後に里美は答えた。
『この男なんですが』矢口は、木嶋里美に、藤浪の写真を見せた。里美は首を振った。これで事情聴取は終わった。
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