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第69話 故郷を目指して

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 「ふんふんふふん♪」

 チェトの毛がフワフワになった。

 「よしできた!」

 『やはりこれがないとな』

 『そうね』

 チェトとサザナミも満足そうでよかった。
 チェトがぴょんと僕の膝の上に乗っかる。

 『で、何ともなかったのか?』

 「うん。マトルドは何ともないって!」

 『いやマトルドではなく、おぬしだ』

 「え? 僕? 何ともないよ。でね、マトルドの角を取られちゃったんだ。痛くないのか?」

 『痛くはないようだな。まあ、薬になるようだからな』

 「そうなんだ。これで普通の馬に見えるからって、ダダルさんには言われたけど」

 何となくかわいそう。



 「おはよございます」

 「本当に大丈夫なんです」

 退院した次の日に冒険者商会に行くとジョアラさんもいた。何やらダダルさんともめている?

 「お、ロマドか。おはようさん」

 「お前な、馬を建物の中に入れるなよ」

 ユイジュさんから挨拶の前に抗議がきた。
 マトルドを外に置いておけないから小さいし建物の中に連れて来たんじゃないか。

 「そうだ! ロマド、彼女の護衛を頼めないか?」

 「え? ロマドさんですか!?」

 ダダルさんが言うと、ジョアラさんが驚いた。

 「どこか行くんですか?」

 「故郷へ帰るんだ」

 「仕来りで人間は連れて行けないのです! さっきからそう言っているではないですか。それに一人で大丈夫です」

 そう言っているジョアラさんにダダルさんが耳打ちした。そうすると、ジョアラさんが僕をジーと見つめる。

 「わかりました。ロマドさんとならいいです。マトルドも一緒ですよね?」

 「え?」

 何を言ったんだろう?

 『あやつめ。マトルドがユニコーンだと言ったな』

 『今度は何を企んでいるのかしらね』

 うん? ダダルさんはジョアラさんにマトルドがユニコーンだと言ったの? 僕には、ユニコーンだとばれないようにすれといいながら?
 でも僕も、人間なんだけどな。

 「ほれ、これ返すからいってこい」

 「あ! マジカルマップ! ありがとう!」

 ダダルさんからマジカルマップを返してもらった。よかった。奪い返してくれたんだ。

 「行くのはいいけど、マトルドにはジョアラさんは乗れないと思うけど?」

 僕以外の人が近づくと怒るからね。

 「彼女が乗る馬は手配する」

 とダダルさん。

 「あ、チェト達も連れて行っていい?」

 「えぇ。聖獣は大丈夫よ」

 「……ダダルさん。ロマドだけで大丈夫ですか?」

 ユイジュさんが、もの凄く心配そうな顔を訪ねている。
 酷いなぁ。マジカルマップもあるし迷子にならないけど!

 「仕方ないだろう。ロマドしか許可が下りないのだから。まあチェト達がいるから何とかなるだろう。ちゃんとロマドを帰してもらえよ」

 最後の台詞は、チェト達を見てダダルさんは言った。どういう意味だ!
 はぁっとユイジュさんが、大きなため息を漏らす。
 こうして、僕とジョアラさん、そしてチェト達で彼女の故郷へ向かう事になった。

 出発は午後からになり、一旦身支度の為に家に帰った僕はお母さんに仕事で家を空けると告げて、冒険者商会へと戻った。

 「なぜ自分で荷物を背負っているんだ?」

 僕を見た途端、ユイジュさんが聞いて来た。

 「背負うのスキルを持ってるから。マトルドに背負わせたら可哀想じゃないか」

 「お前な……。それ背負ってマトルドに乗ったら同じだろうが!」

 「あ、本当だ!」

 「あと、スキルの事は口にするな!」

 聞かれたから答えたのに……。

 「お待たせしました」

 ジョアラさんも準備が出来たみたい。彼女が乗る馬は、マトルドとは対照的に真っ黒い馬だ。大きさも普通なので、マトルドより大きい。

 「それじゃチェト。二人を頼んだぞ。今回は誰も後をつけないから頼むな」

 『まったく……』

 「もうダダルさん酷い。僕が彼女の護衛なのに!」

 「勿論頼りにしてるさ。ロマド、気を付けてな」

 「寄り道しないでいけよ」

 寄り道って……子供じゃないんだから!

 ダダルさんとユイジュさん、そしてセードさんに見送られて僕らは街を出てジョアラさんに故郷へと向かった。

 「今日は、真っ直ぐ行った所にあるパゼード街に一泊しましょう」

 「あ、はい」

 並んで走る僕にジョアラさんは言った。彼女は、皆の前では目的地を言わなかったんだ。って、街の名前を聞いても知らない場所なんだけどね。

 『大きな街だと、馬小屋にマトルドを預けられるな』

 「あ、そっか。そうだね」

 「聖獣はなんと言っているのですか?」

 「え? あ、そっか。マトルドを馬小屋に預けられるね。だって」

 「そうね。できるだけそうしましょう。大きな街に止まりましょう」

 「うん」

 僕達は、休憩を挟みつつパゼード街を目指した。
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