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第36話 年齢は正直、ネタで決めました

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 初音がまさかの年上とは…。
 立って並んでみると本当に小さくて驚く。
 見た目も身長も小学生くらいだろうか?

 その割に体型はアンバランスで、先程の結婚話と相まってどう接すれば良いのか分からない。
 子供とした扱うのか?
 それとも妙齢の女性として?
 いや、年上として敬意を払うべきか?

 そもそも鬼属にとって39歳は結婚適齢期なのか?ダメだ、全然分からん!

 初音の妙に古めかしい口調にも困惑してしまうが、その原因はどうやら彼女の生い立ちや、この世界の歴史にも関係しているようで、確実に言える事はますます俺の救助は絶望的になったという訳だ。

「そんな事よりもカワラムシャガニをもっと寄越すがよい、ワシの空腹は収まっておらんのでな」

 見ればいつの間に完食したのか、恐ろしく硬い殻を平気でバリバリと音を立てて咀嚼していた。
 こいつの人間離れしたフィジカルなら余裕だろうが、それにしても泣く程嫌がっていた困難を容易に超えてきたな。

 初音の図太さに若干引きつつ、残っていたカワラムシャガニを配膳すると殻まで旨そうに平らげていく。
 ザリガニにとっては形無しどころか、殻など何の意味も成さないようだ。

 そうしていると、焼き料理の方も頃合いを迎えたので腹ペコ達に次々と振る舞う。
 大きなホットプレートを思わせる平石は大勢で食べるのに適しており、物凄い勢いで追加されるオーダーに応えてくれた。

 カワラムシャガニは焼きも絶品で、甘味と旨さが詰まった熱々の身を口にしていると思わず無言になってしまう。
 シンプルでありながら美味しい、これこそがアウトドア料理の醍醐味。
 2人?と1匹は黙々と河の幸を堪能すると、名残惜しい気持ちで最後の一口を運び終える。

「…旨かった、ワシは満足じゃ~」

 なんとも気の抜ける言葉だったが、俺も必死でツナ缶を開けて食べていた事を思い出し、苦笑いを浮かべてしまう。
すると、初音が俺へ質問を繰り出してきた。

「そういえば、まだお主の事について聞いておらんかったの。
 何故、御禁制の杜に?
 もしかして野盗の類いなのか?」

 爛々と輝きを増して返答を期待する瞳にどう言えれば良いのか暫し考えたが、初音は貴重な情報源であり俺が助かる為の鍵でもある。
 ここで嘘をつくのは後々の信頼関係に禍根を残すと考えて、知る限りの事実を伝えたのだが…。

「誠かぁぁぁああああ!?
 異世界!ワシの知らない世界!!
 そこから来たと申すのか!?
 野盗なんぞより遥かに面白いではないか!
僥倖じゃ、まさに天の御導きじゃぁああ!」

 面倒な事になっちゃったよ…。
 すっかりテンションゲージが振り切ってしまった初音を尻目に、俺は今後について考えれば考える程、一向にまとまる気配のない思考に頭を悩ませるのであった。

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