居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)

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第11話

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 「たまにはゆっくりすればいいのに。ガストンとのデートはどうなった?」

 と、唐突にお父様がいうから咽ちゃったじゃないの。

 「もうお父様ったら」
 「彼は忙しいのか?」
 「えーと……」
 「お手紙を出し合っていたのよね?」
 「え……」

 やっぱりそれが普通なのね。
 って、適当な事も言えないし。

 「えーと、実は手紙は苦手でまだ一度も書いた事はないの」
 「え……」
 「ガストンから来た事は? まあ見た事はないが」
 「な、ないです」

 ガストン様からの手紙を見かけた事はないけど、密かにと思っていたのね。実は、顔すら忘れそうな程です。ごめんなさい。

 「そ、そうか……。いや、お前は悪くない」
 「そうよね」

 って、なんで目配せしているの?
 触れちゃいけなかったかぁって感じ?

 「レネット。実はな」

 うん? お父様が急に真顔になった。何の話かしら。

 「レネットのレリーフを考案しておいたんだ」
 「はい!?」

 そういうと、数点を私の前に置いた。
 ここで言うレリーフとは、印鑑の様なもの。サインの後に押す。婚姻前の成人した者が持つ事が多い。
 絶対に必要な物ではないけど、資格を持っている者は、サインの偽装を防ぐ為に作る。
 家紋をアレンジした物が多く、私も学園を卒業したら作る事になっただろうけど。

 「えーと……」
 「突然だが、君はもう二つの資格を持つ成人だ。早くはない」

 この国では、貴族学園を卒業した貴族は、成人と見なされる。私はまだ卒業していないけど、何か資格を有していると卒業していなくても成人として扱われる。

 だとしても早くはないけど、性急すぎる気もするわね。
 私の意見を聞かずに、作ってあるのだもの。何かあったのかしら?

 グリンマトル家の家紋はマリーゴールドがモチーフになっている。だから私のレリーフもマリーゴールドが入っていた。
 レリーフは、丸ではなくて四角。
 私は、5つの中から1つ選んだ。

 「これにするわ。用意してくれてありがとう」
 「では明日、登録してくるといい」
 「え? 明日ですか?」

 二人は、真面目な顔で頷く。
 絶対に何かあるわね。でも、何となく聞けない。
 私は、わかったと頷いた。

 次の日、言われた通りレリーフの登録を済ませ屋敷に帰ると、驚く事にガストン様に出会った。

 「え? ガストン様? お久しぶりです」
 「レネット! あ……違うんだ」
 「え?」

 応接室から出て来たガストン様が、私を見た途端そう言った。
 何の話?

 「ルトルン令息、私達はこれから大事な話があります。ご用事が終わったならお帰り下さい」

 お母様が怖い。
 いつも笑顔のお父様も……。
 え? ガストン様は何をやらかしたの?

 「し、失礼します」

 礼をすると、ガストン様は慌ててこの場を去って行った。

 「一体何があったのですか?」

 そう尋ねると、私を応接室に入るように促す。

 「実はな。彼は浮気をしていたみたいなのだ」
 「え! 浮気ですか?」
 「俺は、ルトルン伯爵と連絡を取り合っていてな。彼が手紙のやり取りをしていると聞いた」

 だから私と手紙のやり取りをしているか確認したのね。
 そして、していないと知ってガストン様を問い詰めたと。

 「明日、ルトルン伯爵家に行って来る。すまない。彼は知り合いの紹介でな。領地持ちの息子だから大丈夫だろうと思っていたのだが」
 「焦って、ちゃんと調べもしないでそのまま話を進めるからでしょう」
 「え……」

 もうお父様ったら。

 「ところで、レリーフは登録してきたか」
 「はい」
 「ルトルン伯爵はやり手だと聞く。ないとは思うが、婚約解消を申し出たら、何か仕掛けてくるかもしれん。用心をするのに越したことはない。まあ俺がちゃんとしていれば、こうはなっていなかったのだがな」
 「お父様……。大丈夫ですわ。お父様が頼りない分、私がしっかりしますから」
 「これは一本取られたな」

 私達は、笑い合う。
 元々、政略結婚ですらなかったのだから大丈夫でしょう。たぶん。
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