26 / 41
オリビアの愛編
第25話・作戦会議
しおりを挟む
船に乗り込んでみると、ボニーの最期を聞いた傷のあるヴァイキングも乗っていた。彼がリヴァイアサンの元へ連れていくことを使命にしているように、手はすでに舵を握っていた。エヴァンはやる気満々の彼に名前は何ていうんだい、といつもの軽口で聞いた。
「あっしはジョニーです!」
「そうか。帰ってきたら一杯やらないとな」
「いえ、残念ながらあっしは下戸で」
「ヴァイキングが何府抜けたこと言ってんだよ。酔った勢いでボニーのこと、色々聞かせてほしいんだよ。俺も、もっとあいつについて話しておきたいことがあるんだ。酔わないと話せないようなことがな」
「が、がんばるっす!」
「上等だ。それじゃ、出航だ!」
エヴァンの声に合わせてジョニーが船を港から出航させていく。船の横には人魚が悠々と泳いでいるのが確認でき、タカオは彼女に声を掛ける。
「なあ、リヴァイアサンに何か弱点はないのか?」
「海の化身であるリヴァイアサンに、これと言った弱点はないかと思います。体表は水のヴェールに包まれていて、剝がさない限りあらゆる攻撃を無効化すると言われています。ダメージを与えようにも簡単には……」
そうか、と言いながらクレアの方に向き直る。
「今までは割と封印自体は簡単にやってきたけど、リヴァイアサンはどうだ?」
「あれだけの質量だから、おいそれと封印はできないでしょうね。それに、人魚さんが言ったことが本当ならば、まずはヴェールを取らないと封印自体もできないはずよ」
「そうですよね……。それに、私たちは海の上からでは攻撃もできないかと……」
「それなら安心して。あなた達を海で案内したように、シャボン玉で何とか移動できるようにするわ」
ターニャの懸念にも人魚はすぐに解答を返してくる。
「魔言語の力を使えばシャボン玉であなた達を空中に誘うこともできるわ」
「魔言語の力さまさまだな」
「何言ってんの、相手はあのリヴァイアサンよ。津波を起こされたら一発ゲームオーバーだって考えられるんだから。これぐらいハンデないとバランス悪いっつうの」
「かもな……。そうだ、それだけ強力な魔言語を使えるなら、それでヴェールを取れないのか……」
「残念ですが、水の元素そのものの力である『浄化』の力には負けてしまいます。どのような攻撃も浄化して無効にしますけど、取ってしまえば私たちの歌で力を弱めることはできるはずです」
「じゃあ、その瞬間が剣で封印するチャンスか……」
先ほどまでの話を整理し、俺はリヴァイアサンを封印剣に捕らえる作戦を立てていく。
1・リヴァイアサンの「水のヴェール」を取る。
2・人魚の歌でリヴァイアサンを弱らせる。
3・封印剣「シール」の中に封印する。
「簡単に整理するとこうだな」
「やること多いですね……」
「まあ、ゴブリンの場合はあんたのパワープレイもあったし、邪霊の規模自体が小さかったからよかったんだけどね。今回はちょっと勝手が違うわ」
クレアのいう通りだった。デビュー戦であたるドラゴンも封印自体はすんなりできたし、ゴブリンもターニャの力を借りれたので苦労はしなかった。
しかし、今回は邪霊の規模が違えば特殊能力持ちだ。だが、この世界が「ゲーム」のルールに則っているのであれば、そんな強敵にも弱点が存在するはずだ……。
「……成功するかどうかわからないが、やってみるか」
自分がプレイしたゲームを思い返すと、ある作戦がピンと頭の中で生まれてきた。思い付いたままその作戦にクレアをはじめターニャ、エヴァンに話すも、半信半疑という感じのリアクションだった。しかし、話を聞いていたジョニーだけは目を丸くしてくれた。
「あんた、すごいこと思い付くな……」
「まあね。でも、ぜんぶ推測の域を出ないしな。やってみないとわからない。それよりもジョニーさん、この船にバリスタはある?」
「ありますよ! 足りなければ応援に向かっている船にも付いているはずですぜ」
