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第二部 最終章 one more camp!
穴蔵の牢名主
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暗い……どこだ……?
あれから…どうなった?
「ッ~~!! 痛ってぇ…!」
辺りを見回そうとした所で顔の下半分に感覚がない事に気づき、急いで触ってみると強烈な痛みが走った。
骨や歯に異常はないが、どうやら激しく脳が揺さぶられた影響で脳震盪を起こしたらしい。
相当な衝撃だったが殴られた訳ではない。
本当に、鬼にとっては挨拶にも満たない事なのだろう…。
「初…音……どこ…だ?」
グラつく頭を押さえつけ、次第に目が暗闇に慣れてくると、狭い穴蔵に閉じ込められているのが認識できた。
向いの通路で揺らめく光は蝋燭の灯りか?
見慣れない場所――ここは一体…?
「ほぅ~、お目覚めですかい?
存外、丈夫なようで結構結構~♪」
不意に掛けられた言葉に身が竦む。
なんだ? 誰だ!?
腰のナイフに手を伸ばすが空虚な手応えしかなく、視線を外すと鞘どころかネットランチャーや、ガマ口までもが奪われていた。
「そ~んな警戒しなさんなって~。
あっしら同じ仲間じゃねぇですか~」
いつの間にか、声の男は鼻が触れ合う程の距離まで詰めており、思わず飛び退いてしまう。
「だッ! …誰…なんですか…?」
初対面の人にえらく失礼な態度を取ってしまい、一抹の気まずさを覚えて語尾が弱まる。
「おっと、こりゃ失敬!
あっしは名乗るのも烏滸がましいケチな盗人でね。
色々あったついでに、ちょいとドジ踏んじまった挙げ句、このザマって訳でさぁ」
この声――それに盗人って…まさか!
「お、お前は……ゴえもん!?
そんな…し、死んだはずだ!
熊野に連行されて、そこで…」
俺は夢を――今度は悪霊に取り憑かれたのか?
何故ここに処刑された男がいるんだ!
それとも……俺は今度こそ死んで、異世界から地獄に堕ちたとでもいうのか!?
「は~い、お察しの通り。
ここは伊勢の國、鬼の盟主たる九鬼 澄隆様の本城 熊野の鬼ヶ城でさぁ!
ようこそ! 三途の入場待機列へ~」
全ッッ然、笑えねぇ…。
しかし、この独特のノリは伊勢で捕縛したゴえもん本人で間違いない。
相も変わらず人を喰った風にふざけていて、実態が掴めない男だ。
「けど、待てよ…。
泥棒と一緒って事は――ここは牢屋か?」
「は~い、ピンポン大正解~♪」
別の意味で頭が痛くなってきやがった…。
どうやら、気を失った俺は牢屋に放り込まれたらしい。
ゴえもんは粗末な木綿の服を身に着けてはいたが、最大の特徴とも言える歌舞伎役者めいた隈取メイクは健在で、こうして面と向き合っていても素顔も含め、年齢すら分からなかった。
見られたくない事情でもあるのだろうか?
えらく鍛えているのだろう、薄い木綿の着物越しに隆々とした筋肉が見えている。
…いやいや、今はそんな他人事より重要な事があるはず!
「あのぅ、ゴえもん…さん?
俺達は本当に…その…アレです…ほら」
「あぁ、死ぬよ。当ったり前でしょ?」
言い難い事をアッサリと肯定されてしまう。この人、本当に分かってるんだろうか?
「ジタバタしたってしゃ~ねぇんでさぁ。
こうして穴蔵に入ったが最後、後は御上の気分次第。だったら、ここで大人しく御沙汰を待つとしましょうや」
そう言って粗末なゴザの上で寝転ぶと、いびきをかいて寝てしまった。
なんて人なんだ!
怖いとか怒りとか、そんな負の感情を彼からは一切感じない。
オイオイオイ、冗談じゃないぞ!
こんな所にいたら、近い内に処刑されるって事じゃないか!
「クソ! 出せ!
ここから出してくれ!!」
唯一の出入口である鉄格子に手を伸ばし、力の限り必死に叫ぶが空しく響くばかりだった。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
あれから…どうなった?
