あいつが俺の番なわけない

嵯乃恭介

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第二十七話

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圭太が忙しそうに施設に足を運んでから隆は少しだけ大人しくなった。
 と言うのも誠也が思っただけで、普段通りかもしれないが、若干テンションが低いのもあり時折圭太に声を掛けるようなしぐさをするので、幼馴染の癖というものだろうと思った。
 そして自分にも変化があったので報告がてら施設に行くことにする。もちろん洋介も連れていくというか付いてくるので黙って来たが、案の定ついてきている。

 「あら?誠也君じゃない?どうしたの?」

 「あんな・・・ワイ・・いや、ワイら地元に戻ろうと思ってや」

その言葉に洋介がピクンと反応する。期待の眼差しが痛いと思いながら話を続ける。

 「武や加納さんに比べたら、ワイなんて・・・番おるだけでもマシやと思ってな」

 「誠也!!それって!受け入れてくれるんか!!?」

 「えぇい!抱き着くんやない!まだ番にはならん!とりあえず地元に帰るんや!そっから考えるわい!」

 「あらぁ、それは大歓迎よ?その前に数値だけ確認させてねー」

指示をされて職員が誠也を連れていくと洋介がガッツポーズしながら喜んでいるのが目に見えて分かる。それを見ていた圭太は、ため息を吐く。

 「もしかして隆君の事?」

 「最近ねぇ、忙しくて会えてないから寂しくて・・・、私の可愛いたかちゃん・・・」

乙女モードに入っているのかクネクネと体を動かす彼は本当にαなのかと思うくらいにΩではないかと感じるが、あえて突っ込まないでおこうと思った。

 

 その頃、隆は天井を見上げながら誠也からの言葉を聞いて衝撃を受けたのもあるが、本人たちが良いなら良いのだろうが、自分はどうなのだろうと疑問に思う。
 圭太が嫌いなわけではないのは判っている。けれど・・・

 「今まで友達だったのが・・・番ねぇ」

どうやら親友から恋人、夫婦になることに対しての不安があるようだ。
 しかし誠也と洋介は選んだのだからスゴイと思う。何があったと言うのだろうか?
 今回の武と雷の事で変わったのだろうか?
 それにしても決断が早すぎると思う。

 「早すぎねぇ?でもなぁ・・・相手の事が判っているなら・・・性格が判ったやつの方が良いのか?でも・・・圭太とセックス?」

考えるのは圭太との夜の営みだが、番となればΩはαの服や布団で巣作りをするらしいが、確かに前に加納が持ってきたもので落ち着いて眠れた。
 しかし考えてみると初めのころから圭太のαの匂いで落ち着いたりしていたかもしれない。それが発情になるとも言えるが・・・。

 「はぁ~・・・」

枕に顔を埋め考えることは何故圭太はオネェになってしまったのかという事だ。αやβ、Ωを知らない内になっていたわけで、別に気にも止めてなかったはずだ。それが何故オネェになってしまったのかが不思議で仕方ない。

 「電話してみようかな」

携帯を取り出し圭太に電話すると、一向に出ない・・・、出ないと言うよりも電源が入っていない。
 プツッと切ってベッドで転がっているとコール音が鳴り表示されているのは陣だった。とりあえず出ると陣は太田と一緒に居るのか息が荒い状態でかけてきたのだ。ヒートしている番を放置しながら掛けて来るとは何かあったのかと思ったが

 「圭太・・ぅふぅ・・・のこと、気になってんだろ?・・ふぅ・・施設にかけてみろ」

それだけ言い残し電話は切れた。
 何故に自分が悩んでいることが判ったのかが不思議だが、陣は判っていたのかもしれない。
 そこはやはり昔から見てきたということだろう。
 最近忙しい圭太に対して自分が拗ねているのを見てきた兄だからだろう。
 わざわざ番である太田を置いてかけてきてくれたのだから、本当の兄の様に思う。いや義兄になるかもしれないなと思うと顔がボンと赤く染まる。

 「いやいや、陣さんに惚れてるみたいじゃんか!違う違う、とりあえず電話してみないと」
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