あいつが俺の番なわけない

嵯乃恭介

文字の大きさ
19 / 32

第十八話 α味方宣言

しおりを挟む
あっと言う間に夕暮れとなり五人は家路に向かっていた。もちろん圭太と洋介も同じように帰っているし、誠也、武、隆も同じように帰っていたが無言のままだった。
 もしかしたら自分たちの空気を察してくれているのかもしれないなと考えると、少しだけ運命の番と言う者を理解できるかもしれない。それに目の前で絡むと武が嫌な思いをするかもしれないし・・・と思っていたら

 「アイツさー、今の隆と圭太みたいな関係だったんだよ」

ギョッとした。まさか自分から話を入れて来るとは思わなかったが、静かにきくことにしようとしたが隆と圭太と聞いて圭太が反応して

 「私とたかちゃんみたいな関係って?」

女子の恋バナのように食い気味で割り込んできた。それを見た武はニッコリ笑うと

 「アイツ・・・αの女だったんだよ。でもΩの俺は、その時は判ってなかったんだ。女の子が妊娠すると判ってても、Ωである自分が妊娠して子供を産むってさ。まぁ色々あってお互いに誤解が解けてから頸を噛んでもらったんだ。一緒に暮らしてさ、発情期にはアイツの服で巣作りをしてさ、あいつの匂いに安心感と高揚感を感じてた」

 「それって、αが産むってなるの?」

 「そこまでは分からないけど、少なくとも俺はアイツの事を愛してたし、愛されてると判ったから」

穏やかな横顔を見て、安堵すると圭太が肩を抱いてきた。

 「たかちゃんは、いつになったら見てくれるのかしら?」

 「一生ないと思え」

 「あはは、そんな感じだよ」

 「ワイらもか?」

 「んー?そうだね~、似たり寄ったりかもしれないね、俺たち」

この二組にも同じことが起きてることもあり武の中では羨ましくもあり、逆に自分とは違い幸せになってほしいと言う思いからかもしれない、それでも反抗的な二組・・・まぁΩ二人は抗うのだが・・・。

 「まぁ俺はα二人の味方ってことで!」

 「なんでやねん!!」

 「おま!!ここは感動するシーンだろ?」

 「武君ナイスよ!」

洋介は考えてることが違ったのか

 「それでお前の幸せはどうするんや?」

その場が一気に冷めてしまった。どうするんだよ、この空気と三人はジトーと洋介を見るが、本人は気にしてないようで、首を傾げているが誠也が思い切り足を踏んずけた。

 「っ!!?」

 「お前、もぉ喋るんやない!」

 「別にいいじゃん、俺の幸せねー君たちを見守ること?なんてね!あっはっは」

無理に笑っているようには見えなかったが、少しだけ辛そうにも見えたのも事実だった。それでも抗いたいのが隆と誠也だが、番を亡くす悲しみだけは伝わって来た。
 
 「いやいやいや!!武でも許さんで!ワイの意志だってあるんやー!」

 「じゃぁさ、聞くけど・・・もしもさ俺みたいに番である洋介君が死んだら、僕みたいにヒートで一人寂しく苦しむだけだよ?」

 「そ・・・それは苦しいけどやな・・・」

そんなことを言われたらずるいとしか言いようがない。誰も彼を咎めることが出来ないのだから・・・、しかし一人だけ居た。

 「それ以上はいけません。いくら番が居ないからと言って、二人を急かすような発言は、徐々に慣らしていくというのが貴方の意見でしょう?」

加納の鶴の一声で武は、キョトンとする。その後、泣きそうな顔をして

 「加納さんなら分かってくれると思ったんだけどなぁ・・・。加納さんも分かるでしょ?番が居ない寂しさや悲しみが・・」

それを聞いた加納にも影が出来る。隆と圭太は慌てて

 「ちょっと、さっきの発言はダメよ!女性に失礼じゃないの!」

 「女性と言えるのか分からないのに?匂いで判るよ?「何も」匂わないんだもん。βでも少しは匂うはずだもん」

加納は厳しい顔をして、武の頬を軽く包み込んだ。その表情は母が子を宥めるような表情をしているが、叱るような言葉を出す。

 「でもね?私の仕事はΩの子を守るために作られた体だと思うの。もちろん例外はないわ貴方も守る」

 「ずるいよ・・・加納さん・・・、何も言えないじゃん」

パッと加納の手をはらい、武は走って家に向かっていった。もちろん一緒に住んでいる誠也にとって、どうやってフォローしようかとオロオロするところだが、隆は加納を見て

 「俺は大丈夫だからさ、武のフォロー出来よな?やってくれない?」

 「言い過ぎましたね。家も近くですし陣さんにも連絡を入れておきます。これは私の失態ですから、気を付けてくださいね」

 「私がたかちゃんを守るわ!」

 「むしろ、お前が襲ってくるからコエーんだよ」

 「まぁせやな、ワイも一緒に行くわ」

 「誠也、もう少し話がしたかったんやけど」

 「ラインだけしたるわ。お前声ででかいから電話はいやや」

ショボンとしながら洋介は家があるほうに向かっていく。可能と誠也は急いで武の後を追って走り出していた。もし確認できるなら、あとで連絡が欲しいものだと思いながら圭太と横並びで家に向かう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

愛などもう求めない

一寸光陰
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

処理中です...