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第十三章
決戦前夜
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冒険者ギルドからは、次々と懐かしい顔ぶれが現れた。
まず、「あー、ドワーフさんが来てる!」と2階の階段から声をあげたのが『トルネード』紅一点のレインだった。ついでカイが姿を現し、たがいに久闊を叙する。
「――イエカイの件では、世話をかけたのう」
ダーが何気なくそうつぶやいた。話をしているうち、触れるしかない出来事もある。たとえ、それが心にできた 瘡蓋のように、旧い痛みを伴うものであったとしても。
「うん……、でも、今は兄弟水入らずだから……」
「そうじゃの。あとで挨拶をしたい。案内を頼めるかの」
「もちろんですよ」
「――おっ、エクセがいる。デートしてくれよ」
まるで軟派師のような発言を、手を振りながら明るい声で言い放ったのは、紅い髪が特徴的な美女である。その名はベスリオス。チーム『ミラージュ』の女性リーダーである。
重い雰囲気をふきとばすその軽薄な口調に、どことなくほっとした空気が漂った。やがて魔法使い集団『フォー・ポインツ』のメンバーも現れ、なごやかな会話が続く。
「魔王軍との戦いは、膠着状態が長きに渡って続いておる。さぞかし憔悴しきっておると思っておったが、案外みんな元気そうで何よりじゃのう」
「当たり前だよ。ザラマじゃ魔王軍との戦いなんて、朝の挨拶より日常的だってもんさ」
「それは流石にいいすぎだろ」
ルカの発言に、ヒュベルガーが生真面目につっこむ。
かすかに起こる笑いの後、ふと振動を感じたダーは頭上を仰ぎ見た。
地震かと思ったのだが、どうも冒険者ギルドの建物のみが揺れているようである。ふう、と吐息をついたのはヒュベルガーだった。彼は瞳に真剣な光を宿し、
「実はな、ダー。ここでは今、ちょっとした問題が起こっているんだ」
「ちょっとした問題? どんな問題なんじゃ」
「ハッキリ言ってやんな、ベルガー。あたしたち冒険者は、異世界勇者のお陰で苦労させられていますってね」
そのベスの発言に、ダーは表情をあらためた。
「――どういうことなんじゃ?」
―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―
ダーたち一行が会議室の扉をひらき、中を覗いたとき、3人の異世界勇者は、それぞれ互いに背を向け合うようにして立っていた。この部屋のなかのすべての表情が、不機嫌に曇っていた。
「――だから、俺がメインでお前らがサポートに回れ」
「お断りだわァ」
「そうですね、考慮にも値しませんね」
ゴウリキの発言を、他のふたりがただちに却下した。
全員、ダーたち一同が入室してきたことには気付いているだろうに、誰ひとりとして視線を投げよこすこともない。
「それじゃ、どうすりゃいいっていうんだ」
ゴウリキが逆に問うと、ミキモトとケイコMAXがほぼ同時にふりかえり、
「私が――」「アタクシが――」
ふたりの視線が一瞬だけかち合う。電流が走った。
まるでそれが禁忌であったかのように、ケイコとミキモトはほぼ同時に、すぐさま背を向ける。このようなことを、延々と続けておったのかと、ダーは逆に感心する思いである。
エクセの端正な顔にも、不愉快そうな色が浮いている。おそらくは、自分も同じような顔をしているに違いない。
かんかんと、槌を机に打ち付ける音が室内にひびいた。
「いい加減にしてもらえませぬか。ここにお呼びしたのは、口論をしていただくためではありません。異世界勇者同士、互いに協力して魔王軍に対峙していただきたい。願いはその一点に尽きます」
ザラマのギルド長、サルマナフ老だ。
この仲が悪い連中が一堂に会したのは、彼の人望あってこそだろう。だが、こうして3人の様子を眺めていると、それも徒労に終わりそうな雰囲気である。
――異世界勇者の主導権争い。
ヒュベルガーが苦い顔でダーたちの耳に告げたのは、聴きたくもない事実だった。異世界勇者が協力して魔王軍に当ったのは最初だけで、あとは誰がリーダーシップを執るかで醜い争いが生じているという。
事の発端は、他愛のない噂話であった。
「――魔王軍で最強の存在が、あのラートドナではないか」
ヴァルシパル側で、そういう憶測が流れ出したのは、無理からぬ事であった。
なにしろ歴代の魔王は、常に陣頭指揮を執ってきた。ところが現在の魔王は、一度も戦場に出てきたことがない。歴史書を紐解いても、このような事態は異例であるという。
つまり、彼が魔王よりも強いからではないか。そういう推測が、ヴァルシパル側で流れ始めたのは、希望的観測とはいえ当然であった。
2人は、このうわさを信じた。
ラートドナを倒せば、自分が英雄になれる。そう思ったのだ。
彼らは協力し合うことをやめ、個人行動に走った。
個別にラートドナに挑み、ただ疲弊して帰ってくる。この最悪のサイクルを繰り返しているという。
そういう日々が続くうち、もうひとりの勇者、ミキモトが現れた。
これで問題の解決が図られると期待した冒険者たちは大いに落胆した。
彼の高いプライドは、問題をますますこじらせるだけだった。3人は互いに協力することなく、ひたすら愚直に手柄首を欲しがった。
しかし、個別で対戦して勝てるほど、ラートドナという男は甘い相手ではない。魔王軍10万を統べるだけの実力のもちぬしなのである。
この状況を打破すべく、サルマナフ老が仲介に動き、この会談をセッティングしたのだという。だが、室内の状況はどうだろう。協力どころか、ただちに決裂しそうな危険な空気を孕んでいる。
ふと気付くと、サルマナフ老が無言でダーを見つめている。
どうやら発言を促しているらしい。
ダーはわざと咳払いをひとつすると、声を高めて語りはじめる。
「3人もの異世界勇者が雁首を並べて、このような密室で怒鳴りあうとは、いったい何が起こっておるのじゃ? 敵は外にひしめいておるというのに、我らが異世界勇者どのは、味方同士で衝突を繰り返しておる。これでは勝てるものも勝てぬ」
「部外者は黙っていなさいね」
「そうよ、これは異世界勇者の問題。亜人の出る幕じゃないわァ」
「――そんな言い方、失礼だよ!!」
コニンがむっとした口調で言い返した。
ダーはあえて何も言わず、冷えた感情で3人を眺めている。
このようなときは同調するくせに、この者たちは何じゃろうか。
異世界勇者のうち、ひとりは裏切って魔王軍に身を投じ、残る3人はこんな狭い部屋で反目しあっている。この4人が最初から力を結集し、協力して事に当っておれば、とっくに魔王軍を蹴散らしていたかもしれないのに。
ダーは自分の心の内部に押しこめたものが、徐々に沸騰しはじめるのを感じていた。
「――それでは、もうよい」
「もうよい、とは――?」
「考えてみれば、この3人の手を借りるまでもない。サルマナフどの、思い出すがいい。以前このザラマの危機を救ったのは誰であったか。もうお忘れかな?」
「――――では、あなたが?」
「さよう、このザラマの危機は、このダーが――」
「――ちょ、ちょ待てよ!」
「部外者が後からやってきて、手柄首をかっさらおうというのですかね!?」
「ふざけたこと言ってんじゃないわヨォ!」
3人がほぼ同時に叫んだ。ダーは低い声に怒気をみなぎらせて応えた。
「……ふざけておるのは、おぬしらじゃ」
「――何だと?」
「今日まで協力も連携もせず、ひたすら手柄首を欲してダラダラと自滅を繰り返しているおぬしらが悪い。ワシら一行の行動は、お世辞にも迅速なものではなかった。ここへ到着するまで、 隊商の護衛などをして、かなりのんびりとやってきた。ところがどうじゃ。今日に至るまで、事態は一向に動いておらぬという。あきれ果てて言葉もないわい」
「ぐぬぬ……」
3人の顔色が変わった。
痛いところを突かれたが、正論すぎて反論できない。
