あいつが俺の番なわけない

嵯乃恭介

文字の大きさ
23 / 32

第二十二話 

しおりを挟む
耳がキーンと耳鳴りの様に鼓膜に響いていた。激痛により鼓膜まで破壊されたかもしれないが、この男は危険だと思い、起き上がり武を守る様に立ち上がる。
 目の前の男は、武の番の双子で間違いない。それでも一卵性双生児で性格が聞いたものと違いすぎる。普通ならば同じように性格まで似るはずだ。

 「加納さん逃げるよ!!」

手を引いて武は走り出したが、逃がすまいと雷も走り出すが加納も途中で逃げることに専念しスピードを上げて、今度は武を引っ張る形になり、施設へ逃げ込む形で駆け込んだ。もちろん即カードでしか入れないようにする。
 
 「大丈夫?」

 「加納さんこそ・・・ごめんなさい・・・。まさか雷が来るなんて思ってもなかった・・・」



奥から数名の足音が聞こえ、加納と武はへばったように座り込んだ。そして数名の足音の正体は陣たちだった。加納の頬を見て驚いた陣だったが慌てて冷えたタオルと検査を迅速に行われ、鼓膜は無事、しかし頬骨にヒビが入っているとのことだった。

 「何があったんだ?」

 「・・・雷が来たんだ」

情報で入っていた蓮の双子の弟だったが、一卵性双生児の情報だけで加納がここまで負傷するのはおかしい。
 施設のカメラに一人の男が写されたと内線が入り陣と後の四人も付いていった。そこには扉をガンガン蹴飛ばす青年の姿。武の話とは話が違う性格の持ち主にしか見えない。

 「俺が話をつけてくる。圭太、お前は中に入られたときに相手しろよ」

 「え~、兄さんがまけるわけないじゃない?」

 「見る限りじゃぁ気性が激しい、ホルモンのバランスが崩れて、双子の兄が死んだことで別の状態になってるかもしれん」

別の状態って何?
 その場にいた皆が思ったが、武だけが少しだけ理解した。昔の雷も優しかったし、蓮と一緒に遊んでいたこともある。それが蓮が死んでから別人のようになってしまった。

 「もぉ~、わかったわよ~、たかちゃんも居るしねぇ。物騒な人にはお仕置きよね!」

 「お前がお仕置きとか言うと妙なことに聞こえる・・・」

 「うふふ、いつまでも振り向かないたかちゃんにもお仕置きしてあげましょうか?」

 「半径五十メートルに入らないでください」

 「あん、いけず~」

そんな馬鹿なやりとりをしている内に陣は、施設の外の扉を開けて雷と向き合った。既にイライラしているのか

 「武を出せやぁ!!あれは俺のもんだ!!」

 「君のものではない、正確には君の兄の番だ」

 「兄貴は死んだ!!だから俺と番になるべきなんだよ!!」

それは可能性はあるが、今の彼には任せられないのは確かだ。それに話が通じないかもしれないが切り出すしかない。

 「じゃぁ君の検査をしても良いか?話を聞く限り、こちらでも調査をした限り、君は一卵性双生児とは思えないほどにお兄さんには似てない。双子とも思えないくらいの気性の激しさだ」

 「あ”!!?んなもん関係ねぇだろうが!!」

 「話にならんな・・・。失礼するよ」

陣は雷に近づこうとするが、雷は陣を掴みかかるが陣は合気道の真似で力任せな雷の掴みかかりを投げ飛ばした。そして倒れた時に、注射器を取り出し首に打ち込んだ。雷は起き上がり注射された場所を確認すると、視界がぼやけ妙な睡魔が入り倒れてしまった。
 陣は無線で中に居る職員に連絡し担架で雷を拘束しながら中に入れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

愛などもう求めない

一寸光陰
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。 「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」 「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」 目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。 本当に自分を愛してくれる人と生きたい。 ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。  ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。 最後まで読んでいただけると嬉しいです。

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

処理中です...