居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
3 / 58

第2話

しおりを挟む
 今年の入学者は、薬師科100名、経営家科40名の計140名。その中で、薬師科と経営家科両方受かったのは私一人。いや両方を受けたのは、私だけだった。
 本来は、経営家の資格を有する者が薬師を雇う。自分で営むとしても伴侶がどちらかの資格を持つ。我がグリンマトル伯爵家もそうだ。お母様が経営家の資格を持っていた。
 経営家科のみだと3年通う事になる。

 寮の部屋は、薬師と経営家で分かれており私は、薬師の寮で一人部屋だった。

 「いい? 王都に私の母親の兄上でプロンテヌ侯爵がいるから何かあったら頼るのよ。ちゃんとお願いをしておくから。月に一度は、手紙を頂戴ね。それと……」
 「お母様。大丈夫よ。お手紙も書くし、ちゃんとプロンテヌ侯爵にも月に一度、顔を見せるわ」

 私がそう言うと、安心したようにお母様は頷いた。

 「まさか、両方とも受かってしまうとは驚いたわ。確かに本は読んでいたけど。叔父様もあなたを大絶賛していたわ。跡取りでなければ、嫁に欲しかったって」
 「嫁!?」
 「もちろん、孫によ。それにしても、学園に通う頃まで会えないなんて寂しいわね」

 お母様は、シュンとしてしまう。
 いずれ薬師か経営家になる為に学校に通わせるつもりだったとしても、家から通える学校で王都ではなかったはず。
 貴族は、15歳から2年間、貴族としての規律を学ぶ為に貴族学園に通う。
 私は、王都に13歳までいる事になり14歳から実家で経営を実際に学びつつ、15歳から学園に通う事になる。
 留年と言う制度はあるけど、私には1年しか猶予はない。学校は、二重で通えないのよ。
 頑張らないとね!

 入学式は、次の日だった。
 制服に着替え、食堂に行くと注目される。
 薬師科も経営家科も令息が多いのだ。その中で最年少の令嬢。

 「はい。お名前は?」

 どこぞの令嬢が、私におぼんを渡してそう尋ねて来た。
 大体の生徒が、学園を卒業してからここに通う。もし受かっても留年して、途中で通えなくなれば意味がないからだ。
 彼女も今年17歳以上のご令嬢だろう。私より10歳も上だ。
 学園を卒業していれば、私の様な子供を苛めたりなどしない。

 「はい。初めまして。私は、レネット・グリンマトルと申します。お姉様、宜しくお願いします」

 ここは、幼さを利用しておこう。

 「私は、ミチル。宜しくね」

 こうして、私はお姉様達に優しくしてもらえるのだった。

 入学式は、薬師科と経営家科との合同で、薬師科と経営家科の教室の建物の真ん中にある講堂で行われる。
 眠くなるお偉いさんのお話を聞き、在校生の挨拶に新入生の挨拶を終え、先生の紹介が行われた後、各教室へと移動する。

 私は、薬師科1年1組。1クラス20名。先生は1名。
 自己紹介で、今年10歳の令息が3名と令嬢が1名いると判明。その他は、17歳以上の令嬢と令息。
 たぶん、学園に通う前の者達は、私達5名だけなんだと思う。

 入学式当日から授業はあり、これからの流れの説明後、早速事業がはじまった。
 最初は、薬草について。
 調合は、明日から行われるらしい。楽しみだわ。

 授業が終わり、夕食まで部屋で一人まったりと過ごす。
 そうそう日記を書かないとね。経営の本に書いてあったのよね。自分の事もそうだけど、天候や大きな出来事などを書いておくと、後々役に立つと。

 こうして、学校の生活は順調そうに見えた。けど……。

 「あなた、生意気なのよね」

 デーンと、私の前に立ちはだかる10歳の令嬢。その横に3名の令息達。
 一か月程経ったある日、鼻息荒く声を掛けられた。
 生意気と言われてもね。あなた達よりできるから生意気って事なんでしょうけど。

 私は、わざと首を傾げてみる。

 「いい? 私より下なのに私より出来るわけないでしょう! 私は、薬師の名家の令嬢なのよ!」
 「そうですか」

 一応、田舎だけど私もそうなのよね。

 「本当に生意気ね! わからせてやりなさい」
 「え?」

 彼女が私を指さし言うけど、取り巻きの3名はどうしたらいいんだという顔。
 そりゃそうよね。問題を起こせば退学だもの。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

辺境の侯爵令嬢、婚約破棄された夜に最強薬師スキルでざまぁします。

コテット
恋愛
侯爵令嬢リーナは、王子からの婚約破棄と義妹の策略により、社交界での地位も誇りも奪われた。 だが、彼女には誰も知らない“前世の記憶”がある。現代薬剤師として培った知識と、辺境で拾った“魔草”の力。 それらを駆使して、貴族社会の裏を暴き、裏切った者たちに“真実の薬”を処方する。 ざまぁの宴の先に待つのは、異国の王子との出会い、平穏な薬草庵の日々、そして新たな愛。 これは、捨てられた令嬢が世界を変える、痛快で甘くてスカッとする逆転恋愛譚。

虐げられてきた令嬢は、冷徹魔導師に抱きしめられ世界一幸せにされています

あんちょび
恋愛
 侯爵家で虐げられ、孤独に耐える令嬢 アリシア・フローレンス。 冷たい家族や侍女、無関心な王太子に囲まれ、心は常に凍りついていた。  そんな彼女を救ったのは、冷徹で誰も笑顔を見たことがない天才魔導師レオン・ヴァルト。  公衆の前でされた婚約破棄を覆し、「アリシアは俺の女だ」と宣言され、初めて味わう愛と安心に、アリシアの心は震える。   塔での生活は、魔法の訓練、贈り物やデートと彩られ、過去の孤独とは対照的な幸福に満ちていた。  さらにアリシアは、希少属性や秘められた古代魔法の力を覚醒させ、冷徹なレオンさえも驚かせる。  共に時間を過ごしていく中で、互いを思いやり日々育まれていく二人の絆。  過去に彼女を虐げた侯爵家や王太子、嫉妬深い妹は焦燥と嫉妬に駆られ、次々と策略を巡らせるが、 二人は互いに支え合い、外部の敵や魔導師組織の陰謀にも立ち向かいながら、愛と絆を深めていく。  孤独な少女は、ついに世界一幸福な令嬢となり、冷徹魔導師に抱きしめられ溺愛される日々を手に入れる――。

断罪するのは天才悪女である私です〜継母に全てを奪われたので、二度目の人生は悪逆令嬢として自由に生きます

紅城えりす☆VTuber
恋愛
*完結済み、ハッピーエンド 「今まで役に立ってくれてありがとう。もう貴方は要らないわ」  人生をかけて尽くしてきた優しい継母。  彼女の正体は『邪魔者は全て排除。常に自分が一番好かれていないと気が済まない』帝国史上、最も邪悪な女であった。  継母によって『魔女』に仕立てあげられ、処刑台へ連れて行かれることになったメアリー。  メアリーが居なくなれば、帝国の行く末はどうなってしまうのか……誰も知らずに。  牢の中で処刑の日を待つ彼女の前に、怪しげな男が現れる。 「俺が力を貸してやろうか?」  男は魔法を使って時間を巻き戻した。 「もう誰にも屈しないわ。私は悪逆令嬢になって、失った幸せを取り戻すの!」  家族を洗脳して手駒にする貴族。  罪なき人々を殺める魔道士。  そして、私を散々利用した挙句捨てたお義母様。  人々を苦しめる悪党は全て、どんな手を使ってでも悪逆令嬢である私が、断罪、断罪、断罪、断罪、断罪するのよ!  って、あれ?  友人からは頼りにされるし、お兄様は急に過保護。公爵様からも求婚されて……。  悪女ムーブしているのに、どうして回帰前より皆様に好かれているのかしら??? ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 〇約十一万文字になる予定です。 もし「続きが読みたい!」「スカッとした」「面白い!」と思って頂けたエピソードがありましたら、♥コメントで反応していただけると嬉しいです。 読者様から頂いた反応は、今後の執筆活動にて参考にさせていただきます。