「ならよかった、頼むよ」
ジョニーは俺に向けて、親指をグッと押し付けようとするぐらい立てる。彼のテンションを吸い上げるように、クレアは陰鬱としたため息をもらしている。
「そんな無謀な作戦、私はリヴァイアサン相手に試したくなかったわ……。それに、この作戦だとあんた膨大な質量をクリエイトしないといけないけど、唱えられるの?」
「足りないときは魔言語の力を借りるさ。それにお前も、今回魔力が足りなくなってヒーヒー言い出すんじゃねえぞ」
少しいじるとうっさいわね、とクレアらしい噛みつき方をしてくる。これなら大丈夫だろうと思い、ターニャにも力仕事を頼むことを再度お願いする。
「……わかった。町を救ってくれたタカオを信じよう。私の力でよければ、今回の作戦でも存分に生かさせてもらうぞ」
「ありがとう。あと、この作戦は魔言語の力とエヴァンの身のこなしに掛かってくる。人魚と意思疎通が取りやすいエヴァンに任せるけど、いいか?」
「ほんと、まだ慣れ親しんでいない人間によくもまあこんなこと頼むよなあ……」
「エヴァンしかないんだろ、こんな大役をやってくれる人なんて」
エヴァンのいつもの軽口を少し真似てみた。フッと笑ってから言ってくれるじゃない、と自分のテンションに合わせてくる。
「よっしゃ、どうせ他に作戦は無いんだろ? 人魚さん、行けるかい?」
エヴァンの声に人魚もええ、と返事をしてくる。
「オッケーよ。エヴァンとの共同作戦ね。だったらシャボン玉でタカオさんとクレアさん、ターニャさんを援護するのは他の人魚に任せるわ。仲間もリヴァイアサンの近くに集まっているから、作戦は先に伝えておくわね」
やっと俺たちは作戦を組み上げ、リヴァイアサンも目前に迫っている。周りを見るとリューベックから出てきた船も集まってきており、これなら俺の作戦の成功率も少しだけ高まった気がした。
エヴァンも船を見つめた後、景気づけにとすべての船に行き渡るように声を上げ、戦場に赴く戦士たちの心を奮い立たせた。
「野郎ども、配置に付きやがれ!」
「あっしはジョニーです!」
「そうか。帰ってきたら一杯やらないとな」
「いえ、残念ながらあっしは下戸で」
「ヴァイキングが何府抜けたこと言ってんだよ。酔った勢いでボニーのこと、色々聞かせてほしいんだよ。俺も、もっとあいつについて話しておきたいことがあるんだ。酔わないと話せないようなことがな」
「が、がんばるっす!」
「上等だ。それじゃ、出航だ!」
エヴァンの声に合わせてジョニーが船を港から出航させていく。船の横には人魚が悠々と泳いでいるのが確認でき、タカオは彼女に声を掛ける。
「なあ、リヴァイアサンに何か弱点はないのか?」
「海の化身であるリヴァイアサンに、これと言った弱点はないかと思います。体表は水のヴェールに包まれていて、剝がさない限りあらゆる攻撃を無効化すると言われています。ダメージを与えようにも簡単には……」
そうか、と言いながらクレアの方に向き直る。
「今までは割と封印自体は簡単にやってきたけど、リヴァイアサンはどうだ?」
「あれだけの質量だから、おいそれと封印はできないでしょうね。それに、人魚さんが言ったことが本当ならば、まずはヴェールを取らないと封印自体もできないはずよ」
「そうですよね……。それに、私たちは海の上からでは攻撃もできないかと……」
「それなら安心して。あなた達を海で案内したように、シャボン玉で何とか移動できるようにするわ」
ターニャの懸念にも人魚はすぐに解答を返してくる。
「魔言語の力を使えばシャボン玉であなた達を空中に誘うこともできるわ」
「魔言語の力さまさまだな」
「何言ってんの、相手はあのリヴァイアサンよ。津波を起こされたら一発ゲームオーバーだって考えられるんだから。これぐらいハンデないとバランス悪いっつうの」
「かもな……。そうだ、それだけ強力な魔言語を使えるなら、それでヴェールを取れないのか……」
