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第四章
黒衣の女の正体
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戦塵のくすぶる大地を、勝利に酔った人々が行きかう。
あちこちで勝利の凱歌をあげる者の姿が目立つが、その大半は、市壁から出てきた兵たちだ。
先陣を切って闘い、闘いぬいた冒険者たちはほぼ等しく、憔悴しきっていた
ぐったりと座り込んで、動けなくなってしまっている者がいる。
そしてもう二度と動かない者もいる。
どちらの活躍も、無駄にはならなかった。ザラマは守られたのだ。
疲労度の激しいものから順に、馬の背に乗せられ、ザラマの町にいる癒し手のもとへ、あるいは施療院まで搬送されていく。
一応、戦場にはルカを含め、三人の僧侶がいたのだが、すでに誰もがほとんどのマナを消費しきっていた。ルカの手許にはいまだ、小さな鎖の先でぶらぶらと揺れる紅い宝石があった。
朱雀の珠だ。すでに先程までの眼に痛いほどの輝きは失われ、ぼんやりとした赤にくすんでいる。
黄土色のローブを着た、ひとりの魔法使いが、その視線をある一箇所に固定させたまま、茫然自失のていで立ちつくしている。
彼はようよう、言葉を吐き出した。
「リーダー、とんでもないものを見てしまいましたね」
「ああ……」
魔法使いはもうひとり存在した。低い声で相槌をうつ。
全身を深くローブで覆い、その身をほぼ外部にさらしていない異色の魔法使い。
『フォーポインツ』のリーダー、コスティニルである。
「あれが…ファイヤー・カセウェアリーか……」
彼らが見つめていた先には、ぽっかりと地表を巨大なスプーンでえぐったかのような、黒塵くすぶるクレーターがあった。
すさまじい光景を思い返し、コスティニルはぶるりと身を震わせた。
エクセ=リアンが呪文を唱えたのちのこと――
天空に浮かぶ、赤化した巨大な怪鳥が、ひと声鳴いた。
それが合図だったかのように、さながら隕石のような巨体が黒魔獣の頭上へと落下してきたとき、思わず誰もが両手で目をおおった。紅色の光が、黒魔獣をすっぽりと呑みこんだ。
その刹那、衝撃波のような爆風。怪物の断末魔すら飲みこむほどの轟音が追いついてきた。
みなが伏せてそれをやりすごすと、すべてが終わっていた。
黒魔獣を中心地とした、周辺の大地ごと、すべてが消失してしまっていたのだ。
「あんな大魔法………初めてお目にかかった……」
「あれでランク6の冒険者……はは、たちの悪い冗談のようだ」
半ばやけくそのようにつぶやく同僚を見て、コスティニルは溜息をついた。
戦前には、エクセのランクについて、ぐだぐだと文句を言うものも確かにいた。
彼にもそういう気持ちがなかったと言えば、うそになる。
しかし、かつて彼がランク2級だったという実績を考慮すべしとして、彼を強引にメンバー入りさせたのは、ザラマの冒険者ギルド支部長のサルマナフ老であった。
――果たして、その判断は正しかった。
彼が今回の作戦のほとんどを立案し、実行し、それはほとんど成功した。
最後は誰の手にも負えぬ化物のとどめまで刺してしまった。
たとえ朱雀の珠の補助があったとはいえ、あんな大魔法は、ザラマ冒険者ギルドの誰ひとりとして唱えることはできなかっただろう。
超人的な活躍である。彼がいなければ、この大勝利はなかった。
いや、間違いなくザラマは魔王軍によって陥落していただろう。
――それにしても、だ。魔力の差や経験の差というものを、まざまざと見せつけられたような気がして、彼として他の者と同じように、素直に勝利の喜びに身を浸してはいられなかった。
「見なければ良かった。あの光景は忘れられそうにない……」
彼は、同僚にも聞こえぬような小声でつぶやいた。
自分は、あの境地まで辿り着けるのかどうか。
人間の身であるコスティニルには、わからなかった。
