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一章
加藤悟と言う男5
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悟と、私はリビングに戻り、蝋燭に火を灯し暗がりの中で一人用のソファーに私、四人掛けのソファーに悟と配置して座った。
悟はまだ警戒しているようだが、私が言葉を選んでるのが判ったのか、ニコリと笑いながら
「さっきも言ったけど、お前が何者でなんだろうと、友達なのは変わらないぜ?」
気持ちが楽になったのは真実だが、これ以上に辛いものがある。
自分にとって、彼にとっては時の差がありすぎる。
彼にとっては長い人生、私にとっては一瞬の出来事なのだから。
「そうだな、どこから話すべきか・・・私は、千年以上を生きる化け物だ」
「一人称が私とは斬新な・・・」
驚くところはそこじゃないだろうに。
彼なりに気を使ってくれているのだろう。
「昔から山に住み、村の者から供物として若い女性が運ばれてきて、命を奪ってきた」
「命を・・か?」
命を奪うことが恐ろしい事だと判っている人間の反応に、少し安心した。
冗談として聞かれてないかと半分疑っていたが、心の中で謝っておこう。
「あぁ、血を吸う鬼だ」
悟はさっきの鉄くさい匂いを思い出した。
「匂いが残ってたか。思い当たる節があるようだな?」
「んーまぁ・・てことは和田一ってのも偽名?」
肯定するように頷く。
悟はフゥとため息をつく。
「でさ、気になるんだけど、あぁもちろん、お前の初恋の人ってのが、いつの時代の人?」
「それこそ千年前だ。私を怖がらず恐れず、世話焼きで・・・とても心優しき人間だった。彼女が死に際に言ったのだよ。これから先長いのだから、「私を見つけて」という【約束】をしたんだ」
悟はキョトンとしていた。
まぁ馬鹿げた話ではあると思うし、笑われても仕方がない。
逆に悟は、涙を流していた。
「なん!?どうしだのだ?」
「だって・・お前・・グス・・・切ないじゃないかー!!千年の恋とは、このことだぞ!!あーくっそ、こういうの弱いんだよ!!ばーかばーか」
ポロポロ泣きながら、子供のように怒る悟に少し苦笑してしまう。
まだ数十年しか生きていない人間が、こうも理解してくれるとは思わなかった。
むしろ話を聞く前に逃げてたのは自分の方なのだと思った。
「まだ・・グス・・・見つけてないのか?」
「色々と回っていたがな、その間に私なりの別の【約束】を人間にしていたわけだ」
首を傾げる悟はまるで本当に子供のように無邪気な表情で判らないと表している。
私が勝手に作り出した遊びなのだから判らないだろうけども・・・
「親しくなった人間との【約束】だ。悟は私に気づいてしまった。だから新しい【約束】をしてくれるか?」
「え?気づいて・・からーの、【約束】?」
私は頷いた。
そうだな、この私の存在を知ってしまった悟に相応しい【約束】を考えないと・・・
子供が出来ると言っていたな。
「悟の血族で私を見つけ出せる者が出るまで続くのはどうだ?」
「俺死んでるじゃん!ダメダメ!!」
あえなく却下されてしまった。
人間の命は長くても百年と聞いたから仕方ないと思ったが、どうしたものか・・・
「だったら、お前の子供に見つけさせるのはどうだ?」
「あー、なるほどなぁ。だったら、俺が生きてる間に会えるかもな」
納得してくれたようだ。
悟の子供か、どんな子供が生まれるか判らないが、【約束】として果たされるのか楽しみだが、もし見つけてくれたら、また悟と会えるだろう。
しかしその前にだ。
「お前・・・子供の前で変態を出すなよ?」
「ちょ!!変態って!俺は気持ちよくなりたいだけだ!」
余計に質が悪い気がする。
「まぁ、【約束】だ。私はしばらく姿を消すよ。正体を知って【約束】をしたのは、お前が初めてだ」
今までの人間は知らなかった正体を知って、【約束】を交わすのは本当に初めてだ。
悟は拳を握りしめてニヤリと笑って答えた。
「その勝負乗った!娘だったら嫁にやるくらいの勢いだぜ!」
娘を貰ったところで、どうにもしてやれないから答えなかったが、場所がバレてしまった屋敷には用済みだ。
初めての人間の出会いに嬉しく思う。
人間にとって家と言うものは家族の集まる場所らしいから、悟にやることにした。
「この土地は、お前にやるよ。権利書は書斎にある。好きにしてくれ」
そう言って私は寝床をもって悟の前から消えた。
