55 / 58
第54話
浮気だとしても修羅場になりそうだけど、アンナが切れていないところをみると、彼女も知っていたって事よね。
つまり、ガストン様が口走った事は本当って事よ。
「だからそんな余計な事しないほうがいいと言ったんだ」
「あら、好みの子を選んだんでしょう?」
ルトルン伯爵にエルダ夫人が嫌味で返す。
「ではルトルン伯爵並びに――」
「一緒になんて行きませんよ」
はい!? 自白したじゃないの。ルトルン伯爵の言葉にマスティラン侯爵は、まだ抗うのかとため息をついた。
「何の罪で連れて行くつもりですか? 不倫? それとも息子が未成年でクラブに行ったことですか?」
「そうですか。では、ファイリード閣下殿、薬師が嘆願書をあなたに渡したと言っています。それを見せて頂けますかな?」
「え? 嘆願書?」
ラサウールさんが、私に嘆願書って。もしかして、薬師として働いた分を払えって?
仕方なさそうに文官であるファイリード閣下が、マスティラン侯爵に手渡した。
もう調べはついているようだし、渡さないわけにはいかないのでしょうね。
「よく考えたものだな。彼女よりも高い給料を払わなければ訴えるか。しかも経営家のエッテ殿の不正の訴え、告発もしている」
「え? もしかして先に働いていたラザンさんの嘆願書? って、告発!?」
不正なんてあるわけないでしょう!?
何をどう不正したっていうのよ。
「これも彼がよく使う手だな。先に雇っていた薬師も彼が手配した者だ。最初から仕込まれていたって事だ」
薬師は、ルトルン伯爵の味方だったの?
普通に働いてくれていたし、変な行動もしていなかったのに。
「でもそれで、私が爵位を渡すなんて事はないわ」
ルトルン伯爵とグルだなんて思ってなければきっと、話し合おうとするだろうし、経営家は私だと暴露しただろうから。
「普通は、君が経営家の事がわかるはずがないと思い、色々言うのだ。そして不安にさせる。君もこのままだと共犯になると脅す。経営家に連絡を取ろうとすれば、一緒に突き出すとさらに脅す。目の前の文官が、訴えられればこうなる事だろうと恐怖を煽る。彼らの常套手段だ」
「共犯って。まあ間違ってはいないかな」
「何!?」
私の言葉にルトルン伯爵が凄く驚いた。
「あ、別に悪さをしていたと言う意味ではないわよ。私が経営家のエッテなの」
「な、何だと?」
「レネット。薬師は経営家ではないわよ」
なに諭すように言っているのよ。
「叔母様、それぐらい私だって知ってます。学園に通う前に両方の資格を取ったのです。お父様に、叔母様が元婚約者に言われた事を気にしていて、私に薬師だけ取った事にしておきなさいと言ったのです」
「あり得ない! 経営家も薬師の資格もそんな簡単ではない!」
事実を隠していた訳を言えば、ルトルン伯爵が反論を述べる。
「信じられないのはわかりますが、王都の学校に通っている間は、私が見守っていたのです。それに、エッテについて調べたでしょう。実績はなかった。違うかね?」
「………」
やっぱり調べはしたのね。
仕事をいっぱい持っていて仕事を受けられない状況や、新たな仕事を受けるつもりがない場合は、紹介に上がらないようにできる。
私は、全て秘匿にしておいたし、依頼は受けない状態になっていたから、依頼して会う事も叶わない。
元々、グリンマトル家専属のつもりで取った資格だからね。それに、学園に通っている間は仕事を受けてもこなせないから。
私だとわかるはずもない。
「そうね。私だとわかる方法があるわ」
懐からレリーフを出せば、エルダ夫人が『あっ』と声を上げた。持っていたのかと。
メモ用紙に、ポンと押してレリーフの判を見せた。
「ほ、本当にあなたが経営家だったの……」
「そうよ。だから今回の脅しは失敗に終わったでしょうね」
私がそう言えば、エルダ夫人とルトルン伯爵が悔しそうな顔つきになった。まさか私に騙されていたなんてって事でしょうね。
「流石に、それは見破れなかったな」
「さて、これはルトルン伯爵、あなたに書けと命じられたと言っています。一緒に来て頂けますね?」
「わかりました。ですが、息子は関係ないですよね? エルダ夫人、ガストンを頼みます」
観念したルトルン伯爵がエルダ夫人にガストン様を託した。
でもこれって、私を脅して爵位を奪おうとした罪って事よね?
