居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
46 / 58

第45話

 憂鬱な日々を過ごす。
 エルダ夫人は、あれから機嫌がいい。無効になると自信があるのね。
 あれから一週間後、結果が届いた。

 「レネット。見なさい。誓約書は無効になったわ」

 役所から届いた三枚の書類をエルダ夫人は執務室の机の上に嬉しそうに置いた。
 それを手に取る。

 ほぼ同じ文面で、私、アンナ、ガストン様の誓約書無効の書類だった。
 フランシスク様の証拠が集まったと言う連絡も来ていないし、間に合わなかったわ。

 これで、堂々と結婚でもさせる気なのかしらね。エルダ夫人は。
 って、もしかしてガストン様とアンナが結婚後も、全員ここに居座る気なのかしら。
 それだけは勘弁してほしいわ!

 どうしよう。ガストン様が浮気していたという証拠があっても今更なのではない?
 フランシスク様に、彼らを追い出す権限はないもの。
 私にしたって、言って出て行かなければ、どうする事もできないわ。

 ルトルン伯爵は、きっと彼らの味方をするでしょう。だって結婚させて厄介払いしたかったのだから。
 とりあえず、私とでなくても結婚できた。私が騒ぎ立てないように、それこそエルダ夫人と手を組むかもしれない。

 「でね、提案なんだけど。経営家をルトルン伯爵家が手配した者に変えましょう」
 「え! その話なら前にお断りしました」
 「そう言わないで。在住してもらうのよ。そうしたら、この前みたいにガストンが暴走できないわ。それに、あなたが今やっている書類も書いてもらえるでしょう?」

 確かにエルダ夫人が言う様に、経営家が在住していれば、ガストン様も変な気は起こさないでしょうし、書類も書いて頂ける。
 けどそれって、こちらに通ってもらうって事になるので、凄いお金が掛かるのよ。
 だって、他の依頼の仕事が出来ないからね。そのかわり、雑務もみんなしてもらえる。

 「それは……」
 「今回の事もあなたを通してだから防げなかったと思わない?」
 「私のせいだと言うのですか?」
 「落ち着いて。そうは言ってないわ。ガストンの暴走を抑える抑止力になると言っているの。ずっとではないわ。あなたが学園に通っている間だけよ。どう?」

 どうせ、学園を卒業した後もそのままでしょう。
 ガストン様とアンナの事をここで言っちゃう?
 ダメよ。落ち着いて。

 証拠らしい証拠がないわ。
 それにその証拠を今集めてくれている。それが揃うまで時間稼ぎが正解よ。
 少なくとも、経営家の事は回避できるわ。

 「そう。少し考える時間をちょうだい」
 「わかった。いい返事を待っているわ」

 書類を置いたまま、エルダ夫人は出て行った。
 はあ。何の為に誓約書を作ったのやらって感じよね。
 私の不用意な行動で、プロンテヌ侯爵が立てた計画がパーよ。

 今更だけど、プロンテヌ侯爵に伝えた方がいいかしら。手紙を送っても間に合わないと思い、フランシスク様の証拠集めが間に合うのを願っていたけど、間に合わなかった。
 ここに届いたのは三枚だから、プロンテヌ侯爵の誓約書が無効になった書類はプロンテヌ侯爵に届くのよね。

 ううん。ちゃんと謝罪の手紙を書きましょう。でも、なんて書いたらいいのかしら……。
 追い出す手伝いをお願いしますって書いたら、勝手すぎるかしらね。
 はぁ……。

 とんとんとん。
 考え込んでいると執務室のドアがノックされた。ここに訪ねて来て、ちゃんとノックをするのは執事長ね。

 「はい。どうぞ」
 「失礼します」

 ドアを閉めて近づき、執事長がどうぞと手紙を手渡してくれた。
 プロンテヌ侯爵からだわ。

 「ありがとう」
 「先ほどですが、アンナ様が倒れられて今医師に見て頂いております」
 「え! 大丈夫かしら」
 「貧血を起こした様です。詳しくは医師に聞かないとわかりませんが」
 「そう。大事がないといいけど」