―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*
「終わったのう……」
ダーがつぶやき、周囲を見回した。
すでにクロノトールは戦線を離脱し、ここにはいない。
いるのは、ぐったりとうずくまるエルフの魔法使いと、あたかも魂の抜け落ちたような顔で佇立する、女僧侶だけである。
ルカがエクセの疲労っぷりを見て、リカバーしないということは、すでに彼女自身も限界に達しているということだろう。ダーがねぎらいの言葉をかけようとすると、
「ダーさん、やったね」
コニンとアルガスも、重い足取りでやってきた。
「そのダーさんというのはやめい、くすぐったい」
咎められても、コニンは嬉しそうだ。
それも仕方のない話だ。絶対不利の状況下で、彼らは勝利をつかみとったのだから。
「よう、お疲れさん」
ガチャガチャと相変わらずの青い甲冑姿で近寄ってくるものがいる。
「うむ、今回の大功労者のお出ましじゃな」
「なにを言っている。エクセのあれを見た後、俺のことなど誰も覚えているものか」
口をとがらせて、炎の剣士ヒュベルガーが反論する。
だが、すぐにふっと口許をほころばせ、
「やったんだな、俺たち」
「ああ、これ以上を望んでは、バチが当るわい」
ふたりはがっしりと固い握手をかわした。
戦闘に参加した冒険者のうち、死亡が確認された者は五人。
兵士を含めても十名に満たない。完勝といってよいだろう。
負傷者は――これは、ほぼ全員といっていい。
傷を負っていないものなど殆どいない。傷が深いか、そうでないかの差でしかない。
傷の深いものは応急処置を終えた後、ザラマへと運ばれる。
「おつかれさま」
「ああ、おつかれさま」
そんな呑気な挨拶ができる。数刻前までは想像もできなかったことだ。
魔王軍は三々五々に散り、もはや総大将も失われた。
再起を図るにも、兵糧はすべて焼け落ちている。当分は不可能といっていいだろう。
彼らの切り札であろう、黒魔獣二体も倒した。
「しかしあの魔法のインパクトの強烈だったことよ」
ダーが言うとおりであった。後方から来た兵士によると、あのエクセの大魔法は、ザラマの町からも視認できるほどだったようだ。
町民の一部からは、この世の終わりだと騒ぎだす者まで出たらしい。
事前の前知識がなく、あれを見てしまえば、誰でもそうなるだろう。
いまだ穴のなかではぶすぶすと地が焼ける音がしている。
黒魔獣が存在した痕跡すら消え去っていた。
「さて、最高の目立ちっぷりを発揮した気分はどうじゃ、エクセ」
ダーは、地面にへたりこんでいるエルフに向かっていった。
しばらくは返事もできずに俯いていたエクセだったが、
「本来は……あまり目立ちたくはない私ですが……」
ようよう、口の隙間から言葉を紡ぎだす。
「成功したのです……たまには、いいでしょう……」
ダーに応えるため、ぎこちない笑みを浮かべた。
ようやく、口の端を上げるぐらいの微妙な笑みであったが。
「おーい、この疲労困憊の功労者をはやく連れていってくれんか」
ダーが遠くにいる、馬をつれた兵士達に呼びかけた。
――そのときであった。
なにもない空間が、奇妙にねじまがり、縦に割けた。
「情けない死に様だわねえ、ンシモナのバカったら」
異質な存在が、縦に裂けた空間を手で拡げて、現われた。
ダーたちが忘れようもないその姿は――ジェルポートで見た、あの黒衣の女だった。
「兵1万に、黒魔獣2匹も与えてやったのに、笑い話にもならないわねえ」
「お前さんは、あの時の魔族の女じゃな」
「あら元気なドワーフさん、お久しぶりねえ。あらためて、ここでご挨拶しておこうかしら」
魔族の女は、顔を覆っていた黒布を取り、身に巻きつけていた黒衣も破り捨てた。
中からは、青い皮膚をした女の肢体があらわれた。
蛇のように鋭い目をのぞけば、妖艶といっていい部類に属するだろう。
肩と胸、脛当てと部分的に鎧のようなパーツでサポートしているものの、全体的な衣装はまるで下着のように露出度が激しいものであった。
