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第60話 参拝、その後。
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境内は沢山の参拝者が列を成して歩いているにも関わらず静まり返り、皆が神妙な面持ちで参詣を行う姿から神宮に対する敬意と崇敬の心が伝わってくる。
ここまでの参道は初夏とは思えない茹だる程の熱射から参拝者を守るように、数々の杉と思われる巨木が枝葉を一杯に広げ、貴重な日陰を作り出していた。
ここの樹木はどれも目を見張る大きさで初音は2000年の歴史があると言っていたが、それに及ばなくとも各々が相当な樹齢を重ねているのだろう。
鳥居をくぐってからリュックに収まるギンレイは一吠えすらしておらず、特に躾た覚えもないのに人との適正な距離について、既に心得ているのではないかと思わせる振る舞いだ。
清廉とした姿の社務所では神職や巫女が忙しく立ち回り、参拝を終えた人達がこぞって願いを込めたお神札やお守りを買い求めている。
そのまま社務所を通り過ぎて歩みを進めていくと、左手に苔むした石階段が姿を現す。
その先には威厳を讃えた拝殿が静かに鎮座し、訪れる者が心中に抱く想いを溢さず汲み取っていく。
初音と並んで二拝二拍手一拝を行い、今日までの異世界での行いや残してきた家族を想う。
叶う事なら帰還を果たせますように…。
参拝を終えて、ここまで無言だった俺達は肩の荷が降りた気分で会話を再開する。
「…どんな願いをしたんじゃ?」
神社は自身の祈願をする場所ではなく、日々の感謝を捧げるのが本来の形。
それを分かっていて敢えて聞いているのだろう。
俺の考えを知りたいが故に…。
「言っちゃうと叶わなくなるだろ?
そうなると俺は困るのさ」
「そうか………そうじゃよな!」
暗に言い含めた返答だったが心意は十分に伝わったと思う。
初音はどんな答えを期待したのだろうか。
僅かに言い淀む間に何を考え、何を言おうとしたのか、誰にも分からない。
いつの間にか、ギンレイが顔を出して俺の顔をじっと見つめている事に気付く。
幼いながらも時折垣間見せる妙に落ち着いた雰囲気から、こいつは人の心が読めるんじゃないかと変な勘繰りをする事が多くなった。
異世界に来てから俺も立派な犬バカの仲間入りって訳か。
我ながら突飛な想像に、思わず吹き出しそうになった所を初音に見られてしまった。
「お主は笑うと少しだけ、ほんの薄羽一枚分だけ可愛い顔をしてみせるのぅ」
「え……?」
茜色に染まりつつある参道の中、先程の言葉を聞き返そうとするが初音はギンレイをリュックから取り出し、ワルツを思わせる足取りで踊るばかり。
斜陽を浴びて楽しそうに回る姿は年相応の子供っぽさと、どこか別世界の儚さを醸す魅力を有していた。
ここまでの参道は初夏とは思えない茹だる程の熱射から参拝者を守るように、数々の杉と思われる巨木が枝葉を一杯に広げ、貴重な日陰を作り出していた。
ここの樹木はどれも目を見張る大きさで初音は2000年の歴史があると言っていたが、それに及ばなくとも各々が相当な樹齢を重ねているのだろう。
鳥居をくぐってからリュックに収まるギンレイは一吠えすらしておらず、特に躾た覚えもないのに人との適正な距離について、既に心得ているのではないかと思わせる振る舞いだ。
清廉とした姿の社務所では神職や巫女が忙しく立ち回り、参拝を終えた人達がこぞって願いを込めたお神札やお守りを買い求めている。
そのまま社務所を通り過ぎて歩みを進めていくと、左手に苔むした石階段が姿を現す。
その先には威厳を讃えた拝殿が静かに鎮座し、訪れる者が心中に抱く想いを溢さず汲み取っていく。
初音と並んで二拝二拍手一拝を行い、今日までの異世界での行いや残してきた家族を想う。
叶う事なら帰還を果たせますように…。
参拝を終えて、ここまで無言だった俺達は肩の荷が降りた気分で会話を再開する。
「…どんな願いをしたんじゃ?」
神社は自身の祈願をする場所ではなく、日々の感謝を捧げるのが本来の形。
それを分かっていて敢えて聞いているのだろう。
俺の考えを知りたいが故に…。
「言っちゃうと叶わなくなるだろ?
そうなると俺は困るのさ」
「そうか………そうじゃよな!」
暗に言い含めた返答だったが心意は十分に伝わったと思う。
初音はどんな答えを期待したのだろうか。
僅かに言い淀む間に何を考え、何を言おうとしたのか、誰にも分からない。
いつの間にか、ギンレイが顔を出して俺の顔をじっと見つめている事に気付く。
幼いながらも時折垣間見せる妙に落ち着いた雰囲気から、こいつは人の心が読めるんじゃないかと変な勘繰りをする事が多くなった。
異世界に来てから俺も立派な犬バカの仲間入りって訳か。
我ながら突飛な想像に、思わず吹き出しそうになった所を初音に見られてしまった。
「お主は笑うと少しだけ、ほんの薄羽一枚分だけ可愛い顔をしてみせるのぅ」
「え……?」
茜色に染まりつつある参道の中、先程の言葉を聞き返そうとするが初音はギンレイをリュックから取り出し、ワルツを思わせる足取りで踊るばかり。
斜陽を浴びて楽しそうに回る姿は年相応の子供っぽさと、どこか別世界の儚さを醸す魅力を有していた。
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