22 / 47
21話 暴かれた犯罪
しおりを挟む
伊藤は自分の部屋から、はくものを持って来ると、八田に手渡す。
「これか……」
受け取ったタイトスカート見て、八田は言った。
「し、仕方ないじゃない。もう一着はワンピースなのよ……」
八田は溜息を付くと、廊下に出てタオルを洗面台で濡らし、零れたジュースを拭き始める。
「お前は、乾拭きしろ。指紋つけるなよ!」
伊藤は頷くと、八田の後に乾拭きをする。
ジュースを拭き終えた八田は、深呼吸すると楠のズボンを脱がした。それを、無言で伊藤に手渡す。
そして、脇を持つとうつ伏せに寝かせた。それから、スカートをはかせると、後ろについているチャックを上げた。
「その乾いたタオルを寄こせ。で、お前はドアの前にいろ」
伊藤がタオルを手渡すと、八田は、後ろ向きでドアに向かって拭き始める。
「何をしているの?」
「テーブルの部分だけだと、何かこぼしたのかもと感づかれるかも知れないから、ドアまで拭く。そうすれば、足跡を消したって思うだろう?」
八田の回答に、伊藤はなるほどと頷く。
「ねえ、彼女はそのまま?」
「俺はもう、触りたくねぇ。戻したいなら自分でしろ」
伊藤は、ブンブンを首を横に振る。
ドアまでたどり着いた八田は、パチッと部屋の照明を消した。
「いいか。明日、朝食を食べ終わったらすぐに街に出て、それ処分しろよ」
「え? 今しないの?」
八田は、暗がりの中、深いため息をつく。
「お前、どうやって街に行くつもりだ? そこらへんに捨てたらすぐに見つかるだろうが!」
「あ、うん……」
伊藤は、弱弱しく返事をした。
楠が発見されれば、殺人だとすぐにわかる。
ここ一体を捜索する恐れがあった。また歩いて街まで行くにはここは遠すぎた。途中で歩いているのを誰かに見られるのもまずい。
「明日、俺が楠さんが朝食いらないと言っていたと誤魔化すから。いいな!」
伊藤がわかったと言うと、八田はそっとドアを開ける。だが、直ぐに閉めた。
「どうしたの?」
「っし」
八田は、もう一度開け、廊下を確認する。
「女?」
堀の部屋にロングヘアーの女が入っていくのが見えた。
「女って、誰かいたの?」
「気にするな。さっさと部屋に戻れ」
頷くと、伊藤は自分の部屋に戻った。
八田は、自分たちが立っていた場所を拭き終えると、ドアを閉めた。そして、一番の部屋に戻ったのである。――
○ ○
「まさか、小細工が全部見破られるとはな……」
伊藤が話し終えると、八田は力なくそう呟いた。
そして、二人は連行されて行った。
「あの、刑事さん……」
「はい?」
まだその場に残っていた伊東に、相内は話しかけた。
「もう、ここに泊まらなくてもいいですよね?」
「え? あ、はい。犯人は、その……逮捕されたので、構いませんが」
相内の質問に、伊東は答えづらそうに言った。
「よかった。あの部屋に泊まるのは、ちょっと辛くて。私、札幌のホテル探して移ります」
「わかりました。あの、えーと……気をしっかり持って下さいね」
相内は、静かに頷く。
「若狭さん、遊佐さん、ありがとうございました」
相内は、深々と二人に頭を下げた。
「いえ。警察だと黙っていて申し訳ありませんでした」
遊佐も軽く頭を下げる。
「何て言うか……。あんなやり方しか出来なくてごめんね」
ミキがそう言うと、相内は首を横に振る。
「まんまと騙されていた自分が恥ずかしいです。お二人が、泊まっていて救われました。では、私は支度がありますので……」
相内は、そう言うと自分の部屋に戻っていた。
「心身を安めに来たのに、疲れた……」
遊佐はボソッと言うと、思い出したように、ミキは伊東に声を掛ける。
「あ、そうだ。刑事さん!」
ミキに呼ばれ、伊東はビクッと体を震わした。
「なんでしょう……」
「そんな身構えなくても。無事解決ありがとうございます」
大げさに頭を下げると、伊東はボソッと漏らす。
「それは、嫌みですか……」
「本心よ!」
「解決したのは、あなた達でしょう!」
「そんな事ないわ。令状は、私じゃ取れないし。情報を流し……提供してくれたおかげだし……」
ミキがニッコリと言うと、伊東は慌ててミキの口をふさぐ。
「やめて下さいよ!」
「あ、ごめんごめん」
伊東は、大きなため息をついた。
「お願いですから、聴取で変な事言わないで下さいよ!」
「あれ? あなたがするんじゃないの?」
「俺と宮川さんです!」
「了解」
伊東は、不安げに遊佐を見た。
「まあ、なんとか誤魔化せるだろう……」
遊佐の言葉に伊東は、これからが一番大変だと、更に大きなため息をついたのだった。
