フェチではなくて愛ゆえに

茜色

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揺れる心

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 綾乃から、「最近急に雰囲気が変わった」と言われた。
「まさか、オトコできた?」と追及されかけたが、曖昧に笑ってごまかした。綾乃は自分がみなせにプレゼントしたセクシーな下着の効果がさっそく出たかと勝手に喜んでいる。
 当初の目的とは別の展開で、あの下着がきっかけになったことは否定できない。ただ、みなせは一馬との間に起こった出来事を誰にも言うつもりはなかった。きちんと人に話せるほど、いや、自分自身でも整理がつくほど明確な形になっていないからだ。

 10階の空き会議室で秘密の時間を持ったのが金曜日。土日は何も手に付かず、ひたすらぼんやりと長い休日を過ごした。寝ても覚めても、食事をしていてもお風呂に入っていても、気づけば一馬のことばかり考えてしまう。焦がれるような瞳や乱れた吐息、手のひらの熱さ、繊細な指先。耳元で囁く、余裕のない掠れた声。触れあって濡れた肌と肌。そして泣きたくなるほど心地良いキス。
 思い出すだけで、身体の芯が疼いて溶けそうになる。こんな気持ちになっているのは自分だけだろうか。今頃、一馬はどう過ごしているのだろう。少しは、自分とのあの出来事を反芻したりしているのだろうか。

 そんなふうにぐだぐだ考えているうちに、また新しい週がやってきた。
 月曜の朝、会社近くで信号待ちしている一馬の後ろ姿を遠くに見かけたときは、心臓が壊れそうなほどドキリとした。勇気を出して挨拶したかったけれど、一馬は同僚らしき男性に声を掛けられてそのまま足早に行ってしまった。みなせは間に合わず、次の信号を渡る羽目になった。

 久しぶりにお昼はコンビニに買いに出かけてみた。会えるかと思ったけれど、空振りに終わった。エレベーターで偶然会うこともなかった。そうやって月曜日はあっけなく終わってしまった。そしてそれ以降、一馬の姿はぱったりと見えなくなった。火曜日も水曜日も。そして今日、木曜日も終わろうとしている。

 ――私、一馬さんのこと何も知らない……。
 今更、みなせは不安になった。あまりに刺激的な出来事に心を奪われ、当たり前のことを失念していた。
 みなせと一馬はあれほど親密な行為に及んでいながら、連絡先すら交換していなかった。ただ話をするだけのはずが思いがけずああいう展開になってしまったのだから、お互い想定外だったのは仕方ない。しかも最後はバタバタと追われるように自分が先に会議室を出た。気が動転していたし、高揚感で頭がフワフワしていた。

 彼との接点は、同じオフィスビルだから時々偶然出くわす、ただそれだけのものだった。タイミングが合わなければ顔を見ない日が続くのも当たり前だし、意識的に接点を持とうとしなければいつでも消えてなくなるかもしれない淡い繋がりだったのだ。
 濃密で胸が震えるような時間を共にしたからと言って、では次の日から特別な関係になれるかと言ったら、そんな保証はどこにもない。お互いの恥ずかしい性的欲望をぶつけあい秘密を共有したけれど、みなせも一馬もそれぞれの「心」を伝えたわけではなかった。恋人同士のような行為をしたとは言え、本物の恋人になったわけではないのだ。
 そう。「好き」も「付きあおう」も、何もなかった。本来先にあるはずのそれらの言葉をすっ飛ばして、本能と欲に流されてただただ夢中になってしまった。

 一馬はどうして姿を見せないのだろう。仕事が忙しくていつもの生活パターンとズレているとか?もしかしたらどこかに出張に行っているとか。
 みなせはあらゆる想像をして、自分の心のモヤモヤを抑え込もうとした。そして考えすぎて、結局一番不安な答えに行きついてしまいそうになる。一馬が、みなせのことを避けている、という可能性だ。

 勢いであんな行為に及んでしまったけれど、一馬は後悔したのだろうか。これ以上ややこしいことになるのが嫌だから、みなせと出くわしそうな時間や場所を回避しているのかもしれない。ついそんなふうにネガティブに想像し、「一馬さんはそういう人じゃない」と必死に心で打ち消すことを繰り返していた。
 
