18 / 32
第十七話 遺言
しおりを挟む
朝は待ち合わせで集合することになっていたが、ほぼ同じ場所に居るので意味がないのは判っているがαの圭太がいるだけで他のβもαも近寄ってこない。フェロモンは薬で減っているのかもしれないが、雰囲気が少し違うように見えたかもしれないとジーっと少し伸長の高い圭太を見上げると、圭太はそれに気づいて
「あら、たかちゃんったら見つめられると襲っちゃうわよ?」
「いや、遠慮するがお前・・・そんな顔だったか?」
「え?ファンデ取れてる?」
「ちげーよ・・・」
本当に女性と会話しているようになり、本当に番なのかと諦めるしかなかったが、昨晩聞いた武の話を聞くと気がめいってしまうが、それに気づいたのは誠也だった。首を掴み二人しか聞こえない声で聞いてきた。
「もしかして、武の話聞いたんか?」
「え?知ってるのか?」
「何年同じ施設に居ると思うねん。最初は俺だけやったけど、最初見た時には死にたいと言って何度も脱走して大変やったで」
コソコソと話をしていると武がやってきて、二人の後ろから挨拶をすると二人は驚きビクンと跳ね上がった。同じ家のはずなのに遅く来た武と洋介だった。ニコニコと笑って過去の事がウソのようにも思えた。だが、それでも気を使ってしまう。
「ん?どうしたの?隆の顔色がよろしくない?」
「そうでもない!さて揃ったし学校に行こう!」
笑顔が怖かったのもあった。前を歩くのは顔を見せられないし見たくなかったからだ。
圭太も俺の為なら命を捨てるかもしれないが、辛い想いをして生きて行こうとは思わないだろう・・・。それでも守ってくれた命だから生きていこうとも思うだろう。
「たかちゃん、顔色悪いわよ?」
「・・・・うっさい!」
受け止められると判っていながらの拳は、やはりすんなり受け止められて拳にキスを落とすと隆は真っ赤になって開いている頭にカバンで殴った。鉄板でも入れておけば良かったかもしれない。
それでも三人は笑っていた。漫才を見るような感覚なのだろうか?それでも談笑する自分以外の番たちがおかしいのか、自分が気にし過ぎなのか分からない。誠也が言うように死にたいと言って何度も脱走して・・・それから?施設の中でも死のうと思えば死ねたはずだ。そこまでして何で脱走しようとしていたのか?
一つだけ思いついた。「墓参り」だと、だが墓参りなんていつでも出来るだろうにと思いながら学校についた。後で誠也にも聞いてみよう。
昼休みとなり、武がジャンケンで負けて買い出しに行った。もちろん加納が一緒について行っている。Ωのための購買だが限りがあるので、念のためだろう。
「はぁ?墓参り?番が死んだからって意味ないやん。もしくは済ませてるはずやで?」
「だよなぁ・・・?脱走までして何がしたかったんだろうな?」
「墓の隣で死にたかったんだよ」
爆発するように心臓が鳴ったと思ったら武が、今までにないくらい冷たい目でパンやおにぎりを机の上に置いた。そして黙って自分の買ったパンを食べると、聞かれてた話の続きが気になるのは当然のことで、思い切って聞こうと思ったが、先に武から口にした。
「先に死んだアイツの隣で死ぬために施設から何度も脱走しようとしてたんだよ。でもアイツは望んでなかったし、死にかけた時にアイツが夢に出たんだ。「何のために守ったんだ」ってな」
「そ・・そうか・・・」
番になると霊体となっても守っているのかもしれない、そうなると心も穏やかになるのかな?と思うが先ほどの表情を見る限り納得しているわけではなさそうだ。
「あら、たかちゃんったら見つめられると襲っちゃうわよ?」
「いや、遠慮するがお前・・・そんな顔だったか?」
「え?ファンデ取れてる?」
「ちげーよ・・・」
本当に女性と会話しているようになり、本当に番なのかと諦めるしかなかったが、昨晩聞いた武の話を聞くと気がめいってしまうが、それに気づいたのは誠也だった。首を掴み二人しか聞こえない声で聞いてきた。
「もしかして、武の話聞いたんか?」
「え?知ってるのか?」
「何年同じ施設に居ると思うねん。最初は俺だけやったけど、最初見た時には死にたいと言って何度も脱走して大変やったで」
コソコソと話をしていると武がやってきて、二人の後ろから挨拶をすると二人は驚きビクンと跳ね上がった。同じ家のはずなのに遅く来た武と洋介だった。ニコニコと笑って過去の事がウソのようにも思えた。だが、それでも気を使ってしまう。
「ん?どうしたの?隆の顔色がよろしくない?」
「そうでもない!さて揃ったし学校に行こう!」
笑顔が怖かったのもあった。前を歩くのは顔を見せられないし見たくなかったからだ。
圭太も俺の為なら命を捨てるかもしれないが、辛い想いをして生きて行こうとは思わないだろう・・・。それでも守ってくれた命だから生きていこうとも思うだろう。
「たかちゃん、顔色悪いわよ?」
「・・・・うっさい!」
受け止められると判っていながらの拳は、やはりすんなり受け止められて拳にキスを落とすと隆は真っ赤になって開いている頭にカバンで殴った。鉄板でも入れておけば良かったかもしれない。
それでも三人は笑っていた。漫才を見るような感覚なのだろうか?それでも談笑する自分以外の番たちがおかしいのか、自分が気にし過ぎなのか分からない。誠也が言うように死にたいと言って何度も脱走して・・・それから?施設の中でも死のうと思えば死ねたはずだ。そこまでして何で脱走しようとしていたのか?
一つだけ思いついた。「墓参り」だと、だが墓参りなんていつでも出来るだろうにと思いながら学校についた。後で誠也にも聞いてみよう。
昼休みとなり、武がジャンケンで負けて買い出しに行った。もちろん加納が一緒について行っている。Ωのための購買だが限りがあるので、念のためだろう。
「はぁ?墓参り?番が死んだからって意味ないやん。もしくは済ませてるはずやで?」
「だよなぁ・・・?脱走までして何がしたかったんだろうな?」
「墓の隣で死にたかったんだよ」
爆発するように心臓が鳴ったと思ったら武が、今までにないくらい冷たい目でパンやおにぎりを机の上に置いた。そして黙って自分の買ったパンを食べると、聞かれてた話の続きが気になるのは当然のことで、思い切って聞こうと思ったが、先に武から口にした。
「先に死んだアイツの隣で死ぬために施設から何度も脱走しようとしてたんだよ。でもアイツは望んでなかったし、死にかけた時にアイツが夢に出たんだ。「何のために守ったんだ」ってな」
「そ・・そうか・・・」
番になると霊体となっても守っているのかもしれない、そうなると心も穏やかになるのかな?と思うが先ほどの表情を見る限り納得しているわけではなさそうだ。
0
あなたにおすすめの小説
運命じゃない人
万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。
理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
愛などもう求めない
一寸光陰
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる