【完結】ミキって書かせて頂きます

すみ 小桜(sumitan)

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22話 救われたのは……

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 事件を解決した次の日の朝、ミキは朝早くから食堂のソファーに座り、新聞を読んでいた。
 北海道の地方紙。そこには殺人事件の記事が載っていた。
 ミキは何となく、新聞で記事を読んでみたくなったのだ。

 「早いな。おはよう」

 ミキが振り向くと、遊佐が立っていた。

 「おはよう。あなたも早いのね。まだ、六時半よ」
 「昨日一日、君と一緒に居た為か、静かすぎてな」

 ミキの隣に座りながら、嫌みのような一言を遊佐は言った。

 「何よそれ! 私、そんなに騒がしくしてないわよ!」

 新聞を畳みながら、速攻文句を返した。

 「自覚がなかったのか!」
 「何よそれ! 遊佐さんの方が目立っていたじゃない」
 「そうか? まあ、元気そうで何よりだ」
 「元気に決まってるでしょう。事件解決したんだから……」

 折りたたんだ新聞を見つめつつ答えた。

 「そういえば、一つ気になっている事があるのだが。楠さんが君に謝ったと話していただろう? どういう意味だったんだ?」

 遊佐が言っているのは、楠の最期を話て欲しいと言った時に、伊藤に言った言葉である。彼は、ずっとそれが気になっていた。
 ミキは、座っているソファーを見つめ答える。

 「……ここに来た日に、二人でこの場所でお話ししていた時の事よ。楠さん、冗談を言った後、私に謝ったのよ……」
 「なんだそれは……」

 全く違う話ではないかと、遊佐は驚く。

 「私がそう思っただけ。なんか、目が真剣だっただから……。意味ありげに感じたの」

 そう答えたミキの声が、悲しげに聞こえる。

 「彼女……楠さんの事は残念だったが、嫌われてはいなかっただろう? 話をしようと誘ったのは彼女の方からだし……」

 遊佐は、どう元気づけて良いかわからずそう言った。

 「そうね。でも、私も嘘つきって思われていたかもね」
 「そんな事ありませんよ」

 否定の言葉が後ろから聞こえ、驚いて二人は振り向くと堀が立っていた。

 「おはようございます。すみません。盗み聞きするつもりはなかったのですが……」
 「いえ、おはようございます」

 遊佐がそう返すと堀は軽く会釈し、もう一つの向かい側のソファーに座った。

 「おはようございます」

 ミキも挨拶を返す。
 と、座ったばかりの堀が突然立ち上がり、深々と頭を下げた。何事かと二人は驚く。

 「昨日は助けて頂き、ありがとうございました。ちゃんとお礼を言っていなかったなっと思って……」
 「堀さんって礼儀正しいのね。でもあれ、堀さんを助けた訳ではなく、自分の為よ。気にしないで」

 ミキは、正直にそう言うも、堀は首を横に振った。

 「そうであったとしても、僕はそれで救われたんです」
 「大袈裟ね」
 「大袈裟などではありません!」

 堀はそう言うと、チラッと遊佐を見た。

 「僕にとっては重大な事だったんです。婚約者が女装して、それが原因で署で取り調べなんて……。もしかしたら、婚約解消になっていたかもしれない」

 堀が俯いて言うと、

 「参考人としての事情聴取です」

 遊佐は、そう言った。
 その言葉に、また堀は首を横に振る。

 「警察はそう思っていても、一般人にしては非日常的な事なんです。彼女は、僕の女装の事を知っています。ですが、ご両親は知りません。だから、大袈裟ではないんです」
 「そうだな。いい印象はないな……」

 遊佐は、すまなそうに言った。

 「あ、いえ。遊佐さんは、悪くないですよ! むしろ感謝しています。あの時、刑事さんに、部屋で聴取をと言って下さったんですから……」
 「いや、あれは、潤を助けたのであって……」

 堀は、わかっていると頷く。

 「でも、僕も助かったんです。二人とも本当にありがとうございます」

 堀はまた、深々と頭を下げた。

 「もう、やめてよ。照れくさいじゃない。でも、堀さんだけでも助かってよかったわ」

 ソファーに座り直した堀は、真剣な顔でミキに話しかける。

 「若狭さん、楠さんも救われたはずです」
 「え?」

 ミキは驚いて、堀の顔をジッと見る。

 「昨日の夕食時に言ってましたよね? 楠さんに頼まれたって。伊藤さんの殺害時の話を聞いて思ったんだけど、事故は自殺で処理されたって事は、楠さんは違う主張いていて、それを信じて探していたんですよね?」
 「そうね。楠さんが亡くなった後に犯人がわかったんだけどね。……遅いよね」

 ミキは、床に目線を落とし、そう答えた。

 「さっき遊佐さんと二人で話していた時に、嘘つきと思われてるかもって言っていましたが、僕は違うと思います。彼女は、自分の話を信じて、犯人を捜してくれた若狭さんに感謝しているはずです。犯人を捜し出せなかったとしても、信じてもらって救われたと! あなたに救われた僕だからわかるんです」

 その言葉にミキは堀を見ると、彼は力強く頷いた。

 「そんな発想はなかったわ。今の言葉で、私も救われた。ありがとう。堀さん」
 「よかったな。君の言動を理解してくれる人がいて……」
 「もう何よ。シリアスな場面なのに、茶々入れないでよ」

 ミキはジト目で、遊佐にそう返した。

 「いや、別に俺は、そんなつもりでは……」

 遊佐が反論しようとするが、そこに声が掛かる。

 「こちらにおりましたか。おはようございます」

 三人が振り向くと、オーナーの棟方がニッコリとほほ笑んでいた。
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