「ッ~~!! 痛ってぇ…!」
辺りを見回そうとした所で顔の下半分に感覚がない事に気づき、急いで触ってみると強烈な痛みが走った。
骨や歯に異常はないが、どうやら激しく脳が揺さぶられた影響で脳震盪を起こしたらしい。
相当な衝撃だったが殴られた訳ではない。
本当に、鬼にとっては挨拶にも満たない事なのだろう…。
「初…音……どこ…だ?」
グラつく頭を押さえつけ、次第に目が暗闇に慣れてくると、狭い穴蔵に閉じ込められているのが認識できた。
向いの通路で揺らめく光は蝋燭の灯りか?
見慣れない場所――ここは一体…?
「ほぅ~、お目覚めですかい?
存外、丈夫なようで結構結構~♪」
不意に掛けられた言葉に身が竦む。
なんだ? 誰だ!?
腰のナイフに手を伸ばすが空虚な手応えしかなく、視線を外すと鞘どころかネットランチャーや、ガマ口までもが奪われていた。
「そ~んな警戒しなさんなって~。
あっしら同じ仲間じゃねぇですか~」
いつの間にか、声の男は鼻が触れ合う程の距離まで詰めており、思わず飛び退いてしまう。
「だッ! …誰…なんですか…?」
初対面の人にえらく失礼な態度を取ってしまい、一抹の気まずさを覚えて語尾が弱まる。
「おっと、こりゃ失敬!
あっしは名乗るのも烏滸がましいケチな盗人でね。
色々あったついでに、ちょいとドジ踏んじまった挙げ句、このザマって訳でさぁ」
この声――それに盗人って…まさか!
「お、お前は……ゴえもん!?
そんな…し、死んだはずだ!
熊野に連行されて、そこで…」
俺は夢を――今度は悪霊に取り憑かれたのか?
何故ここに処刑された男がいるんだ!
それとも……俺は今度こそ死んで、異世界から地獄に堕ちたとでもいうのか!?
「は~い、お察しの通り。
ここは伊勢の國、鬼の盟主たる九鬼 澄隆様の本城 熊野の鬼ヶ城でさぁ!
ようこそ! 三途の入場待機列へ~」
全ッッ然、笑えねぇ…。
しかし、この独特のノリは伊勢で捕縛したゴえもん本人で間違いない。
相も変わらず人を喰った風にふざけていて、実態が掴めない男だ。
「けど、待てよ…。
泥棒と一緒って事は――ここは牢屋か?」
「は~い、ピンポン大正解~♪」
別の意味で頭が痛くなってきやがった…。
どうやら、気を失った俺は牢屋に放り込まれたらしい。
ゴえもんは粗末な木綿の服を身に着けてはいたが、最大の特徴とも言える歌舞伎役者めいた隈取メイクは健在で、こうして面と向き合っていても素顔も含め、年齢すら分からなかった。
見られたくない事情でもあるのだろうか?
えらく鍛えているのだろう、薄い木綿の着物越しに隆々とした筋肉が見えている。
…いやいや、今はそんな他人事より重要な事があるはず!
「あのぅ、ゴえもん…さん?
俺達は本当に…その…アレです…ほら」
「あぁ、死ぬよ。当ったり前でしょ?」
言い難い事をアッサリと肯定されてしまう。この人、本当に分かってるんだろうか?
「ジタバタしたってしゃ~ねぇんでさぁ。
こうして穴蔵に入ったが最後、後は御上の気分次第。だったら、ここで大人しく御沙汰を待つとしましょうや」
そう言って粗末なゴザの上で寝転ぶと、いびきをかいて寝てしまった。
なんて人なんだ!
怖いとか怒りとか、そんな負の感情を彼からは一切感じない。
オイオイオイ、冗談じゃないぞ!
こんな所にいたら、近い内に処刑されるって事じゃないか!
「クソ! 出せ!
ここから出してくれ!!」
唯一の出入口である鉄格子に手を伸ばし、力の限り必死に叫ぶが空しく響くばかりだった。
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