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第二章
英雄の真価
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降り注ぐ死を前に、ダーはただ、立ちすくんでいた。
怯えたわけではない。もう、足が前へ進まなかったのだ。
鍛え上げられた両足の筋肉は、まるで彼の意思を尊重しなかった。さながら水中を歩いているかのように重い。いや、重すぎた。
ダーはへなへなと力なく、その場に膝をついた。限界だった。
ひゅん。
そのとき、風が鳴った。
ダーは不可思議なものを見た。
何かが宙を舞っている。
あれはなんだろう、とダーは目を凝らした。それはさんざん彼らを苦しめた、ふたかかえの支柱ほどもある、あの巨大な獣の前足だった。
ついぞ先ほどまで、彼の頭上にあったものである。それがさながらブーメランのように、くるくると弧を描いて遠方へと飛んでいく。
あまりに非現実的な光景だったがゆえか、ダーはまるで驚かなかった。すべての感覚が麻痺しているかのようだった。
少し離れたところでそれは落下し、黒魔獣は苦痛の咆哮をもらす。
怪物はバランスを崩したものの、転倒するまでには至らなかった。なかなかのバランス感覚を有しているようだ。かろうじて残った三本足で立っている。
すさまじい臭気とともに、鋭利な刃物で切断したかのような断面から、大量の血潮があふれだす。
ダーはまともに怪物の鮮血を浴び、一時的に視界がふさがれた。
顔をぬぐい、身をよじるように後方へと下がる。
「――醜い、実に醜い場面に遭遇したようですね」
その声はダーの後方から聞こえた。
ふりかえると、白馬に乗った青年がいた。
兜も身につけず、さらさらと長い前髪を指で払っている。衣服は、貴族も着るのをためらうのではないか、と思われるほどの派手なものだった。
蹄の音は聞こえなかった。いつのまに現れたのか。
閉じられていたはずの背後の正門も開かれている。正門の開閉時には、かなりのきしみ音が鳴る。それすらも耳に入らぬほど、ダーの意識は朦朧としていたのだろう。
青年の背後にはずらりと、人馬の集団が並んでいた。
装備を見るに、かなりの熟練の冒険者集団のように見えた。
白馬の青年は、鞍上からぴん、と足を延ばした。その姿勢から華麗を通り越して、気障としかいいようのない動作で地へと足を下ろす。
着地してからもういちど、さらりと髪をかきあげる。
「ベールアシュから戻ったら、とんでもない場面に出くわしたものですね」
「――勇者様が、じきじきに手を下す必要はございませんよ」
後ろに控える集団のひとりが言った。
地に降り立った若者はちっちっと指をふり、
「地道に魔物を倒し、民衆の支持を得るのも、勇者として大切なことですね」
「さすがミキモトさま。われらとは器の大きさが違います」
「わたしたち、惚れなおしちゃいますわ」
つぎつぎと聞き苦しい追従を並べる。
ミキモト………ダーには聞き覚えがある名前だった。
ぼんやりとした思考で、ダーは思い出す。
それはすべての発端となった、忌まわしきヴァルシパル王宮の謁見の間。
やたら気障なポーズばかり決めていた、異世界人がそう名乗ったのではなかったか。――ハルカゼ・ミキモトと。
かれは美しい宝石をちりばめた柄を手に取り、大げさな身振りでそれを抜き放った。
レイピア――。一見、すぐ折れてしまいそうな細い刀身。
だがその剣は、神聖といってもいいほどの、まばゆい光輝で周囲を洗った。
(見かけとは違い、この男、なんらかの剣術をたしなんでおるな)
その洗練された所作から、ダーはそう見抜いた。
「キミたちはそこで見ておきたまえ、美しい、僕の雄姿をね」
彼は、すっと半身の体勢にガニ股に近い足の広げ方――アンガルドの姿勢をとる。
「アレ――」
誰も言わないので、自ら告げるミキモト。