かつてのクロノトールよりも露骨に扇情的な格好をしている。
彼女はエクセ=リアンに人差し指をむけると――
「なかなかめずらしい呪文を唱えるじゃなあい。おもしろい見世物だったわよ」
「……それはどうも」
軽口に応じるエクセだが、声に疲労がにじんでいる。
ダーがエクセの前に立ちふさがり、女と相対した。
「で、お前さんは何者だね。魔王軍の幹部であるのには間違い無さそうじゃが」
「ラートーニ」
妖艶な、青い肌をした女性はにやりと笑い、
「凱魔将ラートーニ。魔王様の側近といえばわかるかしら」
「そんな大物が、何ゆえこそこそと破壊活動など行う?」
「うふふ、実験といって頂戴。空間移動術が私の得意分野でねえ。でも私の技術ではまだまだ失敗も多くて。数をこなして熟練度を上げていかないといけないのよお」
「オークの大群も、おぬしの仕業じゃな」
「あれには参ったわあ……」
頬に手を当てて、しみじみとラートーニはつぶやく。
「送り込む予定の大半のオークが、亜空間の狭間に消えちゃって、成功したのは半数だけ。で、その半数も、どこかのお節介なドワーフが始末してくれたから、計画は台無し。迷惑なはなしよねえ」
「むむ、ジェルポートの魔物も実験というやつの一環か」
「そうよ、あれは上手く行きそうだったのに、異世界勇者とか出てきちゃったからねえ。でもま、もう私が悪戦苦闘する必要はなくなったから、こうして計画もべらべらおしゃべりできちゃうんだけどねえ」
「どういうことじゃ?」
「こういうことよ」
ラートーニの傍らの空間が縦にねじれ、そこから一体の人物が姿をあらわした。またしても黒衣の人物である。体格的に、こちらの方は男だと一目で分かる。
「この方が私の代わりに、なにもかも引き受けてくださるというわけ」
黒衣の男は、重々しく頷いた。その禍々しいばかりのオーラときたらどうだ。ダーもエクセも、ヒュベルガーでさえ圧倒されている。この男の持つ力は、桁違いだ。
ダーは舌打ちした。事態は終わってなどいなかったのだ。
あちこちで勝利の凱歌をあげる者の姿が目立つが、その大半は、市壁から出てきた兵たちだ。
先陣を切って闘い、闘いぬいた冒険者たちはほぼ等しく、憔悴しきっていた
ぐったりと座り込んで、動けなくなってしまっている者がいる。
そしてもう二度と動かない者もいる。
どちらの活躍も、無駄にはならなかった。ザラマは守られたのだ。
疲労度の激しいものから順に、馬の背に乗せられ、ザラマの町にいる癒し手のもとへ、あるいは施療院まで搬送されていく。
一応、戦場にはルカを含め、三人の僧侶がいたのだが、すでに誰もがほとんどのマナを消費しきっていた。ルカの手許にはいまだ、小さな鎖の先でぶらぶらと揺れる紅い宝石があった。
朱雀の珠だ。すでに先程までの眼に痛いほどの輝きは失われ、ぼんやりとした赤にくすんでいる。
黄土色のローブを着た、ひとりの魔法使いが、その視線をある一箇所に固定させたまま、茫然自失のていで立ちつくしている。
彼はようよう、言葉を吐き出した。
「リーダー、とんでもないものを見てしまいましたね」
「ああ……」
魔法使いはもうひとり存在した。低い声で相槌をうつ。
全身を深くローブで覆い、その身をほぼ外部にさらしていない異色の魔法使い。
『フォーポインツ』のリーダー、コスティニルである。
「あれが…ファイヤー・カセウェアリーか……」
彼らが見つめていた先には、ぽっかりと地表を巨大なスプーンでえぐったかのような、黒塵くすぶるクレーターがあった。
すさまじい光景を思い返し、コスティニルはぶるりと身を震わせた。
エクセ=リアンが呪文を唱えたのちのこと――
天空に浮かぶ、赤化した巨大な怪鳥が、ひと声鳴いた。
それが合図だったかのように、さながら隕石のような巨体が黒魔獣の頭上へと落下してきたとき、思わず誰もが両手で目をおおった。紅色の光が、黒魔獣をすっぽりと呑みこんだ。
