もう一つの凶器

深海雄一郎

文字の大きさ
14 / 33

14章

しおりを挟む
『結局、大した収穫はありませんでしたね』T刑務所の堀の壁の近くの道を歩きながら、若杉刑事は上司に言った。
高木所長が知っている、丸山和彦の、基本的な個人情報については、紙にコピーしてまとめたものを頂いた。その紙を見ながら、矢口は言った。
『丸山和彦の住所は、この近くだな。確か、両親と同居していると書いてある。行ってみるか。』
T刑務所から数10分程度の道のりで、丸山和彦の自宅に到着した。この辺りには、一軒家が集中して立っており、そのうちの一つの家に、丸山という表札が掲げられていた。矢口がインターホンを鳴らすと、50代ぐらいの、女性が出てきた。
『警視庁捜査一課の、矢口と申します。こちらは部下の若杉。丸山和彦さんは、こちらにお住まいでしょうか』
『和彦は、私の息子ですが、あの子が何か』母親は、不安げな顔で、矢口を見た。
『息子さんの恋人の父親が、何者かに殺害されまして。それで、参考程度にお話を聞きたいと思いまして。』
『分かりました。どうぞ、お入りください』
居間の方に、二人の刑事は案内された。父親の丸山士郎は、会社の仕事で不在だった。そこに、母親の、丸山公子に呼び出された、丸山和彦が姿を現した。二人の刑事は、一礼して、警察手帳を見せて、自己紹介した。
『丸山和彦ですが、里美の父親が殺された件で来られたと聞きましたが、僕は、事件については何も知らないんですが』
『ええ、そうかもしれませんが、手がかりが少ない事件でして。参考程度に、ご協力していただきたい。』
矢口は前置きを言って、続ける。『事件のことは、木嶋里美さんから伝わっていたんですか』
『ええ、昨晩、彼女から電話で。自分は心配ないから、安心してくれと』
『木嶋修一さんと、お会いしたことは』
『三ヶ月前に、里美と付き合うようになってから、一度だけありました。四年前から、父親にお金を振り込んでいると里美から聞かされたので、父親から暴力を受けていた事も。里美にやめるように言って、彼女につきまとわないように、あの男に、忠告しに言ったんです。』
だから、彼女は振り込むのをやめたのか。恋人の助言があったのか。矢口は続けて質問する。
『その時、木嶋さんの反応は』
『意外に、おとなしく、素直に了承してくれましたね。』
『喧嘩には発展せず、穏便に済んだということですね。ところで、話は変わりますが、藤浪勤という男をご存知ですね』
丸山和彦の眼が、一瞬変わったのを、矢口は見逃さなかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...