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第16話
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「イマールさん。作戦が失敗したのは僕が戻って来たのも大きいですが、カードン様を敵に回した事が敗因です。きっと僕が戻って来なくても姉さんの無実を証明してくれたと思いますよ」
僕がそう言うと、イマールは僕をじーっと見つめた。
カードン様は、ジャンカーロ子爵が助けを求めてきた時に、ポールアード伯爵家の罠かもしれないとも思ったはずだ。だが彼は、それよりも姉さんの事を優先した。きっとお茶会が開かれる事は知っていたのだろう。
警察に手を回したのがその証拠。違っていたらレドソン侯爵家に傷がつく。
たかが男爵家の令嬢を助ける為にと。
イマールは、知らなかったのだろう。カードン様が姉さんにベタ惚だった事を。ただの政略結婚だと思っていたに違いない。まさか侯爵の令息が男爵の令嬢に惚れるなど思いもよらないはず。僕も聞いた時、本当か? と疑った。
カードン様にはじめて会ったのは、婚約を行う為に家族で顔合わせした時だ。驚く事に、カードン様は姉さんにゾッコンだった。僕らの前で隠す必要もないと思ったのか、姉さんをずっと見つめていた。姉さんは幸せ者だ。
まあイマールが知らないのも無理もない。なにせ、姉さんの話によれば、婚約話があってから初めてカードン様とお話したらしいから。つまりカードン様は、姉さんを遠くからただ見つめていただけだった。
「そうですか。あなた方の言う通りだんな様の指示により、この計画を実行致しました。申し訳ありませんでした。ですかお嬢様は、リサ様にちょっとした意地悪をすると伝えてあるだけで、今回の計画は知りません」
「わかりました。ですか、彼女が開いたお茶会です。エリザ嬢にも調書は行う事になるでしょう。では、警察署へ行きましょうか」
「はい」
怪しいほど素直にイマールは従った。
姉さんはすぐに、レドソン侯爵家が経営する病院へ搬送され僕も安心して警察署へ。
僕も一通り取り調べを受け、書類にサインをして解放される頃には日が傾き、慌ててシーダーさんと冒険者ギルドへ戻った。
最後の証人となるフリードを捕らえる為だ。
彼は、ポールアード伯爵家の指示通り夕方に冒険者ギルドへと戻って来て、僕への誹謗中傷を行った。本当に殴ってやろうかと思うほどに、言いたい放題だ。
僕が現れると、予想通り彼は狼狽えた。
「ひ、一芝居打ったと言うのか!」
「そうよ。フリードわかっているよね? これは彼を嵌めただけでとどまらない。この冒険者ギルドへの裏切りになる。本当に爆弾を使って閉じ込めたなんて……」
「本当にひどい話だな」
冒険者の一人がそういうと、フリードが僕を睨みつけてきた。
「お前が悪いんだろう! 僕らは命を掛けて冒険者になったんだ。それなのに貴族のいざこざをここに持ち込んで来た!」
「自分のやった事を棚に上げるなよ! その貴族から金を貰ったんだろう? 爆弾だって指示だろう。そのまま行った。なんの為だ? 僕を嵌める為? いや違うよな。お金と貴族に対する腹いせの為だろう! きっと殺すなと言われていたはずだ。あまりにも大ごとになったら厄介だから。でも君は、僕を襲った! 殺す気はなかっただろうが、もし大怪我して放置されたらどうなっていたと思うんだ!」
「し、知った事か!」
バシッ。
シーダーさんが、フリードの頬を叩いた。
「いざこざを持ち込んだのは、フリード、お前だろう。逆恨みもいいところだ。彼の監視は、私からの依頼だ。それなのにお前が嫌う貴族の依頼を優先した。違うか? 冒険者の誇りをもっていたのなら出来る事ではない!」
「………」
「償うつもりがあるなら私と一緒に、警察署へ行くぞ」
フリードは、うつむいたまま「わかった」と小さく呟く。
「あ、そうだ。フリードをどつくか?」
「どつくかって……いえ、結構です。ちゃんと証言してください」
なんか毒気を抜かれた。迫力あるよな。シーダーさんって……。
フリードは、無言なままシーダーさんと警察署へ向かって行った。
◇
姉さんは、二日後退院してきた。カードン様に付き添われて帰宅したのはいいが、僕らは何を見せられている?
二人は、きつく抱き合って離れないのだが……。
姉さんは、目を覚ましたのはいいが、目の前で起きた事にパニックになっていて、ずっとカードン様が付き添っていたらしい。
話を聞いた姉さんは、まあ見ての通りカードン様に惚れた。晴れて相思相愛になり、いちゃついているんだけど!!
