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第49話 Awazonからの贈り物
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河原沿いを2ストロークエンジン特有の爆音が鳴り響き、跳ね上げる飛沫が点々と顔を濡らす。
4輪のタイヤは地形を選ばず安定した走りをみせ、皐月の新緑を後に残していく。
あっと言う間に昨日の採取場所まで到着すると、エンジンを停止させてしばしの余韻に浸る。久しぶりだったが全身で風を切る感覚が実に心地いい。
ここまで来たんだし、ついでに採取も済ませておくか。
そう思いバギーから降りるが、初音は何故か座ったまま一向に動こうとしない。
「え……おい、大丈夫か?」
呆けた顔で硬直したままの初音を心配して肩を揺すると、艶のある唇を震わせゆっくりと顔を上げていく。
本当に…大丈夫か……?
「あしな…あしなぁぁぁああ!!!」
「Aaaahhhhhh!!!!!!」
強制的に肺の空気が全て絞られた事で魂の絶叫が森の隅々にまで轟く。
思わず抱きついた初音は俺の胴体を締め上げ…て……息……ッッ!!
「あっ、すまん。つい興奮してしもうた」
死ぬッ!!
こいつと居たら死んでしまぅぅぁ!
仮に手乗りゴリラという生物が存在していた場合、そいつにベアハッグを受けたのと同等のダメージだろうか?
危うく内臓がテイクダウンを極められる寸前で初音が手を離し、ギリギリで事なきを得る。
「あ……アホかァ!……ゴブッ…ァァ……」
生きてるって素晴らしい。
昨日に引き続いて今日も命に感謝する事になるとは…教えてくれて、どうもありがとう(ビキビキッ)
初音は申し訳なさそうにワンピースの裾を握り、頭を深々と下げて謝意を表す。
もちろん悪気がないのは分かっているが『うっかり死にました』では洒落にならない。
「大丈夫だ………だい、丈夫……」
大丈夫ではない。
が、初音の泣きそうな顔を見てしまうと気丈に振る舞うしかないじゃないか。
「すまん、ワシ…馬に乗るのは初めてじゃったから気が昂ってしもうた」
バギーは馬じゃない。
というか、生き物でもないが説明すると長くなるし、俺もうまく説明できる自信がないので一先ず置いておく。
「そんなに気にするな。
それよりも手早く採取を済ませて帰ろう。
ギンレイも今頃腹を空かせてるだろうしな」
「そ、そうじゃ、ギンレイも待っておる!」
そう言うとようやく初音は元気を取り戻し、バッグを持って駆け出していった。
俺はやれやれといった風にその後ろ姿を見送り、泣かさずに済んで安堵の息を吐く。
そして、バギーの方に向き直り各種点検を行ったが、ブレーキオイルもエンジンオイルも入っておらず、それどころかガソリンタンクを開けても中身は空っぽの状態であった。
「やっぱりか、普通じゃないって事だよなぁ。この本も、バギーの方も」
新旧の能力を見比べ、どちらも普通の…真っ当な物ではないという事を無言で語っているようだった。
4輪のタイヤは地形を選ばず安定した走りをみせ、皐月の新緑を後に残していく。
あっと言う間に昨日の採取場所まで到着すると、エンジンを停止させてしばしの余韻に浸る。久しぶりだったが全身で風を切る感覚が実に心地いい。
ここまで来たんだし、ついでに採取も済ませておくか。
そう思いバギーから降りるが、初音は何故か座ったまま一向に動こうとしない。
「え……おい、大丈夫か?」
呆けた顔で硬直したままの初音を心配して肩を揺すると、艶のある唇を震わせゆっくりと顔を上げていく。
本当に…大丈夫か……?
「あしな…あしなぁぁぁああ!!!」
「Aaaahhhhhh!!!!!!」
強制的に肺の空気が全て絞られた事で魂の絶叫が森の隅々にまで轟く。
思わず抱きついた初音は俺の胴体を締め上げ…て……息……ッッ!!
「あっ、すまん。つい興奮してしもうた」
死ぬッ!!
こいつと居たら死んでしまぅぅぁ!
仮に手乗りゴリラという生物が存在していた場合、そいつにベアハッグを受けたのと同等のダメージだろうか?
危うく内臓がテイクダウンを極められる寸前で初音が手を離し、ギリギリで事なきを得る。
「あ……アホかァ!……ゴブッ…ァァ……」
生きてるって素晴らしい。
昨日に引き続いて今日も命に感謝する事になるとは…教えてくれて、どうもありがとう(ビキビキッ)
初音は申し訳なさそうにワンピースの裾を握り、頭を深々と下げて謝意を表す。
もちろん悪気がないのは分かっているが『うっかり死にました』では洒落にならない。
「大丈夫だ………だい、丈夫……」
大丈夫ではない。
が、初音の泣きそうな顔を見てしまうと気丈に振る舞うしかないじゃないか。
「すまん、ワシ…馬に乗るのは初めてじゃったから気が昂ってしもうた」
バギーは馬じゃない。
というか、生き物でもないが説明すると長くなるし、俺もうまく説明できる自信がないので一先ず置いておく。
「そんなに気にするな。
それよりも手早く採取を済ませて帰ろう。
ギンレイも今頃腹を空かせてるだろうしな」
「そ、そうじゃ、ギンレイも待っておる!」
そう言うとようやく初音は元気を取り戻し、バッグを持って駆け出していった。
俺はやれやれといった風にその後ろ姿を見送り、泣かさずに済んで安堵の息を吐く。
そして、バギーの方に向き直り各種点検を行ったが、ブレーキオイルもエンジンオイルも入っておらず、それどころかガソリンタンクを開けても中身は空っぽの状態であった。
「やっぱりか、普通じゃないって事だよなぁ。この本も、バギーの方も」
新旧の能力を見比べ、どちらも普通の…真っ当な物ではないという事を無言で語っているようだった。
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