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第54話
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浮気だとしても修羅場になりそうだけど、アンナが切れていないところをみると、彼女も知っていたって事よね。
つまり、ガストン様が口走った事は本当って事よ。
「だからそんな余計な事しないほうがいいと言ったんだ」
「あら、好みの子を選んだんでしょう?」
ルトルン伯爵にエルダ夫人が嫌味で返す。
「ではルトルン伯爵並びに――」
「一緒になんて行きませんよ」
はい!? 自白したじゃないの。ルトルン伯爵の言葉にマスティラン侯爵は、まだ抗うのかとため息をついた。
「何の罪で連れて行くつもりですか? 不倫? それとも息子が未成年でクラブに行ったことですか?」
「そうですか。では、ファイリード閣下殿、薬師が嘆願書をあなたに渡したと言っています。それを見せて頂けますかな?」
「え? 嘆願書?」
ラサウールさんが、私に嘆願書って。もしかして、薬師として働いた分を払えって?
仕方なさそうに文官であるファイリード閣下が、マスティラン侯爵に手渡した。
もう調べはついているようだし、渡さないわけにはいかないのでしょうね。
「よく考えたものだな。彼女よりも高い給料を払わなければ訴えるか。しかも経営家のエッテ殿の不正の訴え、告発もしている」
「え? もしかして先に働いていたラザンさんの嘆願書? って、告発!?」
不正なんてあるわけないでしょう!?
何をどう不正したっていうのよ。
「これも彼がよく使う手だな。先に雇っていた薬師も彼が手配した者だ。最初から仕込まれていたって事だ」
薬師は、ルトルン伯爵の味方だったの?
普通に働いてくれていたし、変な行動もしていなかったのに。
「でもそれで、私が爵位を渡すなんて事はないわ」
ルトルン伯爵とグルだなんて思ってなければきっと、話し合おうとするだろうし、経営家は私だと暴露しただろうから。
「普通は、君が経営家の事がわかるはずがないと思い、色々言うのだ。そして不安にさせる。君もこのままだと共犯になると脅す。経営家に連絡を取ろうとすれば、一緒に突き出すとさらに脅す。目の前の文官が、訴えられればこうなる事だろうと恐怖を煽る。彼らの常套手段だ」
「共犯って。まあ間違ってはいないかな」
「何!?」
私の言葉にルトルン伯爵が凄く驚いた。
「あ、別に悪さをしていたと言う意味ではないわよ。私が経営家のエッテなの」
「な、何だと?」
「レネット。薬師は経営家ではないわよ」
なに諭すように言っているのよ。
「叔母様、それぐらい私だって知ってます。学園に通う前に両方の資格を取ったのです。お父様に、叔母様が元婚約者に言われた事を気にしていて、私に薬師だけ取った事にしておきなさいと言ったのです」
「あり得ない! 経営家も薬師の資格もそんな簡単ではない!」
事実を隠していた訳を言えば、ルトルン伯爵が反論を述べる。
「信じられないのはわかりますが、王都の学校に通っている間は、私が見守っていたのです。それに、エッテについて調べたでしょう。実績はなかった。違うかね?」
「………」
やっぱり調べはしたのね。
仕事をいっぱい持っていて仕事を受けられない状況や、新たな仕事を受けるつもりがない場合は、紹介に上がらないようにできる。
私は、全て秘匿にしておいたし、依頼は受けない状態になっていたから、依頼して会う事も叶わない。
元々、グリンマトル家専属のつもりで取った資格だからね。それに、学園に通っている間は仕事を受けてもこなせないから。
私だとわかるはずもない。
「そうね。私だとわかる方法があるわ」
懐からレリーフを出せば、エルダ夫人が『あっ』と声を上げた。持っていたのかと。
メモ用紙に、ポンと押してレリーフの判を見せた。
「ほ、本当にあなたが経営家だったの……」
「そうよ。だから今回の脅しは失敗に終わったでしょうね」
私がそう言えば、エルダ夫人とルトルン伯爵が悔しそうな顔つきになった。まさか私に騙されていたなんてって事でしょうね。
「流石に、それは見破れなかったな」
「さて、これはルトルン伯爵、あなたに書けと命じられたと言っています。一緒に来て頂けますね?」
「わかりました。ですが、息子は関係ないですよね? エルダ夫人、ガストンを頼みます」
観念したルトルン伯爵がエルダ夫人にガストン様を託した。
でもこれって、私を脅して爵位を奪おうとした罪って事よね?