「じゃが、ワシらは長旅で疲れた。明日はゆっくり休みたい」
「――つまり、どういうことなんだぜ?」
「明日――3人で結果を出せばよい」
「――ふうん、なるほどですね。猶予をやるという事ですね」
「部外者の亜人に手柄首をかっさらわれるより、おぬしらにはその方がマシなんじゃないかのう」
「ずいぶんとした自信だわねェ。自分なら確実に勝てると――」
「根拠のない発言ではない。おぬしらも見たじゃろう」
そう、この場に居合わせた3人は見た。見てしまった。
この小柄なドワーフ、ダーが魔王軍幹部ラートーニ、堕落した異世界勇者ヤマダの2人を、まとめて料理したところを。
「……くっ、しょうがありませんね」
「ムカつくが、手柄首のためだ。組むしかねえぜ」
「――明日、アタクシたちが手柄首を挙げるわ。そうやって余裕を見せたこと、地団駄ふんで後悔させてあげるわァ!」
捨て台詞をのこし、3人は靴音荒く部屋を後にした。
ダーは短く苦い溜息をつくと、サルマナフ老を振りかえり、
「こんなものでよかったかのう?」と、言った。
「3人のプライドを刺激し、わざと怒らせて協力体制を作らせたのですね。お見事です」
「でも、あの3人が大将首を挙げたら、損しちゃわない?」
「損得などどうでもよい。この世界が平和になればのう」
そういうと、ダーは快活に笑った。
―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―
そのほぼ同時刻、ザラマの市壁外にひしめく魔王軍にも動きがあった。
遠征軍総大将ラートドナの元に、ある報告がもたらされたのだ。
「――ラートドナ様、例のものが完成したとのことです」
ひとりの使者が、彼の元にひざまずいた。
「うむ、随分待たせたな。――で、到着はいつになる?」
「はっ、明日の昼ごろには、転移が完了するとのことです」
「そうか。なにしろ大型だからな。不安定な転移魔法で台無しにせず、確実にやってもらえればよい」
ラートドナの頬に、不気味な笑みが浮かんだ。
それは、勝利の確信に満ちた笑みだった。
まず、「あー、ドワーフさんが来てる!」と2階の階段から声をあげたのが『トルネード』紅一点のレインだった。ついでカイが姿を現し、たがいに久闊を叙する。
「――イエカイの件では、世話をかけたのう」
ダーが何気なくそうつぶやいた。話をしているうち、触れるしかない出来事もある。たとえ、それが心にできた 瘡蓋のように、旧い痛みを伴うものであったとしても。
「うん……、でも、今は兄弟水入らずだから……」
「そうじゃの。あとで挨拶をしたい。案内を頼めるかの」
「もちろんですよ」
「――おっ、エクセがいる。デートしてくれよ」
まるで軟派師のような発言を、手を振りながら明るい声で言い放ったのは、紅い髪が特徴的な美女である。その名はベスリオス。チーム『ミラージュ』の女性リーダーである。
重い雰囲気をふきとばすその軽薄な口調に、どことなくほっとした空気が漂った。やがて魔法使い集団『フォー・ポインツ』のメンバーも現れ、なごやかな会話が続く。
「魔王軍との戦いは、膠着状態が長きに渡って続いておる。さぞかし憔悴しきっておると思っておったが、案外みんな元気そうで何よりじゃのう」
「当たり前だよ。ザラマじゃ魔王軍との戦いなんて、朝の挨拶より日常的だってもんさ」
「それは流石にいいすぎだろ」
ルカの発言に、ヒュベルガーが生真面目につっこむ。
かすかに起こる笑いの後、ふと振動を感じたダーは頭上を仰ぎ見た。
地震かと思ったのだが、どうも冒険者ギルドの建物のみが揺れているようである。ふう、と吐息をついたのはヒュベルガーだった。彼は瞳に真剣な光を宿し、
「実はな、ダー。ここでは今、ちょっとした問題が起こっているんだ」
「ちょっとした問題? どんな問題なんじゃ」
「ハッキリ言ってやんな、ベルガー。あたしたち冒険者は、異世界勇者のお陰で苦労させられていますってね」
そのベスの発言に、ダーは表情をあらためた。
