不死の王様は一人ぼっち

二章

星のない夜空に響く悲鳴

私は、新しい街に来て仕事をしている。
人間とは不思議な生き物で、外見だけで判断するのことが多いのかもしれない。
もちろん丁寧に断ったが、この街では結構目立つかもしれない。

「そこのお兄さん、遊ばなぁい？」

昔言うなら遊郭かもしれない。
女性が夜道の道端で、男を連れてホテルに行くのを度々見ている。
それを無視していると、悲鳴が聞こえた。
甲高い声で、女性と思われる声の方に向かうと、路地裏になっていた。
そこで口をハンカチか何かで詰め込まれ、まさに今、性的な乱暴をしようとする複数人の男たちが居た。

「なんだぁてめぇ、こっちは通れねぇぞ？」

「邪魔するんじゃねぇ、殺すぞ！！」

いつの時代にも居るものだな。
私は目の前の男の胸倉を掴んで軽く持ち上げて、壁に叩きつけた。
数本骨が折れただろうが、命に別状はないだろう。

「あと何人、骨を折りたい奴がいるのかな？」

ニコリと何事もなかったように笑うと、逆に恐怖を感じたのか男は私の横を避けるように通って逃げて行った。
仲間を忘れていることさえ忘れているようだ。
助けに来ることはないだろうから、救急車を一台呼んでおこう。

怯えるのは女性と言うより女の子だ。
年齢は高校生くらいかな？
制服は無造作に破かれ、見るに堪えない。
彼女に上着を掛けて、路地裏から出ていこうとしたが、彼女は酷く怯えていた。
それもそうだろう、強姦されそうになったが、助けに来てくれた者が体とは似つかない力で男一人を持ち上げ壁に叩きつけたのだから。
震えるのが判る。

「大丈夫だよ。私は・・・女性の味方だ」

まぁ、昔なら人間同士のいざこざなど、どうでも良かったし、何も感じなくなってたけれども、最近になってそれなりに気になってきたのは事実である。

「い・・家に連絡しないでくれますか？」

「え？本来なら連絡するんじゃないのかい？警察とか」

彼女は首を横にブンブンと振った。
どうやら訳ありのようだ。
今の仮住まいに連れて行くのも問題があるが、話を聞いてみたい。
この街での女性は受け入れるほうだと思っていたが、彼女は違うようだ。

「すまないが、家には招待できないから、どこかで話を聞かせてくれないか？親もダメ、警察もダメ。私に手助け出来ることはしようと思うのだが」

女の子は私を見上げて、ぼんやりとしている。
そういえば、名前を聞いていないな。
後で聞けばいいか、とりあえず彼女の姿はあまりにも目立つ。

「新しい服を買おう。目立つからね」

女の子は自分の姿を見て、恐怖が蘇ったのか震えていた。

「落ち着いて、急に襲われて怯えているのは判るが、少しずつ私に慣れてほしい」

「わ・・わかり・・ました」

彼女は震えながらも承諾してくれたが、動くのも少し挙動不審状態だ。
私は頭を抱える。
今までの女性からのアプローチはあったが、今回は保護となっているのだから。
無下には出来ないし、関わってしまったのだから、どうしようもないものだ。

さてどうしたものかと考える。
とりあえず、服を買えたのは良いのだが、季節的に少し肌寒いかもしれないが、彼女が遠慮してしまったので妥協して、私の来ていたコートを着込んでいる。

「警察も家もダメ、ここまで言われてしまったら、私としては名前くらい教えてもらいたいのだが？」