腕をたたんだ姿勢のまま直進。
一気に豹のような敏捷さで跳躍し、するどい突きを放った。
「マルシェ・クー・ドロワ」
これにはダーも、黒衣の女性も、呆然とした。
ミキモトが、その攻撃とも演舞ともつかぬ技を披露したのは、魔獣から数歩ほど距離のある場所であったからだ。
当然ながら、彼がついたのは虚空だった。
この男は、なにをしたいのか。
ダーを含む全員が、一瞬、呆気にとられた。
が、いち早く反応したのは黒衣の女性だった。瞬時に詠唱を完成させ、魔獣の周囲にエクセが言っていた結界をはりめぐらせた。
ミキモトの一見、無意味な行動に、なにかを感じとったのだろう。
次の瞬間、まるで硝子が破裂するような音がダーの耳朶をうった。見えざるものが砕けた。そんな感覚であった。
「私の暗黒障壁をやすやすと砕くとは……さすが勇者の武器といったところかしらね」
これでダーも合点がいった。なぜ魔獣の前脚が切断されたのか。
ミキモトが馬上から、この斬撃を一閃させたのだ。
一方、前脚を切断された黒魔獣も黙ってはいない。怒りに燃える双眸をミキモトに向けると、口腔をひらいた。
あの瘴気を放つ気だろうか、とダーが思う暇もない。
ザクッという音とともに、鮮血がしぶいた。
――黒魔獣の顔面から。
鋭利な刃物で切りつけられたように、眉間から頬へかけ、大きな傷跡がぽっかり口を開いている。
先程の一撃は、黒衣の女性の障壁を砕いたのみならず、魔獣へも攻撃を加えていたのだ。
(やれやれ、笑うしかないわい)
相手は、彼が全身全霊をもって戦い、かすり傷しか負わせられなかった化け物だ。
それをミキモトは虚空をなでただけで、軽々と大ダメージを与えている。
「グォォォォォオオオオオオオンン!!」
魔獣の咆哮が響いた。電流が角に集中する。
あの雷撃砲の先触れだった。ミキモトは無表情でそれを見つめている。
もしかして、ミキモトはあの技の威力を知らぬのではないか。さすがにダーが危惧し、忠告を加えようとしたときだった。
「あら、面白そうな事をしてるのねエ」
今度は、甲高い男の声が響いた。正門から何者かが吐き出される。
新たな闖入者の姿を見ると、これまた見覚えのある男であった。
その姿。忘れたくても忘れられぬ、全身の線が浮き出た独特の衣装を身にまとった不気味な男。ケイコMAXであった。
「アタクシもお祭り好きなの。ぜひ参加したいわァ」
言葉を置き去りに、ケイコMAXは疾走していた。
異常な跳躍力で飛翔する。魔獣へ。
「真空跳び膝蹴り」
鋭い刃物のような膝が黒魔獣の顎を打ち抜いた。
よく見ると、ケイコMAXの両足には、ごつごつと装飾のほどこされた琥珀色のブーツが装着されていた。あれが異常な跳躍力の正体だろう。
魔獣が放とうとした雷撃は、中空へと飛んで霧散する。
次の瞬間、ごとんと大きな音を立てて、右の角が地へ落下した。
その切断面の鋭利さたるや。あたかも単に、その角のパーツを取り外しただけのように見えるほどだ。ミキモトが再び斬撃を放ったのだ。
「ちょっと何よアナタ、あぶないじゃないのさ!」
着地したケイコMAXが、じろりとミキモトをねめつける。
「横から割って入ったくせによく言うね。これはボクの得物だね」
「あら。それならどちらが先に仕留めるか、競争といこうじゃないの」
「ほう、面白い提案だね」
ミキモトとケイコMAXは笑みをかわしあうと、それぞれの必殺技らしきものを魔獣めがけて繰り出した。
目にもとまらぬ早業で、ミキモトは虚空へ連続突きを放った。
「流星連続突き」
ケイコMAXは空中で旋回し、連続して回し蹴りを放った。
「空中旋風斬脚」
轟音が周囲を支配した。誰もがとばっちりを避けようと、頭を地にすりつけるようにして難を逃れた。彼らの頭上では、あたかも突風がダンスを踊っているかのようだった。
ミキモトは、やがて気取って一礼をすると、剣を鞘に収めた。
