天魔の作り方

嵯乃恭介

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二章

十年前の思い出2

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レンは落ち着きを取り戻し、ラックはまたもや正座し、ニコニコと笑っている、呆れて何も言えないくらいの満面の笑顔だ。
しかしだ。
一日も立たずに妹と出会い、いきなり結婚を前提に付き合ってる・・・
その妹もその前の日に会っただけの男だ。

「えーっと、レイの育ての親・・・父親の事は知ってたのか?そのレノ・・・の命令で動いてレイに近づいたんじゃないのか?」

レノの名前を出されてラックは笑顔から悲し気な顔になる。
聞いてはいけないと思うが、命令だけで動かされていた人間が二日ほどで結婚を前提にとは言えないだろう。

「あの。お兄さん・・・他の部屋で話しませんか?レイさんには聞かせたくないんです」

「なんでだ?別にかまわねぇよ?」

「時期が来たら話しますよ、それよりもお兄さんに話しておきたいんです」

チュと頬にキスをすると拳骨が落ちてきて、ラックは再び満面の笑顔を浮かべた。
真っ赤になりながら触れられた頬を手で隠すが、顔が真っ赤になっているレイがとても愛しく思えた。

「あー、無視しないでくれるかな?じゃぁ俺の部屋で話すか」

二人は立ち上がり、レイが居る部屋から出ていった。
レイは先ほどの行動や言動に顔を真っ赤にしてベッドで悶えていた。




シンプルな部屋だったが、生活感のある部屋だった。
基本的に母の部屋とリビングしか掃除していないのかもしれないというのが印象的だった。
机の椅子を引っ張り出して、レンはラックに座るように促す。

「で?話って?」

「はい、僕は十年前に暴走して女性を一人殺しました。そして居た村から離れて死ぬ場所を探していました」



十年前
ラックは自我を取り戻して、人を殺してしまったこと思いだし苦しんでいた。
感触も残っている、二度と人を信用してたまるかと死に場所を探し山奥で食事も睡眠もとらずボーっと過ごしていた。
そして、ある日の事だった。

山の洞窟を覗き込む少女が居た、その子は心配そうにして自分を心配し声を掛けてきた。

「大丈夫か?死にそうだぞ」

銀髪が風になびいて輝いていた。
綺麗だと思った、まだそんな感情が残っていたことに驚いたが、まず先に少女にお礼を言わなければならない。
死ぬ前に声を掛けてくれたのだから。

「お嬢ちゃんは優しいね」

「あはは、お嬢ちゃんとか似合わねぇよ俺にはー」

不思議な少女だと思った。
そして家からパンや果物を持ってきてくれた、しかし食べる気になれずボーっとしていると、少女が無理矢理口に突っ込んできた。
驚いて目を丸くした、少女の目は真剣に心配してくれているようだった。

「しっかり食えよ!生きろ!」

「お手上げだよ。お嬢ちゃん、でもね?僕よりも同じ年の子と遊んだらどうだい?」

そういうと少女の顔に影が見えた。
寂し気と言うか、複雑な事情でもあったのだろうか、しかし聞くことは出来なかった。
自分だって同じじゃないかと・・・

洞窟で数日ほど少女とのやりとりをしていた自分は、いつの間にか少女が来るのが楽しみになっていた。
しかし、ある晩だった。

「お前か、最近覚醒した異端は」

黒い髪に左目を傷を負って塞がっている黒いコートの男が現れた。
ラックの顔に手を差し出すと、ラックは気を失い気が付くと目の前に少女とそっくりな髪の長い少女が覗き込んでいた。

「お父さん、目覚めたよ」

「そうか、では言うとおりにやるんだ」

少女は躊躇いなく手のひらを切り、ラックの口に血液を流し込んだ。
そしてそこからラックの意識は少女そっくりな少女の意志に取られてしまったのだと・・・


「・・・・なるほど・・・つまりは十年前にレイと接触し居たわけだな?」

「はい、死に場所を探していた自分を助けてくれた彼女は僕にとって何よりも大事です」

「はぁ・・・そこまで思ってるなら、俺はお手上げ、それにレイの育ての親も認識してるんだろ?ま、長い付き合いになるし、よろしくな?義弟さんよ」

そしてレンとラックは笑い合った。
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