居候と婚約者が手を組んでいた!

すみ 小桜(sumitan)

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第53話

 「けど、プロンテヌ侯爵に頼まれて来たと言ったじゃないか!」

 ガストン様が、フランシスク様を指さし怒鳴った。
 これ前にもやったやり取りよね。

 「ですからプロンテヌ侯爵に調頼まれたのです。あの時は、詳しく伝える事はできなかったのでそう言っただけです」

 ガストン様やエルダ夫人だけではなく、ルトルン伯爵も絶句していた。
 私も驚いた。どういう事? フランシスク様は、本当に知らなかったの。それともワザと意味深に聞こえる様に言ったの?

 「だったら誰が報告者だと……お前か!」

 今まで一言も発せず傍観していた執事長を見て、ルトルン伯爵が言った。

 「はい。わたくしです。あなた様には、月に一度のお約束ですので、まだご連絡申し上げておりませんでした」
 「言葉のマジック。君もよく使う手ではないか」

 ニヤリとして、プロンテヌ侯爵が言った。
 なるほど。あのタイミングで、フランシスク様がプロンテヌ侯爵に頼まれて来たと言えば、報告者だと思うわ。私もそう思っていた。
 そして、報告者だと思われるフランシスク様を屋敷から追い出して、エルダ夫人達は安堵していたはず。

 「もしかして、私は何かしらの策に利用されていたのですか?」
 「敵を欺くにはまずは味方からと言うだろう。まあ今回は、君を利用したが、君自体は別に騙してはいないがな」

 本当にフランシスク様は、報告者の事を知らなかったのね。
 というか、私もプロンテヌ侯爵に騙されていたわ。

 「なるほど。レネット嬢も知らなかったようだな。まんまと思惑に嵌ったわけか」
 「そうだ。外の情報がなくとも、家でガストンとアンナが親密だった事は連絡を受けていた。もう言い逃れは出来ないぞ、ガストン子息! すべて話せ!」
 「僕は……」

 そうよ! 話すのよ!

 「ガストン帰るぞ! こんな茶番に付き合っていられるか!」

 ルトルン伯爵が、何か言いかけたガストン様の腕をガシッと掴み、ドアへと向かう。
 え? 逃げる気?

 とその時、ドアが開いた。
 内側からではなく外側から開かれ、そちらへ向かっていたルトルン伯爵の歩みが止まる。

 「父上。よかった。間に合った」
 「マスティラン侯爵……」

 ルトルン伯爵が、悔しそうに呟く。
 フランシスク様が、間に合ったと言ったわね。
 もしかして、今まで時間稼ぎをしていたの?

 「ナイスタイミングだ。マスティラン侯爵。今ちょうど、調べていた令嬢と馬車の話をしていたところだ」

 うん? それは終わってガストン様の浮気の証拠の話をしていたのでは?
 って、あの人は……。

 「ラサウールさん?」

 ラサウール男爵家の令嬢。この前、雇った事になった薬師。なぜ彼女がマスティラン侯爵と一緒にいるの? それに警兵が後ろに控えている。
 ガストン様達を捕らえに来たのは明白だわ。

 「彼女が、誰だか知っているだろう。ルトルン伯爵」
 「グリンマトル伯爵家で働く薬師が必要だというので手配した者だな」

 え? ルトルン伯爵が手配したの? だとしたらちゃんとした身元の方だったんだ。てっきり、ガストン様が適当に選んだと思っていたわ。
 あれ、待って? とすると、ガストン様がルトルン伯爵に頼んだというの? それなのにガストン様が登録しに行ったの?
 おかしいわ。だってあの時、ガストン様が登録しに行ったと聞いて怒ったのよ。内容的には、書類が揃ってないのに提出したからだけど。

 「ダウトだ。ルトルン伯爵」

 プロンテヌ侯爵の言葉に、ルトルン伯爵がハッとする。

 「っく。エルダ夫人が余計な事さえしなければ」

 え? どういう事?

 「彼女から証言は取れている。ルトルン伯爵に薬師として働き口を斡旋してもらう見返りとして、彼とのを約束したそうだ」

 一晩? それって関係を迫ったって事?
 彼女は確か30代独身だったわね。

 「だが突然、彼の息子とクラブへ行くように言われたそうだ。それが、息子とグリンマトル令嬢がクラブから出て来たと疑われた日の夜だ」

 マスティラン侯爵の言葉に私は唖然となった。
 もしかしなくても、ルトルン伯爵も加担していたの? 本来は、自分達が不倫している姿を見せるはずだったと。
 そう言えば彼女の髪色は、私より暗い黄緑色。ウルミーシュ子爵家の馬車でクラブに行けば、思い込みで噂の私達が出来上がり。

 「彼女の証言を取るのに時間が必要だったのでね。こちらはこちらで、あなたに聞き取りをしていたってわけだ。で、ガストン。君は彼女とも浮気をしていた。間違いないね?」
 「はぁ? なぜ僕が、こんな年増と浮気しないといけないんだ! 頼まれたから行っただけで、何もし――」
 「ガストン!」

 ルトルン伯爵に止められ、ハッとして口を閉じるも遅い。
 浮気の目的ではないと言ってしまったのだから。
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