ケイコMAXは、ぽんぽんと黒いタイツに付着した埃を払った。
ほぼ同時だっただろうか。ふたりはダーと黒魔獣にくるりと背を向けた。
それが合図だったかのように、先ほどまで立っていた黒魔獣の姿が、見る間に崩れはじめる。
横に、縦に、巨体がバラバラに崩壊し始めた。
ダーは崩落に巻き込まれぬよう、じりじりと下がるのが精一杯だった。
「醜いね……実に……ね」
やがて、そこには何もなくなった。
全身が細切れとなったただの肉塊が、地面に転がっているだけだ。座り込んだままのダーを、冷ややかに見つめていたケイコMAXだったが、
「そこに転がってる女はジイさんのお仲間? ワタクシたちの前でさんざんイキってた割に、仲間は見殺しってワケ? ブザマよねェ」
冷気をまとった言葉で、ダーを切り捨てた。
一方のミキモトはダーへ、哄笑とともにハンカチを投げてよこす。
「これに懲りたら、クソ雑魚の分際でウロチョロしないことだね。口先だけ威勢のいいドワーフさん。そのハンケチは返さなくていいよ」
そして出迎えるメンバーに、笑顔で手を振る。
もちろん彼の仲間たちは興奮気味に、この異世界からの英雄を迎えた。
「さっすがミキモト様、かっこよすぎです!!」
「まるで勝負にもなりませんでしたね」
「もう私メロメロですぅー」
「はははは、キミたち、もっと褒め称えたまえ」
ミキモトは彼女らをハグしつつ、馬の方へと向かっていく。
ケイコMAXは彼らのイチャイチャを尻目に、さっさと正門へと去っていった。
謎の黒衣の女性の姿はどこにもなかった。攻撃に巻き込まれたとは思えぬから、さっさと遁走したと見るのが妥当だろう。
「さあボクらも町へ入って、愚民どもを安心させてあげようじゃないかね」
再び馬上の人となった彼らは、ジェルポートの門の中へと消えていった。
市壁のなかから、潮のような大歓声が起こるのが聞こえた。
「――ケイコMAX様、バンザイ!!!!」
「――ミキモト様、バンザイ!!!」
ダーはその歓声を、うずくまったまま背中で聞いていた。
怯えたわけではない。もう、足が前へ進まなかったのだ。
鍛え上げられた両足の筋肉は、まるで彼の意思を尊重しなかった。さながら水中を歩いているかのように重い。いや、重すぎた。
ダーはへなへなと力なく、その場に膝をついた。限界だった。
ひゅん。
そのとき、風が鳴った。
ダーは不可思議なものを見た。
何かが宙を舞っている。
あれはなんだろう、とダーは目を凝らした。それはさんざん彼らを苦しめた、ふたかかえの支柱ほどもある、あの巨大な獣の前足だった。
ついぞ先ほどまで、彼の頭上にあったものである。それがさながらブーメランのように、くるくると弧を描いて遠方へと飛んでいく。
あまりに非現実的な光景だったがゆえか、ダーはまるで驚かなかった。すべての感覚が麻痺しているかのようだった。
少し離れたところでそれは落下し、黒魔獣は苦痛の咆哮をもらす。
怪物はバランスを崩したものの、転倒するまでには至らなかった。なかなかのバランス感覚を有しているようだ。かろうじて残った三本足で立っている。
すさまじい臭気とともに、鋭利な刃物で切断したかのような断面から、大量の血潮があふれだす。
ダーはまともに怪物の鮮血を浴び、一時的に視界がふさがれた。
顔をぬぐい、身をよじるように後方へと下がる。
「――醜い、実に醜い場面に遭遇したようですね」
その声はダーの後方から聞こえた。
ふりかえると、白馬に乗った青年がいた。
兜も身につけず、さらさらと長い前髪を指で払っている。衣服は、貴族も着るのをためらうのではないか、と思われるほどの派手なものだった。
蹄の音は聞こえなかった。いつのまに現れたのか。
閉じられていたはずの背後の正門も開かれている。正門の開閉時には、かなりのきしみ音が鳴る。それすらも耳に入らぬほど、ダーの意識は朦朧としていたのだろう。