その刹那、衝撃波のような爆風。怪物の断末魔すら飲みこむほどの轟音が追いついてきた。
みなが伏せてそれをやりすごすと、すべてが終わっていた。
黒魔獣を中心地とした、周辺の大地ごと、すべてが消失してしまっていたのだ。
「あんな大魔法………初めてお目にかかった……」
「あれでランク6の冒険者……はは、たちの悪い冗談のようだ」
半ばやけくそのようにつぶやく同僚を見て、コスティニルは溜息をついた。
戦前には、エクセのランクについて、ぐだぐだと文句を言うものも確かにいた。
彼にもそういう気持ちがなかったと言えば、うそになる。
しかし、かつて彼がランク2級だったという実績を考慮すべしとして、彼を強引にメンバー入りさせたのは、ザラマの冒険者ギルド支部長のサルマナフ老であった。
――果たして、その判断は正しかった。
彼が今回の作戦のほとんどを立案し、実行し、それはほとんど成功した。
最後は誰の手にも負えぬ化物のとどめまで刺してしまった。
たとえ朱雀の珠の補助があったとはいえ、あんな大魔法は、ザラマ冒険者ギルドの誰ひとりとして唱えることはできなかっただろう。
超人的な活躍である。彼がいなければ、この大勝利はなかった。
いや、間違いなくザラマは魔王軍によって陥落していただろう。
――それにしても、だ。魔力の差や経験の差というものを、まざまざと見せつけられたような気がして、彼として他の者と同じように、素直に勝利の喜びに身を浸してはいられなかった。
「見なければ良かった。あの光景は忘れられそうにない……」
彼は、同僚にも聞こえぬような小声でつぶやいた。
自分は、あの境地まで辿り着けるのかどうか。
人間の身であるコスティニルには、わからなかった。
―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*
「終わったのう……」
ダーがつぶやき、周囲を見回した。
すでにクロノトールは戦線を離脱し、ここにはいない。
いるのは、ぐったりとうずくまるエルフの魔法使いと、あたかも魂の抜け落ちたような顔で佇立する、女僧侶だけである。
ルカがエクセの疲労っぷりを見て、リカバーしないということは、すでに彼女自身も限界に達しているということだろう。ダーがねぎらいの言葉をかけようとすると、
「ダーさん、やったね」
コニンとアルガスも、重い足取りでやってきた。
「そのダーさんというのはやめい、くすぐったい」
咎められても、コニンは嬉しそうだ。
それも仕方のない話だ。絶対不利の状況下で、彼らは勝利をつかみとったのだから。
「よう、お疲れさん」
ガチャガチャと相変わらずの青い甲冑姿で近寄ってくるものがいる。
「うむ、今回の大功労者のお出ましじゃな」
「なにを言っている。エクセのあれを見た後、俺のことなど誰も覚えているものか」
口をとがらせて、炎の剣士ヒュベルガーが反論する。
だが、すぐにふっと口許をほころばせ、
「やったんだな、俺たち」
「ああ、これ以上を望んでは、バチが当るわい」
ふたりはがっしりと固い握手をかわした。
戦闘に参加した冒険者のうち、死亡が確認された者は五人。
兵士を含めても十名に満たない。完勝といってよいだろう。
負傷者は――これは、ほぼ全員といっていい。
傷を負っていないものなど殆どいない。傷が深いか、そうでないかの差でしかない。
傷の深いものは応急処置を終えた後、ザラマへと運ばれる。
「おつかれさま」
「ああ、おつかれさま」
そんな呑気な挨拶ができる。数刻前までは想像もできなかったことだ。
魔王軍は三々五々に散り、もはや総大将も失われた。
再起を図るにも、兵糧はすべて焼け落ちている。当分は不可能といっていいだろう。
彼らの切り札であろう、黒魔獣二体も倒した。
「しかしあの魔法のインパクトの強烈だったことよ」
ダーが言うとおりであった。後方から来た兵士によると、あのエクセの大魔法は、ザラマの町からも視認できるほどだったようだ。
