【完結】ミキって書かせて頂きます

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
33 / 47

32話 二人の間柄

しおりを挟む
 「若狭さん、もう帰ってもらって宜しいですよ。あ、署の前で遊佐さんが待っているそうです。ご協力ありがとうございました」

 四十分ほど経った頃、青野が顔を出しそう言ったのである。

 ――逃げられなかったか……。

 「失礼します」

 解放されたミキは、礼を言ってその場を後にして、署を出た。
 言われた通り出てすぐの所に遊佐は立っていた。ミキを発見すると、鋭い視線を向ける。
 ミキは、小走りで遊佐に近づいた。

 「えーと……ご迷惑掛けてごめんなさい」

 そう言ってミキは、頭を下げた。

 「全くだ。言っておくが、今回はじゅんに迷惑を掛けない為だからな! 二度はないぞ」
 「わかってるわよ。私だってごめんよ。でも、助かったわ。ありがとう」

 遊佐は、小さくため息をついた。
 この様子だと、伊東に来てもらう様にお願いしても却下されていたかもしれない。

 「で、被害者の佐藤さんとは、本当に取材で知り合った仲だけなんだな?」
 「そうよ。相談を聞きに行っただけ」

 ミキは、遊佐の質問に頷いて答えた。

 「ミキさーん!」

 呼ばれてミキは振り向くと、浅井がダッシュで向かってきた。
 その顔は、安堵を浮かべている。

 「よかった! 誤解は解けたんですね! 僕どうしようかと……。あ、刑事さん?」
 「たぶん?」
 「たぶんとは何だ?」
 「だって私、警察官だとしかあなたの事知らないもの」

 それを聞くと突然遊佐は、ポケットから何やら取り出すと、ペンで書き込む。

 「遊佐だ。もし、ミキが無謀な事をしそうになったら、携番を書いたので遠慮なく連絡をくれていい」

 遊佐は、ミキではなく浅井に渡した。
 どこかで見た光景だった。

 「何それ……」

 何故か可笑しくなってミキは笑いながら呟いた。

 「西警察署生活安全課……。あ、僕は、浅井です。カメラマンです」
 「何がおかしいんだ」

 まだ笑っているミキに、呆れ顔で遊佐は言った。

 「だって、この前の光景に似てるから……」
 「あ、そういえば! あの時は、ミキさんが貰ったんでしたね」
 「何の話だ?」
 「ミキさんナンパされたんですよ! それで名刺に携番書いて渡されたんです」
 「君をナンパする奴がいたとは……」

 ミキはムッとして遊佐を睨み付ける。

 「何よそれ! って言うかナンパじゃないわよ」
 「何故そう思う?」
 「浅井さんも一緒だったのよ? しかも睨み付けたのに近づいて来たの。何の目的かは知らないけど……」

 それを聞くと遊佐は、眉間にしわを寄せる。
 話を聞く限り、ナンパとは思えない話だ。

 「あまり変なのに係わるなよ」
 「ふん。大きなお世話よ」
 「でも、用心する事に越したことはないと思いますよ。昨日だって佐藤さんから電話来た時、その男かと思ったんだから……」

 ミキは、ため息をする。

 「あのね、こっちは教えてないんだから掛けてくる訳ないでしょ?」
 「おや、まだこんな所にいらっしゃったのですか?」

 突然声が掛かり振り返ると、青野と緑川がこちらに向かってきた。
 遊佐は、軽く会釈した。

 「あ、そうだ。浅井さん、取材行きましょう」
 「え? あ、そうでした! ミキさんが解放されてよかったです。僕一人で取材になったらどうしようかと……」
 「では、私達はこれで……」

 遊佐から逃げるチャンスだと、ミキも軽く会釈するとバイクに向かおうとした。

 「まて! どこに行くきだ!」

 だがそう言って、遊佐がミキの手首をがしっとつかんだ!

 「取材よ。サッポロンに行くの」
 「余計な事はするなと言っただろうが!」
 「これは最初から決まっていた取材よ! 刑事さんにも話してあるわ! 離してよ!」

 ミキは、そうよねと青野を見る。

 「そういえば、そう言ってましたが……」
 「わかった? は・な・し・て!」

 青野は、ミキと遊佐を交互に見た。
 仕方がなく遊佐は手を離すと唐突に言った。

 「俺も行く!」
 「お好きにどうぞ」

 遊佐にニッコリほほ笑んで、ミキはそう返した。

 「私達、バイクだから……」

 遊佐は、驚いた顔をするも、二人の服装を見て納得した。

 「あの、お二人もサッポロンに?」

 そして突然に遊佐は、青野達に問う。

 「そうですが……」
 「申し訳ありませんが、同行しても宜しいでしょうか?」

 青野が嫌そうな顔をするが頷く。
 遊佐は、相手が嫌そうにするも動じず、礼を言う。

 「ありがとうございます」
 「宜しいですが……。やんちゃな彼女だと苦労しますね」
 「え? いや、そういう間柄では……」

 遊佐は、小さくため息をついた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...