青年の背後にはずらりと、人馬の集団が並んでいた。
装備を見るに、かなりの熟練の冒険者集団のように見えた。
白馬の青年は、鞍上からぴん、と足を延ばした。その姿勢から華麗を通り越して、気障としかいいようのない動作で地へと足を下ろす。
着地してからもういちど、さらりと髪をかきあげる。
「ベールアシュから戻ったら、とんでもない場面に出くわしたものですね」
「――勇者様が、じきじきに手を下す必要はございませんよ」
後ろに控える集団のひとりが言った。
地に降り立った若者はちっちっと指をふり、
「地道に魔物を倒し、民衆の支持を得るのも、勇者として大切なことですね」
「さすがミキモトさま。われらとは器の大きさが違います」
「わたしたち、惚れなおしちゃいますわ」
つぎつぎと聞き苦しい追従を並べる。
ミキモト………ダーには聞き覚えがある名前だった。
ぼんやりとした思考で、ダーは思い出す。
それはすべての発端となった、忌まわしきヴァルシパル王宮の謁見の間。
やたら気障なポーズばかり決めていた、異世界人がそう名乗ったのではなかったか。――ハルカゼ・ミキモトと。
かれは美しい宝石をちりばめた柄を手に取り、大げさな身振りでそれを抜き放った。
レイピア――。一見、すぐ折れてしまいそうな細い刀身。
だがその剣は、神聖といってもいいほどの、まばゆい光輝で周囲を洗った。
(見かけとは違い、この男、なんらかの剣術をたしなんでおるな)
その洗練された所作から、ダーはそう見抜いた。
「キミたちはそこで見ておきたまえ、美しい、僕の雄姿をね」
彼は、すっと半身の体勢にガニ股に近い足の広げ方――アンガルドの姿勢をとる。
「アレ――」
誰も言わないので、自ら告げるミキモト。
腕をたたんだ姿勢のまま直進。
一気に豹のような敏捷さで跳躍し、するどい突きを放った。
「マルシェ・クー・ドロワ」
これにはダーも、黒衣の女性も、呆然とした。
ミキモトが、その攻撃とも演舞ともつかぬ技を披露したのは、魔獣から数歩ほど距離のある場所であったからだ。
当然ながら、彼がついたのは虚空だった。
この男は、なにをしたいのか。
ダーを含む全員が、一瞬、呆気にとられた。
が、いち早く反応したのは黒衣の女性だった。瞬時に詠唱を完成させ、魔獣の周囲にエクセが言っていた結界をはりめぐらせた。
ミキモトの一見、無意味な行動に、なにかを感じとったのだろう。
次の瞬間、まるで硝子が破裂するような音がダーの耳朶をうった。見えざるものが砕けた。そんな感覚であった。
「私の暗黒障壁をやすやすと砕くとは……さすが勇者の武器といったところかしらね」
これでダーも合点がいった。なぜ魔獣の前脚が切断されたのか。
ミキモトが馬上から、この斬撃を一閃させたのだ。
一方、前脚を切断された黒魔獣も黙ってはいない。怒りに燃える双眸をミキモトに向けると、口腔をひらいた。
あの瘴気を放つ気だろうか、とダーが思う暇もない。
ザクッという音とともに、鮮血がしぶいた。
――黒魔獣の顔面から。
鋭利な刃物で切りつけられたように、眉間から頬へかけ、大きな傷跡がぽっかり口を開いている。
先程の一撃は、黒衣の女性の障壁を砕いたのみならず、魔獣へも攻撃を加えていたのだ。
(やれやれ、笑うしかないわい)
相手は、彼が全身全霊をもって戦い、かすり傷しか負わせられなかった化け物だ。
それをミキモトは虚空をなでただけで、軽々と大ダメージを与えている。
「グォォォォォオオオオオオオンン!!」
魔獣の咆哮が響いた。電流が角に集中する。
あの雷撃砲の先触れだった。ミキモトは無表情でそれを見つめている。
もしかして、ミキモトはあの技の威力を知らぬのではないか。さすがにダーが危惧し、忠告を加えようとしたときだった。
「あら、面白そうな事をしてるのねエ」
今度は、甲高い男の声が響いた。正門から何者かが吐き出される。
