異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ

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第一部 ニ章 異世界キャンパー編

偉大なる先人の知恵、種麹

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「酒じゃと!?
 ならば遂に発酵石を手にしたのか!
 どうして先に言わんのじゃ!」

 無類の酒好きを自称する初音が興奮気味にまくし立て、今すぐ寄越よこせと騒ぐ。
 八兵衛さんに休養を促した時とは別人というか、まんま子供に戻ってしまった感じだ。
 ……要求するのが酒ってところが実にグータラのダメ人間っぽい。

「まぁ、慌てるなよ。ここでお前とギンレイが採ってきてくれた食材が役に立つんだからさ」

「あの米っぽい植物の事かや?
 沼に沢山あったので持ってきたんじゃよ。
 お主が作る渡来の『ぱん』もよいが、そろそろ米が喰いとうなってな」

 その判断は価千金と言うべきだろう。
『異世界の歩き方』によれば採取したのは『ヌマタイネ』と呼ばれる日ノ本固有の植物で、現在は品種改良された物が広く出回っているらしい。
 つまるところ、普段から口にしている米の原種にあたる古代米というワケだ。

「信じられぬ…。実在するという噂は聞いた事があるが、この目で見れる日が来るとは……」

 稲穂を手にした八兵衛さんが震えている。
 元の世界でも古代米は珍しい品種だったけど、そこまで驚くというのは正直、かなり意外だった。
 巨大ツチナマズにあと一歩の所まで追い詰められても、全く動じなかった男が驚愕しているという事実は計り知れない。

「人が入らない土地だからこそ残っていたんですね。大事に使わせてもらいますよ」

 農耕民族である日ノ本の民だからこそ、稲穂に対する情想じょうそうは一層強いのだと思う。
 もっとも、初音にとっては食べ物でしかないようだけど。

「しかしのう、酒を作るにはこうじが必要じゃ。
 それ自体が長い時間と手間が掛かる物。
 今からそれを仕込むつもりか?」

「そこは先人の知恵とAwazonに感謝だな」

 御存知の通り、Awazonには3億5371万品目以上の商品が24時間いつでも購入可能――なのだが、サバイバル生活に必須の水と食料は何故なぜか売られてないという残念仕様。
 だが、の品揃えは天下逸品と言える神アプリなのだ。

「じゃーん! これな~んだ?」

「んん? なんと…種麹たねこうじではないか!
 そうか、食料とは認定されておらなんだのじゃな。さりとて調味料とも違う気がするがのう」

 確かに、これ単体を好んで食べる人はいない。
 種麹たねこうじこうじという工程を経て、他の食品と組み合わせる事で初めて効果を発揮し、醤油や味噌などの調味料や、酒も作れてしまうチート級のきんなのだ。
 おっと、きんと言っても発酵を促す非常に有益な存在で、無害無毒だから安心して欲しい。
 つーか、初音がツチナマズのスープを調理した際、手持ちの醤油や味醂みりんを全て使いきってしまったので、今後は自前で作らなきゃならないという事を捕捉しておく。

「米、水、種麹たねこうじ、そして必要な工程を大幅に短縮させる発酵石。ようやく揃ったキーアイテムを使って、ツチナマズの調理が完了するジャスト2時間で日本酒を作ってみせるぜ!」
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