じゃガストン様を罪に問えないの!?
つまり、ガストン様が口走った事は本当って事よ。
「だからそんな余計な事しないほうがいいと言ったんだ」
「あら、好みの子を選んだんでしょう?」
ルトルン伯爵にエルダ夫人が嫌味で返す。
「ではルトルン伯爵並びに――」
「一緒になんて行きませんよ」
はい!? 自白したじゃないの。ルトルン伯爵の言葉にマスティラン侯爵は、まだ抗うのかとため息をついた。
「何の罪で連れて行くつもりですか? 不倫? それとも息子が未成年でクラブに行ったことですか?」
「そうですか。では、ファイリード閣下殿、薬師が嘆願書をあなたに渡したと言っています。それを見せて頂けますかな?」
「え? 嘆願書?」
ラサウールさんが、私に嘆願書って。もしかして、薬師として働いた分を払えって?
仕方なさそうに文官であるファイリード閣下が、マスティラン侯爵に手渡した。
もう調べはついているようだし、渡さないわけにはいかないのでしょうね。
「よく考えたものだな。彼女よりも高い給料を払わなければ訴えるか。しかも経営家のエッテ殿の不正の訴え、告発もしている」
「え? もしかして先に働いていたラザンさんの嘆願書? って、告発!?」
不正なんてあるわけないでしょう!?
何をどう不正したっていうのよ。
「これも彼がよく使う手だな。先に雇っていた薬師も彼が手配した者だ。最初から仕込まれていたって事だ」
薬師は、ルトルン伯爵の味方だったの?
普通に働いてくれていたし、変な行動もしていなかったのに。
「でもそれで、私が爵位を渡すなんて事はないわ」
ルトルン伯爵とグルだなんて思ってなければきっと、話し合おうとするだろうし、経営家は私だと暴露しただろうから。
「普通は、君が経営家の事がわかるはずがないと思い、色々言うのだ。そして不安にさせる。君もこのままだと共犯になると脅す。経営家に連絡を取ろうとすれば、一緒に突き出すとさらに脅す。目の前の文官が、訴えられればこうなる事だろうと恐怖を煽る。彼らの常套手段だ」
「共犯って。まあ間違ってはいないかな」
「何!?」
私の言葉にルトルン伯爵が凄く驚いた。
「あ、別に悪さをしていたと言う意味ではないわよ。私が経営家のエッテなの」
「な、何だと?」
「レネット。薬師は経営家ではないわよ」
なに諭すように言っているのよ。
「叔母様、それぐらい私だって知ってます。学園に通う前に両方の資格を取ったのです。お父様に、叔母様が元婚約者に言われた事を気にしていて、私に薬師だけ取った事にしておきなさいと言ったのです」
「あり得ない! 経営家も薬師の資格もそんな簡単ではない!」
事実を隠していた訳を言えば、ルトルン伯爵が反論を述べる。
「信じられないのはわかりますが、王都の学校に通っている間は、私が見守っていたのです。それに、エッテについて調べたでしょう。実績はなかった。違うかね?」
「………」
やっぱり調べはしたのね。
仕事をいっぱい持っていて仕事を受けられない状況や、新たな仕事を受けるつもりがない場合は、紹介に上がらないようにできる。
私は、全て秘匿にしておいたし、依頼は受けない状態になっていたから、依頼して会う事も叶わない。
元々、グリンマトル家専属のつもりで取った資格だからね。それに、学園に通っている間は仕事を受けてもこなせないから。
私だとわかるはずもない。
「そうね。私だとわかる方法があるわ」
懐からレリーフを出せば、エルダ夫人が『あっ』と声を上げた。持っていたのかと。
メモ用紙に、ポンと押してレリーフの判を見せた。
「ほ、本当にあなたが経営家だったの……」
「そうよ。だから今回の脅しは失敗に終わったでしょうね」
私がそう言えば、エルダ夫人とルトルン伯爵が悔しそうな顔つきになった。まさか私に騙されていたなんてって事でしょうね。
「流石に、それは見破れなかったな」
「さて、これはルトルン伯爵、あなたに書けと命じられたと言っています。一緒に来て頂けますね?」
「わかりました。ですが、息子は関係ないですよね? エルダ夫人、ガストンを頼みます」
観念したルトルン伯爵がエルダ夫人にガストン様を託した。
でもこれって、私を脅して爵位を奪おうとした罪って事よね?