「――どういうことなんじゃ?」
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ダーたち一行が会議室の扉をひらき、中を覗いたとき、3人の異世界勇者は、それぞれ互いに背を向け合うようにして立っていた。この部屋のなかのすべての表情が、不機嫌に曇っていた。
「――だから、俺がメインでお前らがサポートに回れ」
「お断りだわァ」
「そうですね、考慮にも値しませんね」
ゴウリキの発言を、他のふたりがただちに却下した。
全員、ダーたち一同が入室してきたことには気付いているだろうに、誰ひとりとして視線を投げよこすこともない。
「それじゃ、どうすりゃいいっていうんだ」
ゴウリキが逆に問うと、ミキモトとケイコMAXがほぼ同時にふりかえり、
「私が――」「アタクシが――」
ふたりの視線が一瞬だけかち合う。電流が走った。
まるでそれが禁忌であったかのように、ケイコとミキモトはほぼ同時に、すぐさま背を向ける。このようなことを、延々と続けておったのかと、ダーは逆に感心する思いである。
エクセの端正な顔にも、不愉快そうな色が浮いている。おそらくは、自分も同じような顔をしているに違いない。
かんかんと、槌を机に打ち付ける音が室内にひびいた。
「いい加減にしてもらえませぬか。ここにお呼びしたのは、口論をしていただくためではありません。異世界勇者同士、互いに協力して魔王軍に対峙していただきたい。願いはその一点に尽きます」
ザラマのギルド長、サルマナフ老だ。
この仲が悪い連中が一堂に会したのは、彼の人望あってこそだろう。だが、こうして3人の様子を眺めていると、それも徒労に終わりそうな雰囲気である。
――異世界勇者の主導権争い。
ヒュベルガーが苦い顔でダーたちの耳に告げたのは、聴きたくもない事実だった。異世界勇者が協力して魔王軍に当ったのは最初だけで、あとは誰がリーダーシップを執るかで醜い争いが生じているという。
事の発端は、他愛のない噂話であった。
「――魔王軍で最強の存在が、あのラートドナではないか」
ヴァルシパル側で、そういう憶測が流れ出したのは、無理からぬ事であった。
なにしろ歴代の魔王は、常に陣頭指揮を執ってきた。ところが現在の魔王は、一度も戦場に出てきたことがない。歴史書を紐解いても、このような事態は異例であるという。
つまり、彼が魔王よりも強いからではないか。そういう推測が、ヴァルシパル側で流れ始めたのは、希望的観測とはいえ当然であった。
2人は、このうわさを信じた。
ラートドナを倒せば、自分が英雄になれる。そう思ったのだ。
彼らは協力し合うことをやめ、個人行動に走った。
個別にラートドナに挑み、ただ疲弊して帰ってくる。この最悪のサイクルを繰り返しているという。
そういう日々が続くうち、もうひとりの勇者、ミキモトが現れた。
これで問題の解決が図られると期待した冒険者たちは大いに落胆した。
彼の高いプライドは、問題をますますこじらせるだけだった。3人は互いに協力することなく、ひたすら愚直に手柄首を欲しがった。
しかし、個別で対戦して勝てるほど、ラートドナという男は甘い相手ではない。魔王軍10万を統べるだけの実力のもちぬしなのである。
この状況を打破すべく、サルマナフ老が仲介に動き、この会談をセッティングしたのだという。だが、室内の状況はどうだろう。協力どころか、ただちに決裂しそうな危険な空気を孕んでいる。
ふと気付くと、サルマナフ老が無言でダーを見つめている。
どうやら発言を促しているらしい。
ダーはわざと咳払いをひとつすると、声を高めて語りはじめる。
「3人もの異世界勇者が雁首を並べて、このような密室で怒鳴りあうとは、いったい何が起こっておるのじゃ? 敵は外にひしめいておるというのに、我らが異世界勇者どのは、味方同士で衝突を繰り返しておる。これでは勝てるものも勝てぬ」
「部外者は黙っていなさいね」