姉の厄介さは叔母譲りでしたが、嘘のようにあっさりと私の人生からいなくなりました

珠宮さくら
恋愛
イヴォンヌ・ロカンクールは、自分宛てに届いたものを勝手に開けてしまう姉に悩まされていた。 それも、イヴォンヌの婚約者からの贈り物で、それを阻止しようとする使用人たちが悪戦苦闘しているのを心配して、諦めるしかなくなっていた。 それが日常となってしまい、イヴォンヌの心が疲弊していく一方となっていたところで、そこから目まぐるしく変化していくとは思いもしなかった。

死にかけ令嬢の逆転

ぽんぽこ狸
恋愛
 難しい顔をしたお医者様に今年も余命一年と宣告され、私はその言葉にも慣れてしまい何も思わずに、彼を見送る。  部屋に戻ってきた侍女には、昨年も、一昨年も余命一年と判断されて死にかけているのにどうしてまだ生きているのかと問われて返す言葉も見つからない。  しかしそれでも、私は必死に生きていて将来を誓っている婚約者のアレクシスもいるし、仕事もしている。  だからこそ生きられるだけ生きなければと気持ちを切り替えた。  けれどもそんな矢先、アレクシスから呼び出され、私の体を理由に婚約破棄を言い渡される。すでに新しい相手は決まっているらしく、それは美しく健康な王女リオノーラだった。  彼女に勝てる要素が一つもない私はそのまま追い出され、実家からも見捨てられ、どうしようもない状況に心が折れかけていると、見覚えのある男性が現れ「私を手助けしたい」と言ったのだった。  こちらの作品は第18回恋愛小説大賞にエントリーさせていただいております。よろしければ投票ボタンをぽちっと押していただけますと、大変うれしいです。

見るに堪えない顔の存在しない王女として、家族に疎まれ続けていたのに私の幸せを願ってくれる人のおかげで、私は安心して笑顔になれます

珠宮さくら
恋愛
ローザンネ国の島国で生まれたアンネリース・ランメルス。彼女には、双子の片割れがいた。何もかも与えてもらえている片割れと何も与えられることのないアンネリース。 そんなアンネリースを育ててくれた乳母とその娘のおかげでローザンネ国で生きることができた。そうでなければ、彼女はとっくに死んでいた。 そんな時に別の国の王太子の婚約者として留学することになったのだが、その条件は仮面を付けた者だった。 ローザンネ国で仮面を付けた者は、見るに堪えない顔をしている証だが、他所の国では真逆に捉えられていた。

婚約者と親友に裏切られた伯爵令嬢は侯爵令息に溺愛される

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のマーガレットは、最近婚約者の伯爵令息、ジェファーソンの様子がおかしい事を気にして、親友のマリンに日々相談していた。マリンはいつも自分に寄り添ってくれる大切な親友だと思っていたマーガレット。 でも… マリンとジェファーソンが密かに愛し合っている場面を目撃してしまう。親友と婚約者に裏切られ、マーガレットは酷くショックを受ける。 不貞を働く男とは結婚できない、婚約破棄を望むマーガレットだったが、2人の不貞の証拠を持っていなかったマーガレットの言う事を、誰も信じてくれない。 それどころか、彼らの嘘を信じた両親からは怒られ、クラスメイトからは無視され、次第に追い込まれていく。 そんな中、マリンの婚約者、ローインの誕生日パーティーが開かれることに。必ず参加する様にと言われたマーガレットは、重い足取りで会場に向かったのだが…

【完結】猫を被ってる妹に悪役令嬢を押し付けられたお陰で人生180度変わりました。

本田ゆき
恋愛
「お姉様、可愛い妹のお願いです。」 そう妹のユーリに乗せられ、私はまんまと悪役令嬢として世に名前を覚えられ、終いには屋敷を追放されてしまった。 しかし、自由の身になった私に怖いものなんて何もない! もともと好きでもない男と結婚なんてしたくなかったし堅苦しい屋敷も好きでなかった私にとってそれは幸運なことだった!? ※小説家になろうとカクヨムでも掲載しています。 3月20日 HOTランキング8位!? 何だか沢山の人に見て頂いたみたいでありがとうございます!! 感想あんまり返せてないですがちゃんと読んでます! ありがとうございます! 3月21日 HOTランキング5位人気ランキング4位…… イッタイ ナニガ オコッテンダ…… ありがとうございます!!

処理中です...