じゃガストン様を罪に問えないの!?
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
婚約破棄? ありがとうございます。やっと本当の人生が始まります
たくわん
恋愛
婚約破棄された令嬢がすべきことといえば、泣くか、喚くか、復讐を誓うか——らしい。
リーナ・フォスター公爵令嬢がしたことは、荷造りだった。
「冷たくて人を愛せない」と王太子に切り捨てられた夜、リーナは一度も振り返らずに王城を出た。向かった先は辺境の荒れ地。目的は薬草の栽培と薬品事業の立ち上げ。前世の記憶から温めてきた、誰にも言えなかった計画の実行だ。
リーナはそこで不器用だが誠実な騎士ヴァルターと出会う。一方、残された王太子とその新しい婚約者は、少しずつ、静かに、取り返しのつかない方向へと歩んでいたーー。
婚約者の王太子が平民と結婚するそうです──どうぞ、ご勝手に【完結保証】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王太子エドモンが平民との“真実の愛“を宣言した日、王国の均衡は崩れた。
エドモンの婚約者である公爵令嬢エヴァは、公衆の面前で婚約破棄され、更には婚約者のいるクラウディオ・レンツ公爵との結婚を命じられる。
──そして舞踏会の夜。
王太子妃になった元平民ナタリーは、王宮の礼儀も政治も知らぬまま混乱を引き起こす。
ナタリーの暴走により、王家はついにエヴァを敵に回した。
王族は焦り、貴族は離反し、反王派は勢力を拡大。
王国は“内乱寸前”へと傾いていく。
そんな中、エヴァの前に跪いたのは王太子の従弟アレクシス・レンツ。
「僕と結婚してほしい。
僕以外が王になれば、この国は沈む」
冷静で聡明な少年は、エヴァを“未来の国母”に据えるためチャンスを求めた。
「3ヶ月以内に、私をその気にさせてご覧なさい」
エヴァは、アレクシスに手を差し伸べた。
それからの2人は──?
⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。視点が頻繁に変わります。
幼馴染が最優先な婚約者など、私の人生には不要です。
たると
恋愛
シュタイン伯爵家の長女エルゼは、公爵子息フィリップに恋をしていた。
彼の婚約者として選ばれた時は涙を流して喜んだが、その喜びもいまは遠い。
『君は一人でも大丈夫だろう。この埋め合わせは必ずする。愛している』
「……『愛している』、ですか」
いつも幼馴染を優先するアルベルトに、恋心はすっかり冷めてしまった。
辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~
紫月 由良
恋愛
辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。
魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。
※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています
選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ
暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】
5歳の時、母が亡くなった。
原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。
そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。
これからは姉と呼ぶようにと言われた。
そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。
母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。
私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。
たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。
でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。
でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ……
今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。
でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。
私は耐えられなかった。
もうすべてに………
病が治る見込みだってないのに。
なんて滑稽なのだろう。
もういや……
誰からも愛されないのも
誰からも必要とされないのも
治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。
気付けば私は家の外に出ていた。
元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。
特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。
私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。
これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
婚約破棄される前に、帰らせていただきます!
パリパリかぷちーの
恋愛
ある日、マリス王国の侯爵令嬢クロナは、王子が男爵令嬢リリィと密会し、自分を「可愛げのない女」と罵り、卒業パーティーで「婚約破棄」を言い渡そうと画策している現場を目撃してしまう。
普通なら嘆き悲しむ場面だが、クロナの反応は違った。