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第34話 たおやかに折れる少女の心
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結構な数のカワラムシャガニを捕まえた為、一つのダッチオーブンでは到底入りきらない。なので2品を同時に作る事にした。
昨日と同じダッチオーブンを使った蒸し料理と、焼き料理に挑戦する。
まずは蒸し焼きの準備をするがカワラムシャガニは口に含めると僅かに臭いがあったので、対策として数種類のハーブを使用。
肝心の焼き料理はAwazonで調理器具を注文…しない。そんな必要がないからだ。
というのも、既にあると言った方が正しい。
俺は河原へ降りると平たくて薄い大きめの石を見つけ出し、灰汁で汚れを落とした後に水を流して丁寧に拭き取る。
これでOKだ。後は土台の石を並べて上手い具合に水平を取り、焚き火で熱消毒すれば準備完了。
「さぁ、どんどん焼いていくぞ~」
ホームに芳ばしい香りが漂い始めると初音も興味を示したのか、調理中の光景を見ようと覗き込む。
「なんじゃ?食をそそる良い香……ギャァァアア!!」
「うわぁあ! なに?脅かすなよ!」
カワラムシャガニの石焼きを見た初音は物凄い勢いで後退り、信じられない物を目撃したと言わんばかりに顔を引き攣らせている。
「なに?じゃないわい! おぬ…、お主正気か!?こんな物をワシに食せと…? あ、あり得ん、絶対にイヤじゃ!!」
うーん、異世界でもザリガニは食べる習慣がないのか。
まぁ、俺が居た日本でも一般的な食材とは言えなかったしな、デパートの食料品売り場でも見た事なかったし。
だがね、サバイバル生活において贅沢は敵なんですよ!
喰える時に喰う!
強くなりたくば喰らえ!!!
地上最強の雄が言ってるんだから間違いない。
「…これしか食べる物がないよ?」
本当はあるけど甘やかすと無限に甘える奴と見た。
だから敢えて俺は鬼になろう、別に腕相撲で負けたのを根に持っている訳ではない。
決して!!
「ぁぁぁぁぁ……」
コマ送り映像のように、ゆっくりと膝を着き項垂れる初音。
他者の心が折れる瞬間とは、かくも美しいのだと教えてもらった。
そろそろ頃合いを迎えたのでダッチオーブンをトライポッドから下ろし、蓋を開けると豊潤な香りと共にハーブ特有の甘さ、そして清涼感を含んだ蒸気が立ち上る。
「………………」
初音はまだ疑いの心が晴れないらしい。
しかしだ、空腹具合から推測して観念するのは時間の問題だろう。
焼き料理の方はもう少し時間が掛かりそうなので、先にダッチオーブンで作った蒸し焼きから頂く。
「うん、やっぱ旨ぇ!ザリガニはいつだって俺達の味方だぜ」
ふっくらと蒸された身は通常のザリガニとは比較にならない程のボリュームを誇り、猫舌のギンレイも熱さに耐えながら夢中で貪る。
特にハサミの部分は食べ応えがあり、甘味の強い筋肉質の身はいくらでも食べられそうだ。
次々とザリガニを平らげていく俺達を見て、遂に空腹に堪えかねた初音が口を開く。
「ほ…本当に旨いのか…?」
俺とギンレイは顔を見合せ、無言のまま爪の先に詰まった細かい身をほじくり出す作業に専念する。
「その…ひ、一口だけ食べて…みようかな」
………堕ちよったわ。
俺はミシュランガイドを賑わせる高級レストランのウェイターを思わせる仕草で、複雑な表情を浮かべる初音を尻目に配膳を済ませる。
「カワラムシャガニの蒸し焼きで御座います。豪快に手掴みでお召し上がりください」
ザリガニのつぶらな瞳が緊張で竦む少女をじっと見つめていた。
昨日と同じダッチオーブンを使った蒸し料理と、焼き料理に挑戦する。
まずは蒸し焼きの準備をするがカワラムシャガニは口に含めると僅かに臭いがあったので、対策として数種類のハーブを使用。
肝心の焼き料理はAwazonで調理器具を注文…しない。そんな必要がないからだ。
というのも、既にあると言った方が正しい。
俺は河原へ降りると平たくて薄い大きめの石を見つけ出し、灰汁で汚れを落とした後に水を流して丁寧に拭き取る。
これでOKだ。後は土台の石を並べて上手い具合に水平を取り、焚き火で熱消毒すれば準備完了。
「さぁ、どんどん焼いていくぞ~」
ホームに芳ばしい香りが漂い始めると初音も興味を示したのか、調理中の光景を見ようと覗き込む。
「なんじゃ?食をそそる良い香……ギャァァアア!!」
「うわぁあ! なに?脅かすなよ!」
カワラムシャガニの石焼きを見た初音は物凄い勢いで後退り、信じられない物を目撃したと言わんばかりに顔を引き攣らせている。
「なに?じゃないわい! おぬ…、お主正気か!?こんな物をワシに食せと…? あ、あり得ん、絶対にイヤじゃ!!」
うーん、異世界でもザリガニは食べる習慣がないのか。
まぁ、俺が居た日本でも一般的な食材とは言えなかったしな、デパートの食料品売り場でも見た事なかったし。
だがね、サバイバル生活において贅沢は敵なんですよ!
喰える時に喰う!
強くなりたくば喰らえ!!!
地上最強の雄が言ってるんだから間違いない。
「…これしか食べる物がないよ?」
本当はあるけど甘やかすと無限に甘える奴と見た。
だから敢えて俺は鬼になろう、別に腕相撲で負けたのを根に持っている訳ではない。
決して!!
「ぁぁぁぁぁ……」
コマ送り映像のように、ゆっくりと膝を着き項垂れる初音。
他者の心が折れる瞬間とは、かくも美しいのだと教えてもらった。
そろそろ頃合いを迎えたのでダッチオーブンをトライポッドから下ろし、蓋を開けると豊潤な香りと共にハーブ特有の甘さ、そして清涼感を含んだ蒸気が立ち上る。
「………………」
初音はまだ疑いの心が晴れないらしい。
しかしだ、空腹具合から推測して観念するのは時間の問題だろう。
焼き料理の方はもう少し時間が掛かりそうなので、先にダッチオーブンで作った蒸し焼きから頂く。
「うん、やっぱ旨ぇ!ザリガニはいつだって俺達の味方だぜ」
ふっくらと蒸された身は通常のザリガニとは比較にならない程のボリュームを誇り、猫舌のギンレイも熱さに耐えながら夢中で貪る。
特にハサミの部分は食べ応えがあり、甘味の強い筋肉質の身はいくらでも食べられそうだ。
次々とザリガニを平らげていく俺達を見て、遂に空腹に堪えかねた初音が口を開く。
「ほ…本当に旨いのか…?」
俺とギンレイは顔を見合せ、無言のまま爪の先に詰まった細かい身をほじくり出す作業に専念する。
「その…ひ、一口だけ食べて…みようかな」
………堕ちよったわ。
俺はミシュランガイドを賑わせる高級レストランのウェイターを思わせる仕草で、複雑な表情を浮かべる初音を尻目に配膳を済ませる。
「カワラムシャガニの蒸し焼きで御座います。豪快に手掴みでお召し上がりください」
ザリガニのつぶらな瞳が緊張で竦む少女をじっと見つめていた。
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