あいつが俺の番なわけない

嵯乃恭介

文字の大きさ
22 / 32

第二十一話 番の弟は強烈な性格でした。

しおりを挟む
この数日に加納と武との距離感が近くなっているのが目に見えて分かる。
 どうやら他の四人には判らない何かを共感しての距離感の近さだと思う、番が死んだΩ、当てはまらない女性として、相手が居ない分とても気が合っているのか見知れない、隆が家に無事に帰ると武と一緒に出掛けることが増えているのも事実だが、陣にも連絡が言っているらしい。それでも怒るどころか喜んでいた。

 「いやー、いままで鉄の少女みたいになってたからなぁ、俺も見たいぞ?加納が嬉しそうなら良かったし」

陣は、むしろ歓迎の意を告げる。

 「あ、あと武の周りに気を付けてくれ」

 「何かあったの?」

呼び出されたのは隆、圭太、誠也、洋介だった。番同士だが肝心の武が居ない加納も居ない状態で話とは、なんだろうと少し不安にはなるが・・・







カフェでコーヒーと紅茶を飲んでいる加納と武は、人込みを見ながら他愛もない話をしていた。だが武の様子がおかしくなり

 「どうしたの?」

まるでヒートを起こしているようにも思える。ヒートする時期ではないはずだ。

 「たーけし」

見知らぬ青年が武に後ろから抱き着いた。武の顔色が悪くなり無理矢理に体を離し加納の後ろに隠れる、ヒートになりながらも、ここまで嫌がる彼を見るのは初めてかもしれない。

 「どちらさまですか?」

 「ん?アンタこそ誰?俺の武返して?」

 「お前のものじゃない・・・。しつこい・・・、俺は蓮以外とは番になる気はない。一卵性双生児のお前でもな」

 「顔が一緒じゃん。それに武はラッキーじゃないか?普通番が居なくなったら、ひーとだけで苦しむんだし」

話が付いていけないが、どうやら目の前に居る青年は武の番である蓮の双子という事が分かる。双子とは言え番になるのは無理な話だろうが、一卵性双生児となるとありえる可能性もあるわけで・・・。

 「どちらにしろ、話は場所を変えます。彼は治療中ですので」

 「え?どっか悪いの?」

加納の服を握りしめるほどに怖がっているのが分かる。昔なじみなはずなのに何を恐れているのか・・
 その時、ドカッと目の前の青年に不良?のようなチンピラのような男たちが彼に当たり持っていた缶ビールが零れてお互いの服にかかった。もちろん切れるのは向こうだが、武が事が起きた瞬間に青ざめた。

 「よう兄ちゃん!!俺の服が汚れちまったじゃねぇか!クリーニング代出せや!!」

典型的な決め台詞

 「あ”ぁ!!?そりゃぁこっちのセリフじゃボケ!!」

大人しそうな表情が一変し人相が変わり、怒鳴ると同時に男に対して殴りかかる。
 胸倉を掴まれ無慈悲にも顔面を殴られる男の顔が変形する。それを見ていた友人らしき男たちは悲鳴を上げて逃げ出してしまう。だがそれを無視して目の前の男を未だに殴っている。

 「やめなさい!!死んでしまう!!」

 「うるせぇ!!!」

ゴン!と加納の右頬に彼の拳が入り加納は地面に倒れる。武が駆け寄り加納を抱きしめると青年の機嫌が悪くなったのか、殴り倒した男を歩道に放置し武に近づくと同じようにしゃがみこんだ。

 「その女が大事か?」

まるで別人のように変貌する目の前の男は、武の番の双子の弟、雷で少ししたことで別人のように性格が変わってしまう、とても危険な男だと判断された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

愛などもう求めない

一寸光陰
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

処理中です...