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第51話 プロンテヌ侯爵視点
「ないとは言ってないだろう?」
私の言葉にルトルン伯爵が驚いた顔つきになった。
「そんなハッタリが通用するとでも?」
「そう思うのなら、次の質問にきちんと答えてもらうぞ?」
「馬車の件なら……」
「いやいや、馬車の件ではない。どうやって、レネットを説得するつもりだったかだ。不正はしていないのだろう?」
彼が睨みつけてくるが、そんな睨みは私には効かん。
今回も納得するいや、頷くしかない状況に追い込む手段を用意しているはずだ。それが、彼のやり方だからな。
「ウルミーシュ子爵夫人が言う通り、大変だろうと訴えかける――」
「逆だろう。ウルミーシュ子爵夫人は、娘の事で手一杯になるのではないかね? 半年後には、赤子が生まれるのだから」
ハッとしたような顔つきをルトルン伯爵が一瞬見せた。
私達が乗り込んで来るとは思っていなかったのだろうから、質問の答えなど用意してなかっただろう。だから咄嗟に思いついた理由を言った。
マスティラン子息が寄越した手紙通りなら、ルトルン伯爵なら証拠を隠滅した後、グリンマトル家から手を引くはずだ。
彼は、犯罪すれすれのいや証拠を消せる範囲でしか、事を起こさない。
息子の仕出かした事も、見た目穏便に済ませていた。
文官である彼を使いすぐさま書類を作成し、相手に反論の隙を与えない。それがルトルン伯爵のやり方だ。
しかし今回は、誓約書を交わしてでもレネットとの婚約を続行した。ガストンがそれを願っているわけでもないのに。
ならば、そうせねばならない状況にあるって事だ。
例えば、ウルミーシュ子爵夫人に細工した所を見られ、告発すると脅されたとかだ。
ガストンだけならすぐに落とせるはずだった。
だが、ルトルン伯爵が彼の守りに入れば、容易ではなくなる。孕んだ事により、事が早められるとはな。
いや好機と言うべきだ。彼も纏めて捕らえてやる。
「さて、順を追って説明している最中だったな」
「そんなの聞く義理はない!」
「そうか。ならば、これを見ていただこう」
私は、懐から誓約書の一部無効の書類を出し、ルトルン伯爵に見える様に掲げた。
それを見た、ルトルン伯爵がギョッとした顔つきになった。
「エルダ夫人! 無効の誓約書が来たと言ったな。それは今、どこにある!」
「え……」
慌てだしたルトルン伯爵の様子に、エルダ夫人が動揺する。
「それはここにありますわ」
レネットも懐から出した。それは、三枚の書類だ。
私が手紙に書いたように、来た書類を肌身離さずに持っていてくれたようだな。
「叔母様は、無効の書類だと言って置いていったのですが、一枚だけ無効の書類ではなかったようです」
「何ですって!」
レネットから書類をウルミーシュ子爵夫人が奪い取ると、更にそれをルトルン伯爵が奪い、内容を確認する。
「なんだこの書類の書き方は! これは定型文ではないな! 図ったな!」
ルトルン伯爵がマスティラン子息に振り向き怒鳴った。
「何のことです?」
「この書類の事だ! なぜこんな間際らしい文章なのだ!」
ちゃんと指示した通りの文章にしたようだな。
彼らを油断させる為に、レネットとアンナの誓約書無効の書類と文章が類似するように、ガストンの誓約書の執行の書類を書いてもらったのだ。
「大変珍しい事態だったのもで、定型文を見つける事ができずにそういう書き方になっただけですが、お読みいただければわかりますよね? 先に執行されたので無効にはなりませんと」
「何ですって!」
やっと、ルトルン伯爵が焦っている意味をウルミーシュ子爵夫人が理解し、ガストン宛の書類を見直している。
「こ、こんな、他の二枚と同じ封筒に入れて送ってきて、文章も似ていたら、無効になったと思うわよ!」
「おかしいですね。他の二枚は、『誓約書の無効通知』でそれは、『誓約書の無効について』。タイトルさえ違うのですが?」
「そうですわ、叔母様」
レネットをキッとウルミーシュ子爵夫人が睨む。
「あなた、知っていて黙っていたの? というか、グルだったのね!」
「先ほど見直してみて、気づきました。グルなのは、叔母様とガストン様でしょう!」
レネットが言えば、悔しそうにウルミーシュ子爵夫人が唇をかんだ。
ルトルン伯爵が焦っているのは、誓約書が執行され罰則を恐れている訳ではなく、誓約書が執行されたという事にだろう。これが、動機の証明となるからだ。
妊娠する行為は、誓約書前の事。その時の責任を取るという言い訳ができるが、誓約書が執行されたという事は、誓約後も関係があったという事実を掴んでいるという事だ。
つまり、誓約書を交わしてまでガストンがレネットと結婚するメリットなどないのだから、それなりの理由があるという事になる!