町民の一部からは、この世の終わりだと騒ぎだす者まで出たらしい。
事前の前知識がなく、あれを見てしまえば、誰でもそうなるだろう。
いまだ穴のなかではぶすぶすと地が焼ける音がしている。
黒魔獣が存在した痕跡すら消え去っていた。
「さて、最高の目立ちっぷりを発揮した気分はどうじゃ、エクセ」
ダーは、地面にへたりこんでいるエルフに向かっていった。
しばらくは返事もできずに俯いていたエクセだったが、
「本来は……あまり目立ちたくはない私ですが……」
ようよう、口の隙間から言葉を紡ぎだす。
「成功したのです……たまには、いいでしょう……」
ダーに応えるため、ぎこちない笑みを浮かべた。
ようやく、口の端を上げるぐらいの微妙な笑みであったが。
「おーい、この疲労困憊の功労者をはやく連れていってくれんか」
ダーが遠くにいる、馬をつれた兵士達に呼びかけた。
――そのときであった。
なにもない空間が、奇妙にねじまがり、縦に割けた。
「情けない死に様だわねえ、ンシモナのバカったら」
異質な存在が、縦に裂けた空間を手で拡げて、現われた。
ダーたちが忘れようもないその姿は――ジェルポートで見た、あの黒衣の女だった。
「兵1万に、黒魔獣2匹も与えてやったのに、笑い話にもならないわねえ」
「お前さんは、あの時の魔族の女じゃな」
「あら元気なドワーフさん、お久しぶりねえ。あらためて、ここでご挨拶しておこうかしら」
魔族の女は、顔を覆っていた黒布を取り、身に巻きつけていた黒衣も破り捨てた。
中からは、青い皮膚をした女の肢体があらわれた。
蛇のように鋭い目をのぞけば、妖艶といっていい部類に属するだろう。
肩と胸、脛当てと部分的に鎧のようなパーツでサポートしているものの、全体的な衣装はまるで下着のように露出度が激しいものであった。
かつてのクロノトールよりも露骨に扇情的な格好をしている。
彼女はエクセ=リアンに人差し指をむけると――
「なかなかめずらしい呪文を唱えるじゃなあい。おもしろい見世物だったわよ」
「……それはどうも」
軽口に応じるエクセだが、声に疲労がにじんでいる。
ダーがエクセの前に立ちふさがり、女と相対した。
「で、お前さんは何者だね。魔王軍の幹部であるのには間違い無さそうじゃが」
「ラートーニ」
妖艶な、青い肌をした女性はにやりと笑い、
「凱魔将ラートーニ。魔王様の側近といえばわかるかしら」
「そんな大物が、何ゆえこそこそと破壊活動など行う?」
「うふふ、実験といって頂戴。空間移動術が私の得意分野でねえ。でも私の技術ではまだまだ失敗も多くて。数をこなして熟練度を上げていかないといけないのよお」
「オークの大群も、おぬしの仕業じゃな」
「あれには参ったわあ……」
頬に手を当てて、しみじみとラートーニはつぶやく。
「送り込む予定の大半のオークが、亜空間の狭間に消えちゃって、成功したのは半数だけ。で、その半数も、どこかのお節介なドワーフが始末してくれたから、計画は台無し。迷惑なはなしよねえ」
「むむ、ジェルポートの魔物も実験というやつの一環か」
「そうよ、あれは上手く行きそうだったのに、異世界勇者とか出てきちゃったからねえ。でもま、もう私が悪戦苦闘する必要はなくなったから、こうして計画もべらべらおしゃべりできちゃうんだけどねえ」
「どういうことじゃ?」
「こういうことよ」
ラートーニの傍らの空間が縦にねじれ、そこから一体の人物が姿をあらわした。またしても黒衣の人物である。体格的に、こちらの方は男だと一目で分かる。
「この方が私の代わりに、なにもかも引き受けてくださるというわけ」
黒衣の男は、重々しく頷いた。その禍々しいばかりのオーラときたらどうだ。ダーもエクセも、ヒュベルガーでさえ圧倒されている。この男の持つ力は、桁違いだ。
ダーは舌打ちした。事態は終わってなどいなかったのだ。
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