「そうよ、これは異世界勇者の問題。亜人の出る幕じゃないわァ」
「――そんな言い方、失礼だよ!!」
コニンがむっとした口調で言い返した。
ダーはあえて何も言わず、冷えた感情で3人を眺めている。
このようなときは同調するくせに、この者たちは何じゃろうか。
異世界勇者のうち、ひとりは裏切って魔王軍に身を投じ、残る3人はこんな狭い部屋で反目しあっている。この4人が最初から力を結集し、協力して事に当っておれば、とっくに魔王軍を蹴散らしていたかもしれないのに。
ダーは自分の心の内部に押しこめたものが、徐々に沸騰しはじめるのを感じていた。
「――それでは、もうよい」
「もうよい、とは――?」
「考えてみれば、この3人の手を借りるまでもない。サルマナフどの、思い出すがいい。以前このザラマの危機を救ったのは誰であったか。もうお忘れかな?」
「――――では、あなたが?」
「さよう、このザラマの危機は、このダーが――」
「――ちょ、ちょ待てよ!」
「部外者が後からやってきて、手柄首をかっさらおうというのですかね!?」
「ふざけたこと言ってんじゃないわヨォ!」
3人がほぼ同時に叫んだ。ダーは低い声に怒気をみなぎらせて応えた。
「……ふざけておるのは、おぬしらじゃ」
「――何だと?」
「今日まで協力も連携もせず、ひたすら手柄首を欲してダラダラと自滅を繰り返しているおぬしらが悪い。ワシら一行の行動は、お世辞にも迅速なものではなかった。ここへ到着するまで、 隊商の護衛などをして、かなりのんびりとやってきた。ところがどうじゃ。今日に至るまで、事態は一向に動いておらぬという。あきれ果てて言葉もないわい」
「ぐぬぬ……」
3人の顔色が変わった。
痛いところを突かれたが、正論すぎて反論できない。
「じゃが、ワシらは長旅で疲れた。明日はゆっくり休みたい」
「――つまり、どういうことなんだぜ?」
「明日――3人で結果を出せばよい」
「――ふうん、なるほどですね。猶予をやるという事ですね」
「部外者の亜人に手柄首をかっさらわれるより、おぬしらにはその方がマシなんじゃないかのう」
「ずいぶんとした自信だわねェ。自分なら確実に勝てると――」
「根拠のない発言ではない。おぬしらも見たじゃろう」
そう、この場に居合わせた3人は見た。見てしまった。
この小柄なドワーフ、ダーが魔王軍幹部ラートーニ、堕落した異世界勇者ヤマダの2人を、まとめて料理したところを。
「……くっ、しょうがありませんね」
「ムカつくが、手柄首のためだ。組むしかねえぜ」
「――明日、アタクシたちが手柄首を挙げるわ。そうやって余裕を見せたこと、地団駄ふんで後悔させてあげるわァ!」
捨て台詞をのこし、3人は靴音荒く部屋を後にした。
ダーは短く苦い溜息をつくと、サルマナフ老を振りかえり、
「こんなものでよかったかのう?」と、言った。
「3人のプライドを刺激し、わざと怒らせて協力体制を作らせたのですね。お見事です」
「でも、あの3人が大将首を挙げたら、損しちゃわない?」
「損得などどうでもよい。この世界が平和になればのう」
そういうと、ダーは快活に笑った。
―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―*―
そのほぼ同時刻、ザラマの市壁外にひしめく魔王軍にも動きがあった。
遠征軍総大将ラートドナの元に、ある報告がもたらされたのだ。
「――ラートドナ様、例のものが完成したとのことです」
ひとりの使者が、彼の元にひざまずいた。
「うむ、随分待たせたな。――で、到着はいつになる?」
「はっ、明日の昼ごろには、転移が完了するとのことです」
「そうか。なにしろ大型だからな。不安定な転移魔法で台無しにせず、確実にやってもらえればよい」
ラートドナの頬に、不気味な笑みが浮かんだ。
それは、勝利の確信に満ちた笑みだった。
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