じゃガストン様を罪に問えないの!?
つまり、ガストン様が口走った事は本当って事よ。
「だからそんな余計な事しないほうがいいと言ったんだ」
「あら、好みの子を選んだんでしょう?」
ルトルン伯爵にエルダ夫人が嫌味で返す。
「ではルトルン伯爵並びに――」
「一緒になんて行きませんよ」
はい!? 自白したじゃないの。ルトルン伯爵の言葉にマスティラン侯爵は、まだ抗うのかとため息をついた。
「何の罪で連れて行くつもりですか? 不倫? それとも息子が未成年でクラブに行ったことですか?」
「そうですか。では、ファイリード閣下殿、薬師が嘆願書をあなたに渡したと言っています。それを見せて頂けますかな?」
「え? 嘆願書?」
ラサウールさんが、私に嘆願書って。もしかして、薬師として働いた分を払えって?
仕方なさそうに文官であるファイリード閣下が、マスティラン侯爵に手渡した。
もう調べはついているようだし、渡さないわけにはいかないのでしょうね。
「よく考えたものだな。彼女よりも高い給料を払わなければ訴えるか。しかも経営家のエッテ殿の不正の訴え、告発もしている」
「え? もしかして先に働いていたラザンさんの嘆願書? って、告発!?」
不正なんてあるわけないでしょう!?
何をどう不正したっていうのよ。
「これも彼がよく使う手だな。先に雇っていた薬師も彼が手配した者だ。最初から仕込まれていたって事だ」
薬師は、ルトルン伯爵の味方だったの?
普通に働いてくれていたし、変な行動もしていなかったのに。
「でもそれで、私が爵位を渡すなんて事はないわ」
ルトルン伯爵とグルだなんて思ってなければきっと、話し合おうとするだろうし、経営家は私だと暴露しただろうから。
「普通は、君が経営家の事がわかるはずがないと思い、色々言うのだ。そして不安にさせる。君もこのままだと共犯になると脅す。経営家に連絡を取ろうとすれば、一緒に突き出すとさらに脅す。目の前の文官が、訴えられればこうなる事だろうと恐怖を煽る。彼らの常套手段だ」
「共犯って。まあ間違ってはいないかな」
「何!?」
私の言葉にルトルン伯爵が凄く驚いた。
「あ、別に悪さをしていたと言う意味ではないわよ。私が経営家のエッテなの」
「な、何だと?」
「レネット。薬師は経営家ではないわよ」
なに諭すように言っているのよ。
「叔母様、それぐらい私だって知ってます。学園に通う前に両方の資格を取ったのです。お父様に、叔母様が元婚約者に言われた事を気にしていて、私に薬師だけ取った事にしておきなさいと言ったのです」
「あり得ない! 経営家も薬師の資格もそんな簡単ではない!」
事実を隠していた訳を言えば、ルトルン伯爵が反論を述べる。
「信じられないのはわかりますが、王都の学校に通っている間は、私が見守っていたのです。それに、エッテについて調べたでしょう。実績はなかった。違うかね?」
「………」
やっぱり調べはしたのね。
仕事をいっぱい持っていて仕事を受けられない状況や、新たな仕事を受けるつもりがない場合は、紹介に上がらないようにできる。
私は、全て秘匿にしておいたし、依頼は受けない状態になっていたから、依頼して会う事も叶わない。
元々、グリンマトル家専属のつもりで取った資格だからね。それに、学園に通っている間は仕事を受けてもこなせないから。
私だとわかるはずもない。
「そうね。私だとわかる方法があるわ」
懐からレリーフを出せば、エルダ夫人が『あっ』と声を上げた。持っていたのかと。
メモ用紙に、ポンと押してレリーフの判を見せた。
「ほ、本当にあなたが経営家だったの……」
「そうよ。だから今回の脅しは失敗に終わったでしょうね」
私がそう言えば、エルダ夫人とルトルン伯爵が悔しそうな顔つきになった。まさか私に騙されていたなんてって事でしょうね。
「流石に、それは見破れなかったな」
「さて、これはルトルン伯爵、あなたに書けと命じられたと言っています。一緒に来て頂けますね?」
「わかりました。ですが、息子は関係ないですよね? エルダ夫人、ガストンを頼みます」
観念したルトルン伯爵がエルダ夫人にガストン様を託した。
でもこれって、私を脅して爵位を奪おうとした罪って事よね?
じゃガストン様を罪に問えないの!?
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