「残念ですが、水の元素そのものの力である『浄化』の力には負けてしまいます。どのような攻撃も浄化して無効にしますけど、取ってしまえば私たちの歌で力を弱めることはできるはずです」
「じゃあ、その瞬間が剣で封印するチャンスか……」
先ほどまでの話を整理し、俺はリヴァイアサンを封印剣に捕らえる作戦を立てていく。
1・リヴァイアサンの「水のヴェール」を取る。
2・人魚の歌でリヴァイアサンを弱らせる。
3・封印剣「シール」の中に封印する。
「簡単に整理するとこうだな」
「やること多いですね……」
「まあ、ゴブリンの場合はあんたのパワープレイもあったし、邪霊の規模自体が小さかったからよかったんだけどね。今回はちょっと勝手が違うわ」
クレアのいう通りだった。デビュー戦であたるドラゴンも封印自体はすんなりできたし、ゴブリンもターニャの力を借りれたので苦労はしなかった。
しかし、今回は邪霊の規模が違えば特殊能力持ちだ。だが、この世界が「ゲーム」のルールに則っているのであれば、そんな強敵にも弱点が存在するはずだ……。
「……成功するかどうかわからないが、やってみるか」
自分がプレイしたゲームを思い返すと、ある作戦がピンと頭の中で生まれてきた。思い付いたままその作戦にクレアをはじめターニャ、エヴァンに話すも、半信半疑という感じのリアクションだった。しかし、話を聞いていたジョニーだけは目を丸くしてくれた。
「あんた、すごいこと思い付くな……」
「まあね。でも、ぜんぶ推測の域を出ないしな。やってみないとわからない。それよりもジョニーさん、この船にバリスタはある?」
「ありますよ! 足りなければ応援に向かっている船にも付いているはずですぜ」
「ならよかった、頼むよ」
ジョニーは俺に向けて、親指をグッと押し付けようとするぐらい立てる。彼のテンションを吸い上げるように、クレアは陰鬱としたため息をもらしている。
「そんな無謀な作戦、私はリヴァイアサン相手に試したくなかったわ……。それに、この作戦だとあんた膨大な質量をクリエイトしないといけないけど、唱えられるの?」
「足りないときは魔言語の力を借りるさ。それにお前も、今回魔力が足りなくなってヒーヒー言い出すんじゃねえぞ」
少しいじるとうっさいわね、とクレアらしい噛みつき方をしてくる。これなら大丈夫だろうと思い、ターニャにも力仕事を頼むことを再度お願いする。
「……わかった。町を救ってくれたタカオを信じよう。私の力でよければ、今回の作戦でも存分に生かさせてもらうぞ」
「ありがとう。あと、この作戦は魔言語の力とエヴァンの身のこなしに掛かってくる。人魚と意思疎通が取りやすいエヴァンに任せるけど、いいか?」
「ほんと、まだ慣れ親しんでいない人間によくもまあこんなこと頼むよなあ……」
「エヴァンしかないんだろ、こんな大役をやってくれる人なんて」
エヴァンのいつもの軽口を少し真似てみた。フッと笑ってから言ってくれるじゃない、と自分のテンションに合わせてくる。
「よっしゃ、どうせ他に作戦は無いんだろ? 人魚さん、行けるかい?」
エヴァンの声に人魚もええ、と返事をしてくる。
「オッケーよ。エヴァンとの共同作戦ね。だったらシャボン玉でタカオさんとクレアさん、ターニャさんを援護するのは他の人魚に任せるわ。仲間もリヴァイアサンの近くに集まっているから、作戦は先に伝えておくわね」
やっと俺たちは作戦を組み上げ、リヴァイアサンも目前に迫っている。周りを見るとリューベックから出てきた船も集まってきており、これなら俺の作戦の成功率も少しだけ高まった気がした。
エヴァンも船を見つめた後、景気づけにとすべての船に行き渡るように声を上げ、戦場に赴く戦士たちの心を奮い立たせた。
「野郎ども、配置に付きやがれ!」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
17
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる