あいつが俺の番なわけない

嵯乃恭介

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第十七話 遺言

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朝は待ち合わせで集合することになっていたが、ほぼ同じ場所に居るので意味がないのは判っているがαの圭太がいるだけで他のβもαも近寄ってこない。フェロモンは薬で減っているのかもしれないが、雰囲気が少し違うように見えたかもしれないとジーっと少し伸長の高い圭太を見上げると、圭太はそれに気づいて

 「あら、たかちゃんったら見つめられると襲っちゃうわよ?」

 「いや、遠慮するがお前・・・そんな顔だったか?」

 「え?ファンデ取れてる?」

 「ちげーよ・・・」

本当に女性と会話しているようになり、本当に番なのかと諦めるしかなかったが、昨晩聞いた武の話を聞くと気がめいってしまうが、それに気づいたのは誠也だった。首を掴み二人しか聞こえない声で聞いてきた。

 「もしかして、武の話聞いたんか?」

 「え?知ってるのか?」

 「何年同じ施設に居ると思うねん。最初は俺だけやったけど、最初見た時には死にたいと言って何度も脱走して大変やったで」

コソコソと話をしていると武がやってきて、二人の後ろから挨拶をすると二人は驚きビクンと跳ね上がった。同じ家のはずなのに遅く来た武と洋介だった。ニコニコと笑って過去の事がウソのようにも思えた。だが、それでも気を使ってしまう。

 「ん?どうしたの?隆の顔色がよろしくない?」

 「そうでもない!さて揃ったし学校に行こう!」

笑顔が怖かったのもあった。前を歩くのは顔を見せられないし見たくなかったからだ。
 圭太も俺の為なら命を捨てるかもしれないが、辛い想いをして生きて行こうとは思わないだろう・・・。それでも守ってくれた命だから生きていこうとも思うだろう。

 「たかちゃん、顔色悪いわよ?」

 「・・・・うっさい!」

受け止められると判っていながらの拳は、やはりすんなり受け止められて拳にキスを落とすと隆は真っ赤になって開いている頭にカバンで殴った。鉄板でも入れておけば良かったかもしれない。
 それでも三人は笑っていた。漫才を見るような感覚なのだろうか?それでも談笑する自分以外の番たちがおかしいのか、自分が気にし過ぎなのか分からない。誠也が言うように死にたいと言って何度も脱走して・・・それから?施設の中でも死のうと思えば死ねたはずだ。そこまでして何で脱走しようとしていたのか?
 一つだけ思いついた。「墓参り」だと、だが墓参りなんていつでも出来るだろうにと思いながら学校についた。後で誠也にも聞いてみよう。




昼休みとなり、武がジャンケンで負けて買い出しに行った。もちろん加納が一緒について行っている。Ωのための購買だが限りがあるので、念のためだろう。

 「はぁ?墓参り?番が死んだからって意味ないやん。もしくは済ませてるはずやで?」

 「だよなぁ・・・?脱走までして何がしたかったんだろうな?」

 「墓の隣で死にたかったんだよ」

爆発するように心臓が鳴ったと思ったら武が、今までにないくらい冷たい目でパンやおにぎりを机の上に置いた。そして黙って自分の買ったパンを食べると、聞かれてた話の続きが気になるのは当然のことで、思い切って聞こうと思ったが、先に武から口にした。

 「先に死んだアイツの隣で死ぬために施設から何度も脱走しようとしてたんだよ。でもアイツは望んでなかったし、死にかけた時にアイツが夢に出たんだ。「何のために守ったんだ」ってな」

 「そ・・そうか・・・」

番になると霊体となっても守っているのかもしれない、そうなると心も穏やかになるのかな?と思うが先ほどの表情を見る限り納得しているわけではなさそうだ。
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