「これか……」
受け取ったタイトスカート見て、八田は言った。
「し、仕方ないじゃない。もう一着はワンピースなのよ……」
八田は溜息を付くと、廊下に出てタオルを洗面台で濡らし、零れたジュースを拭き始める。
「お前は、乾拭きしろ。指紋つけるなよ!」
伊藤は頷くと、八田の後に乾拭きをする。
ジュースを拭き終えた八田は、深呼吸すると楠のズボンを脱がした。それを、無言で伊藤に手渡す。
そして、脇を持つとうつ伏せに寝かせた。それから、スカートをはかせると、後ろについているチャックを上げた。
「その乾いたタオルを寄こせ。で、お前はドアの前にいろ」
伊藤がタオルを手渡すと、八田は、後ろ向きでドアに向かって拭き始める。
「何をしているの?」
「テーブルの部分だけだと、何かこぼしたのかもと感づかれるかも知れないから、ドアまで拭く。そうすれば、足跡を消したって思うだろう?」
八田の回答に、伊藤はなるほどと頷く。
「ねえ、彼女はそのまま?」
「俺はもう、触りたくねぇ。戻したいなら自分でしろ」
伊藤は、ブンブンを首を横に振る。
ドアまでたどり着いた八田は、パチッと部屋の照明を消した。
「いいか。明日、朝食を食べ終わったらすぐに街に出て、それ処分しろよ」
「え? 今しないの?」
八田は、暗がりの中、深いため息をつく。
「お前、どうやって街に行くつもりだ? そこらへんに捨てたらすぐに見つかるだろうが!」
「あ、うん……」
伊藤は、弱弱しく返事をした。
楠が発見されれば、殺人だとすぐにわかる。
ここ一体を捜索する恐れがあった。また歩いて街まで行くにはここは遠すぎた。途中で歩いているのを誰かに見られるのもまずい。
「明日、俺が楠さんが朝食いらないと言っていたと誤魔化すから。いいな!」
伊藤がわかったと言うと、八田はそっとドアを開ける。だが、直ぐに閉めた。
「どうしたの?」
「っし」
八田は、もう一度開け、廊下を確認する。
「女?」
堀の部屋にロングヘアーの女が入っていくのが見えた。
「女って、誰かいたの?」
「気にするな。さっさと部屋に戻れ」
頷くと、伊藤は自分の部屋に戻った。
八田は、自分たちが立っていた場所を拭き終えると、ドアを閉めた。そして、一番の部屋に戻ったのである。――
○ ○
「まさか、小細工が全部見破られるとはな……」
伊藤が話し終えると、八田は力なくそう呟いた。
そして、二人は連行されて行った。
「あの、刑事さん……」
「はい?」
まだその場に残っていた伊東に、相内は話しかけた。
「もう、ここに泊まらなくてもいいですよね?」
「え? あ、はい。犯人は、その……逮捕されたので、構いませんが」
相内の質問に、伊東は答えづらそうに言った。
「よかった。あの部屋に泊まるのは、ちょっと辛くて。私、札幌のホテル探して移ります」
「わかりました。あの、えーと……気をしっかり持って下さいね」
相内は、静かに頷く。
「若狭さん、遊佐さん、ありがとうございました」
相内は、深々と二人に頭を下げた。
「いえ。警察だと黙っていて申し訳ありませんでした」
遊佐も軽く頭を下げる。
「何て言うか……。あんなやり方しか出来なくてごめんね」
ミキがそう言うと、相内は首を横に振る。
「まんまと騙されていた自分が恥ずかしいです。お二人が、泊まっていて救われました。では、私は支度がありますので……」
相内は、そう言うと自分の部屋に戻っていた。
「心身を安めに来たのに、疲れた……」
遊佐はボソッと言うと、思い出したように、ミキは伊東に声を掛ける。
「あ、そうだ。刑事さん!」
ミキに呼ばれ、伊東はビクッと体を震わした。
「なんでしょう……」
「そんな身構えなくても。無事解決ありがとうございます」
大げさに頭を下げると、伊東はボソッと漏らす。
「それは、嫌みですか……」
「本心よ!」
「解決したのは、あなた達でしょう!」
「そんな事ないわ。令状は、私じゃ取れないし。情報を流し……提供してくれたおかげだし……」
ミキがニッコリと言うと、伊東は慌ててミキの口をふさぐ。
「やめて下さいよ!」
「あ、ごめんごめん」
伊東は、大きなため息をついた。
「お願いですから、聴取で変な事言わないで下さいよ!」
「あれ? あなたがするんじゃないの?」
「俺と宮川さんです!」
「了解」
伊東は、不安げに遊佐を見た。
「まあ、なんとか誤魔化せるだろう……」
遊佐の言葉に伊東は、これからが一番大変だと、更に大きなため息をついたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる