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24話 相棒はカメラマン
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スマホからピピピと少し高めの音が鳴ると、ミキはふとんから手を伸ばしベルを止めた。
周りを見渡してため息をつく。
「やっぱり昨日は、小樽観光せずに帰ってくるべきだったかな。引っ越し荷物が到着する日は、無謀だったか……」
ミキは、東京から札幌の支店に転勤になり、引っ越しの間の期間を利用し小樽観光を計画した。だが思わぬ事件にあった為、予定を変更して引っ越し荷物が到着する日に観光。疲れ切り、荷解きをせずに寝床だけ確保して寝たのである。
「そういえば、ここ光通ってなかったんだっけ……。会社行くか……」
ネットをする為の光回線の工事は金曜日の夕方で、今日は月曜日なのでノートパソコンがあってもネットは使えない。
のそのそと起きると身支度をし、ミキは家を出た。
○ ○
ミキは、会社に着くとそっと中を覗き込んだ。
まだ七時前だが人がいた。
一番奥にあるデスクに年配の男性が座っている。そして、その前に、縦にふたつ並んだデスクが向かい合わせに設置してあり、それが四セットあった。その一番右奥に男性も一人座っている。
「年配の男は、支店長よね。早いな……。まあ、早く来て怒られる事はないか」
ぼそっと呟くと、ミキはオフィスの中に入って行く。
「おはようございます」
ミキは、軽く礼をして、支店長だと思わる人物の前に立った。
「転勤してきた、若狭です」
「早いな……。おはよう。私は、見谷だ」
少し驚いた顔をを上げ、見谷はミキに返事を返した。
「おい、浅井!」
「あ、はい!」
見谷は、右端に座っている男性を呼んだ。
その人物は、呼ばれて初めてミキに気づき、慌て二人の元へ駆け寄った。
「彼は浅井だ。君はこの彼と組んでくれ。席は隣だ。以上。俺は、朝食を食べに出る」
それだけ言うと見谷は立ち上がった。
「宜しくお願いします!」
浅井は、嬉しそうにミキに挨拶をした。
「あ、ちょっと待って下さい! 私は、何をすれば……。あ、えーと、浅井さんが今何か仕事持っているのでしょうか?」
ミキが慌てて質問をすると、ドアに向かっていた見谷は振り向き言う。
「浅井は、カメラマンだ。今月、君に頼む仕事は今のところない。まあ、適当に……。あ、そうだ、振り込め詐欺の取材なんてどうだ?」
そう言い残し、オフィスを出て行った。
「……。振り込め詐欺って……」
ミキは視線を感じ、横を振り向いた。そこには、浅井がジッとミキを見つめて立っていた。
「よ、宜しくね」
「はい!」
ミキが声を掛けると、浅井は嬉しそうに返事を返した。
二人は席に移動し座る。
「さてと……」
ミキは座ると同時に、コンビニで買ってきたおにぎりが入ったレジ袋をデスクの上に置いた。
「朝ごはんですか?」
「そうよ。あなたは食べたの?」
浅井の質問に頷いて答えた。
「僕も買ってきてました。パンですけど」
そう言うと浅井は、床に置いてあったリュックからパンを取り出す。
「あなたも支店長も早いのね」
早速おにぎりを頬張り、ミキは言った。
「僕、早番だったので、六時半出勤です。支店長は、いつも一旦六時に来ているみたいです」
ふーんとミキは相槌を打つと、思い出したように口を開く。
「そう言えば、ちゃんとした自己紹介がまだだったわね。私は、若狭ミキ」
「あ、はい。僕は、浅井真実と言います。真実と書いてシンジです。いつも、マコトって読まれちゃいますけど……」
「マコトか……」
ふと、ミキは遊佐の事を思い出した。
「まあ、結婚式までは会う事もないか……」
「何か言いました?」
ミキの呟きを聞き取り、浅井が聞いて来た。ミキは別にと首を振る。
「そう言えば、かかか……噛んだ……」
「ミキでいいわよ」
クスクスと笑いながらミキはそう言った。
照れ笑いしながら、浅井は言い直す。
「ミキさん、今日早かったですね」
「家に光が引かさってなくてさ。パソコン使えないから会社に来た」
そう言いながら、鞄からノートパソコンを取り出し、デスクの上に置いた。
「そうなんですか。不便ですね」
「浅井さんって普段どうしてたんですか? 誰とも組んでなかったなら、声掛かるまでの間」
ミキは、パソコンを立ち上げながら聞いた。
「この頃はずっと主に電話番です……。だから、ミキさんと組めて僕、すごく嬉しいんです!」
と、浅井はミキに笑顔を向けた。
――それって、いらない者同士をくっつけたって事だよね……。
浅井はカメラマンだが電話番をしているという事は、使えないと判断されているって事だ。
「喜んで貰えてよかったわ。でも、カメラの出番はないかも……」
「え? なんで? 振り込め詐欺は?」
「あれは、建前で言っただけでしょ? 私に仕事をさせる気なんてないわよ」
「え? どうして?」
驚いた顔をする浅井を見て、ミキも驚く。
「あなた、私がここに来た理由知らないの?」
「転勤じゃないの?」
他に何があるという顔で浅井は言った。
「後で知って、あーだこーだ言われるの嫌だから、今言っておくわ。私は、大きなミスを犯した事になってるの。誰かが私の名前で記事書いて、それが裏どりされてなくて問題になって。いわゆる左遷よ。北海道に行けって言ったらやめると思ったんでしょうね」
「それって……」
ミキは、浅井がどんな反応示すかとジッと見ていた。
「それって、ミキさん悪くないじゃないですか! って、言うかどうやったらそうなるんですか?」
浅井の返答は、本心からだと思ったミキは、頷き言う。
「私、思った事をすぐ口にするから、嫌われてたみたいね。嫌がらせにしては、ちょっとどうなのよ。と、思うところもあるけど。私じゃないと証明出来なかったら仕方がない。でも、絶対にスクープとって戻ってやるわ!」
「僕もお手伝いします! 写真しか撮れませんけど!」
浅井の意気込みは、ミキにも負けないものだった。
「ありがとう。じゃ、早速シニアサロンの検索お願いね」
「シニアサロン?」
「高齢者が集まる場所よ。一応、取材ぐらいはしないとね。私は、取材の材料探しをするわ」
初めは記事にもならないし適当にやろうと思ったが、浅井のやる気にきちんと取材をする事にしたのである。
それに電話番をするよりはマシだ。
「はい。わかりました。でも、カメラの手入れ終わってからでいいですか?」
「えぇ、いいわよ」
ミキが入って来ても気づかずにやっていた作業だった。
浅井は、一時間ほど丁寧に手入れをしていた。
そして、それが終わるとパソコンで言われた通り、シニアサロンを探し始める。
それと同時刻に数名が出勤してきた。
ミキは、立ち上がり一応挨拶をする。
「おはようございます。若狭です。今日から宜しくお願いします」
「あ、僕と組む事になりました!」
浅井も嬉しそうに付け加える。
だが二人を見るも、軽く礼をする程度で、皆席について仕事を始める。
――浅井さん以外は、ここに飛ばされた理由を知っているみたいね。
ミキは、極力係わりたくないという態度に、そう判断をした。
○ ○
十時を過ぎてから二人で片っ端から、サロンに取材依頼の電話をし、やっと一件OKが取れた。
「ありがとうございます! では、明日、宜しくお願いします。失礼します」
「取材できる所、見つかったんですか?」
ミキが、電話を切ると、そう浅井は話しかけてきた。
「えぇ。手稲区にあるサッポロンってところよ」
「久しぶりにカメラが活躍できる」
ミキの返事に浅井は嬉しそうに言った。
「その前に、資料作りよ!」
「資料作り?」
「そうよ。リクリエーション枠だからそれも兼ねてという条件つきなのよ」
「わかりました!」
浅井は、ミキの言葉に頷きそう答えると、ジッとミキを見つめる。
「な、何?」
「何をしたらいいですか?」
指示待ちだったらしい。
「えっと、じゃ、最近あった詐欺事件調べてもらってもいい?」
「はい!」
ミキに元気よく返事を返し、浅井は作業を始めた。
――なるほど、自分からは動かないタイプね。
二人は、取材は明日なので急いで資料作りを進めた。
浅井は、指示すればきちんとこなしたので、滞りなく作業は進んだ。
周りを見渡してため息をつく。
「やっぱり昨日は、小樽観光せずに帰ってくるべきだったかな。引っ越し荷物が到着する日は、無謀だったか……」
ミキは、東京から札幌の支店に転勤になり、引っ越しの間の期間を利用し小樽観光を計画した。だが思わぬ事件にあった為、予定を変更して引っ越し荷物が到着する日に観光。疲れ切り、荷解きをせずに寝床だけ確保して寝たのである。
「そういえば、ここ光通ってなかったんだっけ……。会社行くか……」
ネットをする為の光回線の工事は金曜日の夕方で、今日は月曜日なのでノートパソコンがあってもネットは使えない。
のそのそと起きると身支度をし、ミキは家を出た。
○ ○
ミキは、会社に着くとそっと中を覗き込んだ。
まだ七時前だが人がいた。
一番奥にあるデスクに年配の男性が座っている。そして、その前に、縦にふたつ並んだデスクが向かい合わせに設置してあり、それが四セットあった。その一番右奥に男性も一人座っている。
「年配の男は、支店長よね。早いな……。まあ、早く来て怒られる事はないか」
ぼそっと呟くと、ミキはオフィスの中に入って行く。
「おはようございます」
ミキは、軽く礼をして、支店長だと思わる人物の前に立った。
「転勤してきた、若狭です」
「早いな……。おはよう。私は、見谷だ」
少し驚いた顔をを上げ、見谷はミキに返事を返した。
「おい、浅井!」
「あ、はい!」
見谷は、右端に座っている男性を呼んだ。
その人物は、呼ばれて初めてミキに気づき、慌て二人の元へ駆け寄った。
「彼は浅井だ。君はこの彼と組んでくれ。席は隣だ。以上。俺は、朝食を食べに出る」
それだけ言うと見谷は立ち上がった。
「宜しくお願いします!」
浅井は、嬉しそうにミキに挨拶をした。
「あ、ちょっと待って下さい! 私は、何をすれば……。あ、えーと、浅井さんが今何か仕事持っているのでしょうか?」
ミキが慌てて質問をすると、ドアに向かっていた見谷は振り向き言う。
「浅井は、カメラマンだ。今月、君に頼む仕事は今のところない。まあ、適当に……。あ、そうだ、振り込め詐欺の取材なんてどうだ?」
そう言い残し、オフィスを出て行った。
「……。振り込め詐欺って……」
ミキは視線を感じ、横を振り向いた。そこには、浅井がジッとミキを見つめて立っていた。
「よ、宜しくね」
「はい!」
ミキが声を掛けると、浅井は嬉しそうに返事を返した。
二人は席に移動し座る。
「さてと……」
ミキは座ると同時に、コンビニで買ってきたおにぎりが入ったレジ袋をデスクの上に置いた。
「朝ごはんですか?」
「そうよ。あなたは食べたの?」
浅井の質問に頷いて答えた。
「僕も買ってきてました。パンですけど」
そう言うと浅井は、床に置いてあったリュックからパンを取り出す。
「あなたも支店長も早いのね」
早速おにぎりを頬張り、ミキは言った。
「僕、早番だったので、六時半出勤です。支店長は、いつも一旦六時に来ているみたいです」
ふーんとミキは相槌を打つと、思い出したように口を開く。
「そう言えば、ちゃんとした自己紹介がまだだったわね。私は、若狭ミキ」
「あ、はい。僕は、浅井真実と言います。真実と書いてシンジです。いつも、マコトって読まれちゃいますけど……」
「マコトか……」
ふと、ミキは遊佐の事を思い出した。
「まあ、結婚式までは会う事もないか……」
「何か言いました?」
ミキの呟きを聞き取り、浅井が聞いて来た。ミキは別にと首を振る。
「そう言えば、かかか……噛んだ……」
「ミキでいいわよ」
クスクスと笑いながらミキはそう言った。
照れ笑いしながら、浅井は言い直す。
「ミキさん、今日早かったですね」
「家に光が引かさってなくてさ。パソコン使えないから会社に来た」
そう言いながら、鞄からノートパソコンを取り出し、デスクの上に置いた。
「そうなんですか。不便ですね」
「浅井さんって普段どうしてたんですか? 誰とも組んでなかったなら、声掛かるまでの間」
ミキは、パソコンを立ち上げながら聞いた。
「この頃はずっと主に電話番です……。だから、ミキさんと組めて僕、すごく嬉しいんです!」
と、浅井はミキに笑顔を向けた。
――それって、いらない者同士をくっつけたって事だよね……。
浅井はカメラマンだが電話番をしているという事は、使えないと判断されているって事だ。
「喜んで貰えてよかったわ。でも、カメラの出番はないかも……」
「え? なんで? 振り込め詐欺は?」
「あれは、建前で言っただけでしょ? 私に仕事をさせる気なんてないわよ」
「え? どうして?」
驚いた顔をする浅井を見て、ミキも驚く。
「あなた、私がここに来た理由知らないの?」
「転勤じゃないの?」
他に何があるという顔で浅井は言った。
「後で知って、あーだこーだ言われるの嫌だから、今言っておくわ。私は、大きなミスを犯した事になってるの。誰かが私の名前で記事書いて、それが裏どりされてなくて問題になって。いわゆる左遷よ。北海道に行けって言ったらやめると思ったんでしょうね」
「それって……」
ミキは、浅井がどんな反応示すかとジッと見ていた。
「それって、ミキさん悪くないじゃないですか! って、言うかどうやったらそうなるんですか?」
浅井の返答は、本心からだと思ったミキは、頷き言う。
「私、思った事をすぐ口にするから、嫌われてたみたいね。嫌がらせにしては、ちょっとどうなのよ。と、思うところもあるけど。私じゃないと証明出来なかったら仕方がない。でも、絶対にスクープとって戻ってやるわ!」
「僕もお手伝いします! 写真しか撮れませんけど!」
浅井の意気込みは、ミキにも負けないものだった。
「ありがとう。じゃ、早速シニアサロンの検索お願いね」
「シニアサロン?」
「高齢者が集まる場所よ。一応、取材ぐらいはしないとね。私は、取材の材料探しをするわ」
初めは記事にもならないし適当にやろうと思ったが、浅井のやる気にきちんと取材をする事にしたのである。
それに電話番をするよりはマシだ。
「はい。わかりました。でも、カメラの手入れ終わってからでいいですか?」
「えぇ、いいわよ」
ミキが入って来ても気づかずにやっていた作業だった。
浅井は、一時間ほど丁寧に手入れをしていた。
そして、それが終わるとパソコンで言われた通り、シニアサロンを探し始める。
それと同時刻に数名が出勤してきた。
ミキは、立ち上がり一応挨拶をする。
「おはようございます。若狭です。今日から宜しくお願いします」
「あ、僕と組む事になりました!」
浅井も嬉しそうに付け加える。
だが二人を見るも、軽く礼をする程度で、皆席について仕事を始める。
――浅井さん以外は、ここに飛ばされた理由を知っているみたいね。
ミキは、極力係わりたくないという態度に、そう判断をした。
○ ○
十時を過ぎてから二人で片っ端から、サロンに取材依頼の電話をし、やっと一件OKが取れた。
「ありがとうございます! では、明日、宜しくお願いします。失礼します」
「取材できる所、見つかったんですか?」
ミキが、電話を切ると、そう浅井は話しかけてきた。
「えぇ。手稲区にあるサッポロンってところよ」
「久しぶりにカメラが活躍できる」
ミキの返事に浅井は嬉しそうに言った。
「その前に、資料作りよ!」
「資料作り?」
「そうよ。リクリエーション枠だからそれも兼ねてという条件つきなのよ」
「わかりました!」
浅井は、ミキの言葉に頷きそう答えると、ジッとミキを見つめる。
「な、何?」
「何をしたらいいですか?」
指示待ちだったらしい。
「えっと、じゃ、最近あった詐欺事件調べてもらってもいい?」
「はい!」
ミキに元気よく返事を返し、浅井は作業を始めた。
――なるほど、自分からは動かないタイプね。
二人は、取材は明日なので急いで資料作りを進めた。
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これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
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