「本当に今回は、助かりました」
父さんが、そう声を掛けるとやっと、二人は離れた。
「いえ、ルトルゼン……さんが、大活躍なさったおかげです。お力添えできてよかったです」
「……僕はほとんど何も。カードン様が手配してくださったおかげです。ありがとうございました」
「これで障害は、何もなくなったも同然です。盛大に結婚式を行いましょう!」
姉さんの手を取り、カードン様は目を輝かせて言う。
侯爵家と男爵家の結婚なので、あまり大きな結婚式はできないと、侯爵に言われていたようだけど、今回の事件が明るみになり、クレット家が大活躍したとなった。
ポールアード伯爵家没落は免れない。令嬢達は謹慎となり三家は、捜査に協力した事により情状酌量となり、事業縮小してなんとか没落は免れた。レドソン侯爵家が手を回したようだけど。
ジャンカーロ子爵が言いに行った事で、食い止める事が出来たので助け船を出したようだ。
まあ三人の令嬢は、これから姉さんの味方になってくれるだろう。
「これからは、協力し合って行きましょう!」
カードン様は、やる気満々だな。僕の一つだけ上だとは思えないほどしっかりしている。
「あはは。お手柔らかにお願いします。事業の方は全然なので、警護の方は任せて下さい。冒険者の仕事も合間に入れながらになりますが」
「冒険者?」
カードン様が、キョトンとする。
「今回、冒険者ギルドからマコトのオーブを借りるのに、冒険者になる事が必須で、なったからにはしばらくは冒険者として仕事をしなくてはいけなくて……」
「まあそうですの?」
母さんが驚きの声を上げた。あれ? 父さんは何も話してないの? てっきり話したと思っていたよ。
見れば父さんが青ざめている。
「まさか、父さん、そんな事になるとは思ってなかったの?」
「いや、気が動転していたからな。言われればそうだ。す、すまない、ルトルゼン」
「……いや大丈夫。僕には強い味方がついているからね」
精霊のミラクルだ。あれから全然姿を見ないけど。ちゃんと僕の中にいるよね?
「あぁ、任せて! 私たちが力を合わせればできない事はない」
カードン様が、にっこり微笑んで言った。
うん。カードン様も頼りにしています。
「さあ、ルトルゼンの卒業とリサの退院祝いを致しましょう」
母さんがそう言うと、皆席に着き、食事が運ばれてくる。
「カードン様のお口に合うかどうかわかりませんが、召し上がって下さい」
「いえ、とてもおいしそうです」
父さんの言葉ににっこりとしてカードン様は返す。
はあ。カードン様が家に来たら、この甘い雰囲気の中毎回食事をしないといけないのか。父さんと母さんもたぶん、他の家庭よりラブラブ度が高いだろう。向こうは向こうで和気あいあいとした雰囲気だ。
……僕だけ相棒がいないんだけどぉ!!
END
僕がそう言うと、イマールは僕をじーっと見つめた。
カードン様は、ジャンカーロ子爵が助けを求めてきた時に、ポールアード伯爵家の罠かもしれないとも思ったはずだ。だが彼は、それよりも姉さんの事を優先した。きっとお茶会が開かれる事は知っていたのだろう。
警察に手を回したのがその証拠。違っていたらレドソン侯爵家に傷がつく。
たかが男爵家の令嬢を助ける為にと。
イマールは、知らなかったのだろう。カードン様が姉さんにベタ惚だった事を。ただの政略結婚だと思っていたに違いない。まさか侯爵の令息が男爵の令嬢に惚れるなど思いもよらないはず。僕も聞いた時、本当か? と疑った。
カードン様にはじめて会ったのは、婚約を行う為に家族で顔合わせした時だ。驚く事に、カードン様は姉さんにゾッコンだった。僕らの前で隠す必要もないと思ったのか、姉さんをずっと見つめていた。姉さんは幸せ者だ。
まあイマールが知らないのも無理もない。なにせ、姉さんの話によれば、婚約話があってから初めてカードン様とお話したらしいから。つまりカードン様は、姉さんを遠くからただ見つめていただけだった。
「そうですか。あなた方の言う通りだんな様の指示により、この計画を実行致しました。申し訳ありませんでした。ですかお嬢様は、リサ様にちょっとした意地悪をすると伝えてあるだけで、今回の計画は知りません」
「わかりました。ですか、彼女が開いたお茶会です。エリザ嬢にも調書は行う事になるでしょう。では、警察署へ行きましょうか」
「はい」
怪しいほど素直にイマールは従った。
姉さんはすぐに、レドソン侯爵家が経営する病院へ搬送され僕も安心して警察署へ。
僕も一通り取り調べを受け、書類にサインをして解放される頃には日が傾き、慌ててシーダーさんと冒険者ギルドへ戻った。
最後の証人となるフリードを捕らえる為だ。
彼は、ポールアード伯爵家の指示通り夕方に冒険者ギルドへと戻って来て、僕への誹謗中傷を行った。本当に殴ってやろうかと思うほどに、言いたい放題だ。
僕が現れると、予想通り彼は狼狽えた。
「ひ、一芝居打ったと言うのか!」
「そうよ。フリードわかっているよね? これは彼を嵌めただけでとどまらない。この冒険者ギルドへの裏切りになる。本当に爆弾を使って閉じ込めたなんて……」
「本当にひどい話だな」
冒険者の一人がそういうと、フリードが僕を睨みつけてきた。
「お前が悪いんだろう! 僕らは命を掛けて冒険者になったんだ。それなのに貴族のいざこざをここに持ち込んで来た!」
「自分のやった事を棚に上げるなよ! その貴族から金を貰ったんだろう? 爆弾だって指示だろう。そのまま行った。なんの為だ? 僕を嵌める為? いや違うよな。お金と貴族に対する腹いせの為だろう! きっと殺すなと言われていたはずだ。あまりにも大ごとになったら厄介だから。でも君は、僕を襲った! 殺す気はなかっただろうが、もし大怪我して放置されたらどうなっていたと思うんだ!」
「し、知った事か!」
バシッ。
シーダーさんが、フリードの頬を叩いた。
「いざこざを持ち込んだのは、フリード、お前だろう。逆恨みもいいところだ。彼の監視は、私からの依頼だ。それなのにお前が嫌う貴族の依頼を優先した。違うか? 冒険者の誇りをもっていたのなら出来る事ではない!」
「………」
「償うつもりがあるなら私と一緒に、警察署へ行くぞ」
フリードは、うつむいたまま「わかった」と小さく呟く。
「あ、そうだ。フリードをどつくか?」
「どつくかって……いえ、結構です。ちゃんと証言してください」
なんか毒気を抜かれた。迫力あるよな。シーダーさんって……。
フリードは、無言なままシーダーさんと警察署へ向かって行った。
◇
姉さんは、二日後退院してきた。カードン様に付き添われて帰宅したのはいいが、僕らは何を見せられている?
二人は、きつく抱き合って離れないのだが……。
姉さんは、目を覚ましたのはいいが、目の前で起きた事にパニックになっていて、ずっとカードン様が付き添っていたらしい。
話を聞いた姉さんは、まあ見ての通りカードン様に惚れた。晴れて相思相愛になり、いちゃついているんだけど!!
「本当に今回は、助かりました」
父さんが、そう声を掛けるとやっと、二人は離れた。
「いえ、ルトルゼン……さんが、大活躍なさったおかげです。お力添えできてよかったです」
「……僕はほとんど何も。カードン様が手配してくださったおかげです。ありがとうございました」
「これで障害は、何もなくなったも同然です。盛大に結婚式を行いましょう!」
姉さんの手を取り、カードン様は目を輝かせて言う。
侯爵家と男爵家の結婚なので、あまり大きな結婚式はできないと、侯爵に言われていたようだけど、今回の事件が明るみになり、クレット家が大活躍したとなった。
ポールアード伯爵家没落は免れない。令嬢達は謹慎となり三家は、捜査に協力した事により情状酌量となり、事業縮小してなんとか没落は免れた。レドソン侯爵家が手を回したようだけど。
ジャンカーロ子爵が言いに行った事で、食い止める事が出来たので助け船を出したようだ。
まあ三人の令嬢は、これから姉さんの味方になってくれるだろう。
「これからは、協力し合って行きましょう!」
カードン様は、やる気満々だな。僕の一つだけ上だとは思えないほどしっかりしている。
「あはは。お手柔らかにお願いします。事業の方は全然なので、警護の方は任せて下さい。冒険者の仕事も合間に入れながらになりますが」
「冒険者?」
カードン様が、キョトンとする。
「今回、冒険者ギルドからマコトのオーブを借りるのに、冒険者になる事が必須で、なったからにはしばらくは冒険者として仕事をしなくてはいけなくて……」
「まあそうですの?」
母さんが驚きの声を上げた。あれ? 父さんは何も話してないの? てっきり話したと思っていたよ。
見れば父さんが青ざめている。
「まさか、父さん、そんな事になるとは思ってなかったの?」
「いや、気が動転していたからな。言われればそうだ。す、すまない、ルトルゼン」
「……いや大丈夫。僕には強い味方がついているからね」
精霊のミラクルだ。あれから全然姿を見ないけど。ちゃんと僕の中にいるよね?
「あぁ、任せて! 私たちが力を合わせればできない事はない」
カードン様が、にっこり微笑んで言った。
うん。カードン様も頼りにしています。
「さあ、ルトルゼンの卒業とリサの退院祝いを致しましょう」
母さんがそう言うと、皆席に着き、食事が運ばれてくる。
「カードン様のお口に合うかどうかわかりませんが、召し上がって下さい」
「いえ、とてもおいしそうです」
父さんの言葉ににっこりとしてカードン様は返す。
はあ。カードン様が家に来たら、この甘い雰囲気の中毎回食事をしないといけないのか。父さんと母さんもたぶん、他の家庭よりラブラブ度が高いだろう。向こうは向こうで和気あいあいとした雰囲気だ。
……僕だけ相棒がいないんだけどぉ!!
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