【完結】ミキって書かせて頂きます

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
42 / 47

41話 狙われた二人

しおりを挟む
 振り返るとそこには、八羽仁組の組長の息子が立っていた!
 二人は、息をのむ。
 が、よく見ると、うっと声を上げ男性が、組長の息子の足元に倒れ込んだ。そして、足元には、大きな石があった。
 さっきまではなかったものである。
 二人は状況が飲み込めず、唖然としていた。

 「なんだ、助けてやったのに礼の一つもないのか?」
 「えっと、ありがとうございます……」

 ミキはとりあえず、組長の息子にそう返した。

 ――もしかして、私達この人に助けられたの? 八羽仁組に?

 「どういう事?」
 「それは知らないが、ここで厄介ごと起こさないでもらいたいな。俺は、ここで静かな生活を楽しんでるんだ。ここで事が起こると全部、俺のせいにされるだろうが!」
 「さとるさん、すみません。取り逃がしました。車で逃げられて……」

 組長の息子――優は、声を掛けた男に振り向くと、下に倒れた男を見た。

 「これを向こうに連れていけ」

 命令を受けた男は頷くと、倒れた男の足を引っ張りずりずりと連れていく。

 「え! ちょっと!」

 ミキは、乱暴な扱いに驚いて声を上げた。

 「で? かくれんぼでもしていたのか? 声掛けようかと思ったらさっきの奴が石で殴りかかるところだったけど?」
 「それ、本当?」

 ミキは、青ざめた顔で聞いた。
 浅井もミキの横で青ざめている。

 どうやら佐藤に、またはめられたらしい。
 男は、ミキと浅井が隠れている背後からそっと近づき、そこに落ちている大きな石で殴りかかろうとしていたところを助けてもらったようだ。
 それがわかっても二人は、なんで? のままだった。

 指定された時間より相当早い。
 見張りがいなかったのは、公園を一周して確認した。
 一つだけわかったのは、呼び出した理由は、自分達を殺す為だったって事だった。
 しかも八羽仁組じゃない、どこかの組にだ。

 ――佐藤さんにまた騙された!

 「あぁ。まあ、詳しい話は部屋でどうだ」

 そう言って、優がミキに一歩近づいて来た。

 ミキは、大きなため息をついた。
 佐藤が八羽仁組に追われていると言ったから、会社に掛かって来た電話の相手は八羽仁組だと思ったのである。だが、違った。今更ながら、最初から裏で操っているどこかの組の仕業だと気が付いた。

 「いえ、助けて頂いてありがとうございました」

 ミキは、立ち上げると深々と礼をした。
 浅井も慌てて、礼をする。

 「ほんと、面白いやつだな。で、今日は遊佐はどうした?」
 「遊佐さん? 別に一緒じゃないけど……あ、ちょっと、ごめんなさい」

 ミキは、ポケットからスマホを出した。
 電話が来たのである。相手は、遊佐だった。

 「噂をすればですね……」

 と、浅井が言った。
 ディスプレイに表示された名前を見たのである。

 「どうぞ」

 優が、出ろと促した。
 なので、ミキは電話に出る。

 「もしもし……」
 『無時か!』
 「え!」

 ミキは、ドキッとする。
 何故、ここに来た事をと思い浅井を見た。彼は、首を横にブンブンと振った。自分は、連絡していないと。

 『何かあったのか! 今、どこにいる!』
 「えっと。公園。土曜日だし浅井さんと一緒に散歩中よ。慌てて何かあったの?」

 ミキは、咄嗟にそう言った。

 『浅井さんも一緒か。よかった。佐藤が姿を消した!』
 「え? 佐藤さんが? いつからいないの?」
 『昨日から戻ってないらしい』

 ――昨日って……。

 さっきの電話は、脅されて演技をしていた事になる。そして、相手は本気で自分達を殺そうとしていると、ミキはゾッとする。

 『そこに、浅井さんがいるんだな? 彼に代わってくれ』

 ミキは、チラッと浅井を見た。不安そうな顔をミキに向けていた。

 「浅井さん。遊佐さんが、電話代わってだって」

 ミキは、そう言って手渡そうとスマホを浅井に差し出すと、横からスッと手が伸びて来た。

 「あ! ちょっと!」

 取り上げたのは、優だった!
 ミキは慌てるが、お構いなしに電話に出る。

 「よう元気?」

 にんまりしながら、電話の向こう側にいる遊佐に話しかけた。
 そして楽し気に、遊佐と会話をしている!

 「俺も散歩。ここ、俺のマンションの横の公園な」
 「ちょっと勝手な事、話さないでよ!」

 ミキは、相手が八羽仁組だという事を忘れ言うが、向こうはニヤッと笑って話を進める。

 「俺は何もしてないぜ。あ、そうそう佐藤だっけ? いなくなったみたいだな。俺、居場所を知っているけど教えようか?」

 ミキは、その言葉に驚く。
 八羽仁組に捕まっているわけではないからだ。
 なぜ優が知っている? とジッと探るようにミキは優を見た。

 ――嘘か本当か……。

 「貸だからな……」

 そう呟くと、組長の息子はスマホを浅井に突き出した。浅井は、慌てて受け取り電話に出た。

 「遊佐さん、すみません!」

 ミキが浅井の様子を見ていると、それを遮るように優が間に立った。

 「やるよ」

 突然目の前に立ち渡されたので、ミキはつい受け取ってしまう。それは、名刺だった!

 「八羽仁優……名刺?」
 「それ、プライベート用の名刺だから、なくしたらどうなるかわかっているだろうな?」

 優は、耳元でそう囁いた。
 名前と電話番号、メールアドレスのみのシンプルなものだった。

 ――いや、いらないから!

 「優さん、あいつら……」

 優は部下から呼ばれ、そっちを振り向いた。

 「ミキさん! 行きましょう!」
 「え?」

 その隙をついてか突然、がしっと浅井に手首を捕まれ、引っ張られて走り出す。
 そしてバイクまでくると、浅井にヘルメットを渡される。

 「どうします?」
 「放っておけ。で、何だ?」
 「あいつら三倉橋組……」

 浅井は、バイクを発進させた。二人の会話は、そこで聞こえなくなった。

 ――三倉橋組って言った? それって確か二大勢力のもう一方じゃなかったっけ?

 ミキは、困惑していた。
 そんな大きな組織が、自分達を罠に掛け殺そうとする意味がわからなかった。
 名簿の件なら佐藤だけ殺せばいい。話は、佐藤からしか聞いていないし証拠もない。それに、警察だって察しがつく事ではないだろうかと。

 「着きましたよ」

 浅井が、バイクを止め言った。
 考え事をしている間についた様だ。

 「ここって……警察署?」
 「すまない、浅井さん」

 そう言って近づいて来たのは遊佐だった。
 横には、年配の刑事も一緒だった。

 「こちらは俺の上司。水上課長だ。君達に話が聞きたい」

 遊佐は、そう言って二人を促した。
 着いた先は、西警察署だった!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

処理中です...