 おかしな話だ。「そんな人じゃない」と言えるほど、彼のことを何も知らないくせに。
 ただ、あの日ああして正直に欲望をぶつけあったとき、彼の眼差しに「ずるさ」はひとかけらも見えなかった。適当な言葉や態度で女の子を誘惑し、手を出して楽しむような男の軽々しさは微塵も感じなかった。
 みなせだって、男性を見る眼に自信があるわけではない。だから過去の恋だって失敗している。それでも、あの日みなせを見つめていた一馬の瞳に嘘はなかったと信じたかった。羞恥心と闘いながら、自分の欲をさらけ出してみなせを求めてきた彼は、普段「9階のイケメン」ともてはやされるクールで端正なよそゆきの顔とは違っていた。苦しくなるほどの色気を放ちながらも、あの時の彼はあまりにも不器用で可愛らしかったのだ。
 
 明日は会えるかもしれない。もう少し様子を見てみよう。
 そう思いながら、みなせは気持ちを切り替えて仕事に没頭した。このまま自然消滅のように、なかったことにはしたくない。傷つくのを恐れて無理矢理忘れてしまうには、一馬の存在はあまりにも大きくなりすぎていた。

 そうして、あの出来事からちょうど一週間が経ち、金曜の夜を迎えてしまった。
 やはり今日も一馬の姿を見かけることはなかった。まさか急に異動してしまったとか、そういうことはあり得るのだろうか。
 今日、みなせは昼過ぎからずっと考えていた。思い切って、仕事が終わったら9階のフロアに行ってみようと。
 9階は、一馬の会社がフロアすべてを占めているはずだ。当然、部外者であるみなせは一度も足を踏み入れたことがない。取引先でもない、他社の人間がうろうろしていたら不審に思われるに違いない。
 深追いして迷惑がられる可能性を考え、ひるみそうになった。けれど、どうしてもこの不安を抱えたまま週末を迎えたくなかった。たとえショックな展開になったとしても、分からないままで悩むよりはずっといい。

 夕刻。仕事を終えたみなせは、カラオケに行かないかと誘う綾乃たちを断り、退社時刻をみんなと少しずらした。それから鏡の前で少し念入りに身支度を整え、何度も深呼吸してから上りのエレベーターに乗った。
 7階から9階なんて、あっという間だ。到着してフロアに一歩踏み出すと、入れ替わりにエレベーターに乗り込んだ女性社員に少し不思議そうな顔をされた。こんな時間に見慣れない女が自社のフロアに現れれば、怪訝にも思うだろう。

 勢い込んで来てしまったが、さてどうしよう。自動販売機の脇に休憩スペースが設置してある。そこなら目立たないので、隅っこに座って一馬が通らないか見ていようか。それとも勇気を出して、直接オフィスを訪ねてみるか。知り合いが用事があって訪ねた、という風を装えば、さほど不自然ではない気もする。

 ――私、ストーカーみたい。
 ふと冷静になって、自分が情けなくなった。これではまるで、遊ばれてすぐに捨てられた女が未練がましく男を追いかけている図そのものだ。

 やっぱり帰ろうか。自販機の横のベンチで迷っていたとき、廊下の奥から若い男の声が聞こえてきた。携帯電話で通話しながら歩いている。「はいはい、お疲れー」と軽い調子で話を終えると、男は機嫌良さそうにスマートフォンをしまいながらエレベーターホールに現れた。
 顔を見てハッとした。この人は何度か見かけたことがある。よく一馬と連れ立って、昼時にコンビニに来ている同僚の一人だ。

「す、すみません……!」
 咄嗟に立ち上がり、その男に声を掛けていた。気の良さそうな大柄な男性だ。いきなり現れたみなせを見てきょとんとし、それから「あれ?」と不思議そうな顔になった。
「ええと……。このビルで働いてる人ですよね?たしか7階?」
「あ、はい。そうです。……あの、急にすみません」
 どうしました?と男は人の良さそうな笑顔で近づいてきた。飲み屋で気軽に女の子に声を掛けそうな、いかにもノリの良い営業マンといった風貌だ。

「あの……、今日、春霞さんはいらっしゃいますか?」
 名前を口にした途端、赤面しそうになった。心臓がドクドク鳴っている。一馬の同僚の男は一瞬驚いた顔になり、それから「え、春霞?あれ、ヤツと知り合いなの?」とくだけた口調になった。そうです、と遠慮がちに頷くと、「えーっ。なんだあのヤロー、いつの間に」とますます意外そうな表情を浮かべた。