 ではと、執事が部屋から出て行った。
 アンナの事は後で聞きましょう。まずは、手紙になんて書いてあるかね。

 え……。明日来るの? って、マスティラン領主と共にですって!
 なぜ、マスティラン侯爵まで一緒に? フランシスク様が一緒ならわかるんだけど。

 仕事を終わらせる前に、アンナの様子を見に行きますか。

 「あ、叔母様。お聞きしましたわ。アンナが倒れたって」

 アンナの部屋に向かっていると、アンナの部屋からエルダ夫人が出て来た。

 「あら、レネット。アンナの心配をしてくれたのね。ありがとう。ちょっとした貧血だっただけよ。夜更かしのし過ぎみたいね。今は眠っているわ」
 「そう。よかった。では、医師はお帰りになったのね」
 「えぇ。ところで仕事は終わったの?」
 「いえ、まだです」
 「そう。あなたも倒れないように無理しないようにね」
 「あ、はい。では、仕事に戻りますね」

 私は、踵を返し執務室へ向かう。
 労われたわ。本心だといいのだけど。どうしても、さっきの話とこじつけてしまうわ。
感想 1

あなたにおすすめの小説

令嬢たちの華麗なる断罪 ~婚約破棄は、こちらから~

櫻井みこと
恋愛
婚約者である令嬢たちを差し置いて、ひとりの女性に夢中になっている婚約者たち。 その女性はあまりにも常識知らずだったから、少し注意をしていただけなのに、嫉妬して彼女をいじめていると言いがかりをつけられる。 どうして政略結婚の相手に、嫉妬などしなければならないのでしょう。 呆れた令嬢たちは、ひそかに婚約破棄の準備を進めていた。 ※期間限定で再公開しました。

たいした苦悩じゃないのよね?

ぽんぽこ狸
恋愛
 シェリルは、朝の日課である魔力の奉納をおこなった。    潤沢に満ちていた魔力はあっという間に吸い出され、すっからかんになって体が酷く重たくなり、足元はふらつき気分も悪い。  それでもこれはとても重要な役目であり、体にどれだけ負担がかかろうとも唯一無二の人々を守ることができる仕事だった。  けれども婚約者であるアルバートは、体が自由に動かない苦痛もシェリルの気持ちも理解せずに、幼いころからやっているという事実を盾にして「たいしたことない癖に、大袈裟だ」と罵る。  彼の友人は、シェリルの仕事に理解を示してアルバートを窘めようとするが怒鳴り散らして聞く耳を持たない。その様子を見てやっとシェリルは彼の真意に気がついたのだった。

「愛があれば十分だ」と私を捨てた婚約者へ――では、その婚約破棄の条件から確認いたしましょう

師走
恋愛
伯爵令嬢リディア・エーヴェルは、貴族たちの婚約や離縁、持参金や相続に関わる条件調整を陰でまとめてきた実務家だった。 だがある夜会で、婚約者である王太子側近ユリウス・グランツから「君は条件ばかりで冷たい。愛があれば契約などいらない」と一方的に婚約破棄されてしまう。 静かに婚約破棄を受理したリディアは、その場で持参金返還、贈与品、名誉回復の文言など必要事項の確認を始めるが、誰もその意味を理解しない。 けれど彼女が婚約から外れた直後から、王都では縁談、婚約、離縁の調整が次々と滞り始める。今まで多くの案件を陰でまとめていたのは、ほかでもないリディアだったのだ。 そんな中、法務局の裁定官補佐セオドア・ヴァレントから、王女ヘレナの婚姻条件を見直してほしいと依頼が舞い込む。 北方大公家との政略結婚。けれど提示された条件は、婚姻ではなく人質の引き渡しに等しいものだった。 「条件は愛の代わりではありません。ですが、愛が壊れたときに人を守ることはできます」 傷つきながらも再び交渉の場に立つリディアは、王女の未来を守るため、そして自分自身の人生を取り戻すため、契約と誠意を武器に王都最大の婚姻交渉へ挑む。 一方、自分を支えていたものの大きさに気づいた元婚約者は、今更になって復縁を望み始めるが――。 小説家になろう様でも掲載中

【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない

あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。 王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。 だがある日、 誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。 奇跡は、止まった。 城は動揺し、事実を隠し、 責任を聖女ひとりに押しつけようとする。 民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。 一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、 奇跡が失われる“その日”に備え、 治癒に頼らない世界を着々と整えていた。 聖女は象徴となり、城は主導権を失う。 奇跡に縋った者たちは、 何も奪われず、ただ立場を失った。 選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。 ――これは、 聖女でも、英雄でもない 「悪役令嬢」が勝ち残る物語。

婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。 幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、 いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。 そして――年末の舞踏会の夜。 「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」 エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、 王国の均衡は揺らぎ始める。 誇りを捨てず、誠実を貫く娘。 政の闇に挑む父。 陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。 そして――再び立ち上がる若き王女。 ――沈黙は逃げではなく、力の証。 公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。 ――荘厳で静謐な政略ロマンス。 (本作品は小説家になろう、カクヨムにも掲載中です)

お言葉を返すようですが、私それ程暇人ではありませんので

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<あなた方を相手にするだけ、時間の無駄です> 【私に濡れ衣を着せるなんて、皆さん本当に暇人ですね】 今日も私は許婚に身に覚えの無い嫌がらせを彼の幼馴染に働いたと言われて叱責される。そして彼の腕の中には怯えたふりをする彼女の姿。しかも2人を取り巻く人々までもがこぞって私を悪者よばわりしてくる有様。私がいつどこで嫌がらせを?あなた方が思う程、私暇人ではありませんけど?

『魔力ゼロの欠陥品』と蔑まれた伯爵令嬢、卒業パーティーで婚約破棄された瞬間に古代魔法が覚醒する ~虐げられ続けた三年間、倍返しでは足りない~

スカッと文庫
恋愛
「貴様のような無能、我が国の王妃には相応しくない。婚約を破棄し、学園から追放する!」 王立魔道学園の卒業パーティー。きらびやかなシャンデリアの下、王太子エドワードの声が冷酷に響いた。彼の隣には、愛くるしい表情で私を嵌めた男爵令嬢、ミナが勝ち誇ったように寄り添っている。 伯爵令嬢のリリアーヌは、入学以来三年間、「魔力ゼロの欠陥品」として学園中の嘲笑を浴び続けてきた。 婚約者であるエドワードからは一度も顧みられず、同級生からはゴミのように扱われ、ミナの自作自演による「いじめ」の濡れ衣まで着せられ……。 それでも、父との「力を隠せ」という約束を守るため、泥を啜るような屈辱に耐え抜いてきた。 ――だが、国からも学園からも捨てられた今、もうその約束を守る必要はない。 「さようなら、皆様。……私が消えた後、この国がどうなろうと知ったことではありませんわ」 リリアーヌが身につけていた「魔力封印の首飾り」を自ら引き千切った瞬間、会場は漆黒の魔力に包まれた。 彼女は無能などではない。失われた「古代魔法」をその身に宿す、真の魔道の主だったのだ。 絶望する王太子たちを余目に、隣国の伝説の魔術師アルベルトに拾われたリリアーヌ。 彼女の、残酷で、甘美な復讐劇が今、幕を開ける――。

王子、おひとり様で残りの人生をお楽しみください!

ちゃっぴー
恋愛
「ラーニャ、貴様との婚約を破棄する!」 卒業パーティーの真っ最中、ナルシストな第一王子ウィルフレッドに身に覚えのない罪で断罪された公爵令嬢ラーニャ。しかし、彼女はショックを受けるどころか、優雅に微笑んで拍手を送った。 なぜなら、ラーニャはとっくに王子の無能さに愛想を尽かし、この日のために完璧な「撤退準備」を進めていたからだ。