子供を見つけたとしても、声を掛けることはないし、私の姿を映すものはない。
私は私の姿さえ知らない。
加藤悟編 終わり
悟はまだ警戒しているようだが、私が言葉を選んでるのが判ったのか、ニコリと笑いながら
「さっきも言ったけど、お前が何者でなんだろうと、友達なのは変わらないぜ?」
気持ちが楽になったのは真実だが、これ以上に辛いものがある。
自分にとって、彼にとっては時の差がありすぎる。
彼にとっては長い人生、私にとっては一瞬の出来事なのだから。
「そうだな、どこから話すべきか・・・私は、千年以上を生きる化け物だ」
「一人称が私とは斬新な・・・」
驚くところはそこじゃないだろうに。
彼なりに気を使ってくれているのだろう。
「昔から山に住み、村の者から供物として若い女性が運ばれてきて、命を奪ってきた」
「命を・・か?」
命を奪うことが恐ろしい事だと判っている人間の反応に、少し安心した。
冗談として聞かれてないかと半分疑っていたが、心の中で謝っておこう。
「あぁ、血を吸う鬼だ」
悟はさっきの鉄くさい匂いを思い出した。
「匂いが残ってたか。思い当たる節があるようだな?」
「んーまぁ・・てことは和田一ってのも偽名?」
肯定するように頷く。
悟はフゥとため息をつく。
「でさ、気になるんだけど、あぁもちろん、お前の初恋の人ってのが、いつの時代の人?」
「それこそ千年前だ。私を怖がらず恐れず、世話焼きで・・・とても心優しき人間だった。彼女が死に際に言ったのだよ。これから先長いのだから、「私を見つけて」という【約束】をしたんだ」
悟はキョトンとしていた。
まぁ馬鹿げた話ではあると思うし、笑われても仕方がない。
逆に悟は、涙を流していた。
「なん!?どうしだのだ?」
「だって・・お前・・グス・・・切ないじゃないかー!!千年の恋とは、このことだぞ!!あーくっそ、こういうの弱いんだよ!!ばーかばーか」
ポロポロ泣きながら、子供のように怒る悟に少し苦笑してしまう。
まだ数十年しか生きていない人間が、こうも理解してくれるとは思わなかった。
むしろ話を聞く前に逃げてたのは自分の方なのだと思った。
「まだ・・グス・・・見つけてないのか?」
「色々と回っていたがな、その間に私なりの別の【約束】を人間にしていたわけだ」
首を傾げる悟はまるで本当に子供のように無邪気な表情で判らないと表している。
私が勝手に作り出した遊びなのだから判らないだろうけども・・・
「親しくなった人間との【約束】だ。悟は私に気づいてしまった。だから新しい【約束】をしてくれるか?」
「え?気づいて・・からーの、【約束】?」
私は頷いた。
そうだな、この私の存在を知ってしまった悟に相応しい【約束】を考えないと・・・
子供が出来ると言っていたな。
「悟の血族で私を見つけ出せる者が出るまで続くのはどうだ?」
「俺死んでるじゃん!ダメダメ!!」
あえなく却下されてしまった。
人間の命は長くても百年と聞いたから仕方ないと思ったが、どうしたものか・・・
「だったら、お前の子供に見つけさせるのはどうだ?」
「あー、なるほどなぁ。だったら、俺が生きてる間に会えるかもな」
納得してくれたようだ。
悟の子供か、どんな子供が生まれるか判らないが、【約束】として果たされるのか楽しみだが、もし見つけてくれたら、また悟と会えるだろう。
しかしその前にだ。
「お前・・・子供の前で変態を出すなよ?」
「ちょ!!変態って!俺は気持ちよくなりたいだけだ!」
余計に質が悪い気がする。
「まぁ、【約束】だ。私はしばらく姿を消すよ。正体を知って【約束】をしたのは、お前が初めてだ」
今までの人間は知らなかった正体を知って、【約束】を交わすのは本当に初めてだ。
悟は拳を握りしめてニヤリと笑って答えた。
「その勝負乗った!娘だったら嫁にやるくらいの勢いだぜ!」
娘を貰ったところで、どうにもしてやれないから答えなかったが、場所がバレてしまった屋敷には用済みだ。
初めての人間の出会いに嬉しく思う。
人間にとって家と言うものは家族の集まる場所らしいから、悟にやることにした。
「この土地は、お前にやるよ。権利書は書斎にある。好きにしてくれ」
そう言って私は寝床をもって悟の前から消えた。
子供を見つけたとしても、声を掛けることはないし、私の姿を映すものはない。
私は私の姿さえ知らない。
加藤悟編 終わり
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