「アイツと何か、約束とかしてます?」
「いえ、そうじゃないんですけど、ちょっと用事がありまして……」
「あ、なるほど。ええとねぇ、春霞は今ちょっと出張で関西方面行ってるんですよ」
「出張、ですか……」
 やはりそうだったのか。とりあえず、避けられていたわけではないらしいと分かり、心の奥で少しだけ安堵した。

「長く行ってらっしゃるんですか?」
「今週ずっと行ってますね。あれ、いつ戻るんだろアイツ。って言うか、連絡は取れないの?」
 そう聞かれ、胸が小さく痛んだ。「知らないんです」と正直に答えたら、「あ、そうなんですね」と、ちょっと気の毒そうな顔をされた。たぶん、連絡先も教えてもらえない追っかけファンか何かだと思われたのだろう。

「何か伝えることあったら、連絡入れときましょうか。えーと、名前聞いてもいいかな」
「渡辺、何やってんの。ナンパ?」
 不意に、女性の声がしたのでドキリとした。フロアの先に眼をやると、薄手のトレンチコートを羽織ったミディアムボブの女性がこちらに近づいてくる。たぶん、みなせより幾つか年上、一馬や「渡辺」と呼ばれたこの男性と同年齢くらいの女性だった。みなせの顔をまじまじと見つめ、「お知り合い?」と渡辺に再度尋ねている。

「いや、春霞の知り合いの人。あのさ、アイツいつこっち戻ってくるんだっけ」
「え、戻らないんじゃないの?」
「は?」「えっ……」
 渡辺とみなせが同時に声を上げた。

「え、そのままあっちに異動でしょ?そりゃ引継ぎとか荷物取りに戻りはするだろうけど、若本課長があっちだし、春霞くんもそのまま引き抜かれるんでしょ。主任もそう言ってたよ」
「マジか。そんなん全然知らんかったわ。……あー、なんかそういう展開になっちゃってるみたいです。どうします?連絡取ります?」
 渡辺が更に気の毒そうな顔になって、みなせの顔を覗き込んだ。
 すぐに言葉が出てこなかった。……異動?関西方面に?もう戻って来ない……?

「あ、いえ……。大丈夫です。すみません、急に押しかけて……」
 動揺が顔に出てしまったのだろう、情報を教えてくれた女性が興味深げにみなせの様子を観察している。
「もしかしてあなた、春霞くんのこと好きなの?さっすがモテ男ね」
「おまえ、やめろ、そーいう言い方。感じ悪いわ」
「え、何で。こんな可愛い子に想われるなんて、やるなぁって褒めてるんじゃない」

 いたたまれなくなった。のこのこ他社のフロアに押しかけて、あっけなく事実を知ってショックを受けている自分がひどく愚かで滑稽に思えてきた。何よりも、一馬がここからいなくなるらしいという現実に頭が真っ白になり、気を抜くと涙ぐんでしまいそうになった。

「……あの、本当にすみませんでした。ありがとうございました。私、失礼します」
「あ、でも……。大丈夫?何かできることがあれば」
「いえ、本当に、大丈夫です。すみません」
 顔を見られたくなくて、俯きがちにエレベーターの下りのボタンを押した。と言っても、渡辺も同僚女性も帰るところなので同じエレベーターに乗ることになる。1階まで一緒なんて、とても無理だ。下手するとそのまま駅まで並んで歩く羽目になるかもしれない。自社の7階で一度降りてトイレに行こう。今は誰にもこんな顔を見られたくない。

 エレベーターを待つ間、みなせの背後で渡辺と同僚女性が気まずそうな空気を醸し出していた。恥ずかしい。違う会社の人に、哀れな片思いをしている気の毒な女だと知られてしまった。それよりも何よりも、もう一馬に会えないのかと思うと自分でも呆れるほど胸が痛くてたまらなかった。

 ポーン、と音を立ててエレベーターが到着した。よく確かめもせず、みなせは泣きそうな顔のまま開いたドアに入って行こうとした。
「わっ」
 眼の前にスーツの胸元が現れ、驚いた声が頭上から降ってきた。エレベーターから降りてくる人とぶつかりそうになったのだ。冷静さを失っているせいで、人が乗っている可能性を失念していた。

「ご、ごめんなさい……っ」
 慌てて後ずさると、みなせの後ろで渡辺が「あっ。何だ、帰って来たんじゃん」と大きな声を上げた。

「えっ……。みなせさん……?」
 その声に胸がギュッと縮まりそうになる。恐る恐る顔を上げると、少し疲労を滲ませた様子の一馬が驚いた表情でみなせを見下ろしていた。




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