私の言葉にルトルン伯爵が驚いた顔つきになった。
「そんなハッタリが通用するとでも?」
「そう思うのなら、次の質問にきちんと答えてもらうぞ?」
「馬車の件なら……」
「いやいや、馬車の件ではない。どうやって、レネットを説得するつもりだったかだ。不正はしていないのだろう?」
彼が睨みつけてくるが、そんな睨みは私には効かん。
今回も納得するいや、頷くしかない状況に追い込む手段を用意しているはずだ。それが、彼のやり方だからな。
「ウルミーシュ子爵夫人が言う通り、大変だろうと訴えかける――」
「逆だろう。ウルミーシュ子爵夫人は、娘の事で手一杯になるのではないかね? 半年後には、赤子が生まれるのだから」
ハッとしたような顔つきをルトルン伯爵が一瞬見せた。
私達が乗り込んで来るとは思っていなかったのだろうから、質問の答えなど用意してなかっただろう。だから咄嗟に思いついた理由を言った。
マスティラン子息が寄越した手紙通りなら、ルトルン伯爵なら証拠を隠滅した後、グリンマトル家から手を引くはずだ。
彼は、犯罪すれすれのいや証拠を消せる範囲でしか、事を起こさない。
息子の仕出かした事も、見た目穏便に済ませていた。
文官である彼を使いすぐさま書類を作成し、相手に反論の隙を与えない。それがルトルン伯爵のやり方だ。
しかし今回は、誓約書を交わしてでもレネットとの婚約を続行した。ガストンがそれを願っているわけでもないのに。
ならば、そうせねばならない状況にあるって事だ。
例えば、ウルミーシュ子爵夫人に細工した所を見られ、告発すると脅されたとかだ。
ガストンだけならすぐに落とせるはずだった。
だが、ルトルン伯爵が彼の守りに入れば、容易ではなくなる。孕んだ事により、事が早められるとはな。
いや好機と言うべきだ。彼も纏めて捕らえてやる。
「さて、順を追って説明している最中だったな」
「そんなの聞く義理はない!」
「そうか。ならば、これを見ていただこう」
私は、懐から誓約書の一部無効の書類を出し、ルトルン伯爵に見える様に掲げた。
それを見た、ルトルン伯爵がギョッとした顔つきになった。
「エルダ夫人! 無効の誓約書が来たと言ったな。それは今、どこにある!」
「え……」
慌てだしたルトルン伯爵の様子に、エルダ夫人が動揺する。
「それはここにありますわ」
レネットも懐から出した。それは、三枚の書類だ。
私が手紙に書いたように、来た書類を肌身離さずに持っていてくれたようだな。
「叔母様は、無効の書類だと言って置いていったのですが、一枚だけ無効の書類ではなかったようです」
「何ですって!」
レネットから書類をウルミーシュ子爵夫人が奪い取ると、更にそれをルトルン伯爵が奪い、内容を確認する。
「なんだこの書類の書き方は! これは定型文ではないな! 図ったな!」
ルトルン伯爵がマスティラン子息に振り向き怒鳴った。
「何のことです?」
「この書類の事だ! なぜこんな間際らしい文章なのだ!」
ちゃんと指示した通りの文章にしたようだな。
彼らを油断させる為に、レネットとアンナの誓約書無効の書類と文章が類似するように、ガストンの誓約書の執行の書類を書いてもらったのだ。
「大変珍しい事態だったのもで、定型文を見つける事ができずにそういう書き方になっただけですが、お読みいただければわかりますよね? 先に執行されたので無効にはなりませんと」
「何ですって!」
やっと、ルトルン伯爵が焦っている意味をウルミーシュ子爵夫人が理解し、ガストン宛の書類を見直している。
「こ、こんな、他の二枚と同じ封筒に入れて送ってきて、文章も似ていたら、無効になったと思うわよ!」
「おかしいですね。他の二枚は、『誓約書の無効通知』でそれは、『誓約書の無効について』。タイトルさえ違うのですが?」
「そうですわ、叔母様」
レネットをキッとウルミーシュ子爵夫人が睨む。
「あなた、知っていて黙っていたの? というか、グルだったのね!」
「先ほど見直してみて、気づきました。グルなのは、叔母様とガストン様でしょう!」
レネットが言えば、悔しそうにウルミーシュ子爵夫人が唇をかんだ。
ルトルン伯爵が焦っているのは、誓約書が執行され罰則を恐れている訳ではなく、誓約書が執行されたという事にだろう。これが、動機の証明となるからだ。
妊娠する行為は、誓約書前の事。その時の責任を取るという言い訳ができるが、誓約書が執行されたという事は、誓約後も関係があったという事実を掴んでいるという事だ。
つまり、誓約書を交わしてまでガストンがレネットと結婚するメリットなどないのだから、それなりの理由があるという事になる!
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