新たな闖入者の姿を見ると、これまた見覚えのある男であった。
その姿。忘れたくても忘れられぬ、全身の線が浮き出た独特の衣装を身にまとった不気味な男。ケイコMAXであった。
「アタクシもお祭り好きなの。ぜひ参加したいわァ」
言葉を置き去りに、ケイコMAXは疾走していた。
異常な跳躍力で飛翔する。魔獣へ。
「真空跳び膝蹴り」
鋭い刃物のような膝が黒魔獣の顎を打ち抜いた。
よく見ると、ケイコMAXの両足には、ごつごつと装飾のほどこされた琥珀色のブーツが装着されていた。あれが異常な跳躍力の正体だろう。
魔獣が放とうとした雷撃は、中空へと飛んで霧散する。
次の瞬間、ごとんと大きな音を立てて、右の角が地へ落下した。
その切断面の鋭利さたるや。あたかも単に、その角のパーツを取り外しただけのように見えるほどだ。ミキモトが再び斬撃を放ったのだ。
「ちょっと何よアナタ、あぶないじゃないのさ!」
着地したケイコMAXが、じろりとミキモトをねめつける。
「横から割って入ったくせによく言うね。これはボクの得物だね」
「あら。それならどちらが先に仕留めるか、競争といこうじゃないの」
「ほう、面白い提案だね」
ミキモトとケイコMAXは笑みをかわしあうと、それぞれの必殺技らしきものを魔獣めがけて繰り出した。
目にもとまらぬ早業で、ミキモトは虚空へ連続突きを放った。
「流星連続突き」
ケイコMAXは空中で旋回し、連続して回し蹴りを放った。
「空中旋風斬脚」
轟音が周囲を支配した。誰もがとばっちりを避けようと、頭を地にすりつけるようにして難を逃れた。彼らの頭上では、あたかも突風がダンスを踊っているかのようだった。
ミキモトは、やがて気取って一礼をすると、剣を鞘に収めた。
ケイコMAXは、ぽんぽんと黒いタイツに付着した埃を払った。
ほぼ同時だっただろうか。ふたりはダーと黒魔獣にくるりと背を向けた。
それが合図だったかのように、先ほどまで立っていた黒魔獣の姿が、見る間に崩れはじめる。
横に、縦に、巨体がバラバラに崩壊し始めた。
ダーは崩落に巻き込まれぬよう、じりじりと下がるのが精一杯だった。
「醜いね……実に……ね」
やがて、そこには何もなくなった。
全身が細切れとなったただの肉塊が、地面に転がっているだけだ。座り込んだままのダーを、冷ややかに見つめていたケイコMAXだったが、
「そこに転がってる女はジイさんのお仲間? ワタクシたちの前でさんざんイキってた割に、仲間は見殺しってワケ? ブザマよねェ」
冷気をまとった言葉で、ダーを切り捨てた。
一方のミキモトはダーへ、哄笑とともにハンカチを投げてよこす。
「これに懲りたら、クソ雑魚の分際でウロチョロしないことだね。口先だけ威勢のいいドワーフさん。そのハンケチは返さなくていいよ」
そして出迎えるメンバーに、笑顔で手を振る。
もちろん彼の仲間たちは興奮気味に、この異世界からの英雄を迎えた。
「さっすがミキモト様、かっこよすぎです!!」
「まるで勝負にもなりませんでしたね」
「もう私メロメロですぅー」
「はははは、キミたち、もっと褒め称えたまえ」
ミキモトは彼女らをハグしつつ、馬の方へと向かっていく。
ケイコMAXは彼らのイチャイチャを尻目に、さっさと正門へと去っていった。
謎の黒衣の女性の姿はどこにもなかった。攻撃に巻き込まれたとは思えぬから、さっさと遁走したと見るのが妥当だろう。
「さあボクらも町へ入って、愚民どもを安心させてあげようじゃないかね」
再び馬上の人となった彼らは、ジェルポートの門の中へと消えていった。
市壁のなかから、潮のような大歓声が起こるのが聞こえた。
「――ケイコMAX様、バンザイ!!!!」
「――ミキモト様、バンザイ!!!」
ダーはその歓声を、うずくまったまま背中で聞いていた。
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