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第55話
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「いえ、二人にもご同行して頂きます」
「彼らは関係ないでしょう」
確かにこの状況だと、ルトルン伯爵しか罪に問えない。
「今の件に関してはそうですが、ガストン子息には偽証を行った罪があります。レネット嬢が書類を提出していますからね」
あ、そっか。役所の怠慢だとしても、ガストン様が嘘をついた事には変わりはない。
「そして、エルダ夫人は、偽造未遂です」
「な、私が何を偽造しようとしたというの?」
「ガストン子息が偽造しようとした形跡がなかったので、よくよく調べてみたところ、あなたがレネット嬢が書いたと言って持ってきた書類を差し戻している事がわかりました」
エルダ夫人が、表情を強張らせた。心当たりがあるのね。
そう言えば、ガストン様がレリーフを押せと持ってきた書類には、サインはなかった。
また一から書き直して持ってきたとは考えづらい。
レリーフの事を言えば、サインをして持って行った事がわかるのだから。
ガストン様だったら、私に一から書き直させるはず。
とすればエルダ夫人が、ガストン様にそう言って渡せと言ったという方が、しっくりくるわ。
しかも学園へ行かなくてはいけないから、ちゃんと話を聞けなかった。
「業務報告書というものがあってね。なかには、担当を変え同じ事を繰り返す者もいるから、そういう事もそれに記載して、共有するそうだ。悪質な場合は、通報する仕組みになっている」
「………」
エルダ夫人は、マスティラン侯爵の話を黙って聞いている。いや、言い訳できないのね。事実だから。
「あなたには、グリンマトル伯爵の殺害容疑が掛かっています」
「なんですって! 実の兄を殺したと言うの!」
エルダ夫人が驚愕の声を上げた。
え? てっきりガストン様かと思ったのにエルダ夫人なの?
「お母様がそんな事をするわけないじゃない! 事故の日だって、叔父様を見て気を失ったんだから!」
「「………」」
アンナが庇うもガストン様もルトルン伯爵も何も言わない。
もしかして、そうなの?
「だからですよ。殺す気などなかった。足止めするつもりだった。なので彼の姿を見て気を失った」
マスティラン侯爵がエルダ夫人を見つめそう言った。
「今ここで、本当の事を言わないと、狡猾な彼に陥れられますよ、ウルミーシュ子爵夫人」
プロンテヌ侯爵がそう言うと、驚いたように振り向く。
「私では――」
「それって! 私の事ですかな? プロンテヌ侯爵」
エルダ夫人が口を開くと同時に、ルトルン伯爵がプロンテヌ侯爵に反論した。
「そうです。マスティラン侯爵がそう思っているのならそれを利用するのが、あなたでしょう」
「私ではないわ! 殺すわけないじゃない! 娘のアンナが卒業するのに一年あるのよ?」
エルダ夫人が、叫ぶように早口言った。かなり焦っているわね。
「ではあなたは、隠蔽に協力しただけだと?」
「そうよ! 犯人はガストンよ! アンナが見ていたのよ!」
「な……」
やっぱりガストン様だったのね!
実の兄が殺されたのに、ガストン様を庇っていたの? どうして? アンナにお願いされたから?
「え? 私知らないわ! お母様どういう事?」
うん? アンナがエルダ夫人の袖を引っ張り聞く。
「僕を騙したのか! アンナが見ていたって言ったじゃないか!」
ガストン様が、爆弾発言をした!
「このバカが!」
ルトルン伯爵の怒声で、ガストン様がハッとする。自白してしまったと、口をぱくぱくさせていた。
何か言い訳をしたいのだろうけど、思い浮かばないのね。
「え……ガストン様? お、叔父様を殺したの?」
「ち、違うんだ! あれは天気が悪くてそうなっただけで! 雨さえ降らなければ、馬車の故障で来れなくなるだけのはずだったんだ!」
それを聞いたアンナは、両手で顔を覆い泣き崩れる。アンナが泣き出したのを見たガストン様は固まった。
「息子の事を黙っている代わりに、グリンマトル伯爵家を乗っ取るのを手伝えと言って来た。もちろん息子は、殺すつもりなどなく、今言った様に足止めするつもりだった。まあ足止めしたからと、知れるのが遅くなるだけだと気づけない愚息だがな」
ため息交じりに、ルトルン伯爵が吐露した。
まさかグリンマトル家を乗っ取る為に協力を迫っただなんて。
四人は連行され、マスティラン侯爵と一緒に執務室を出て行った。
その後すぐに、ウルミーシュ子爵が入って来て、泣き崩れているアンナを連れて出て行き、プロンテヌ侯爵とフランシスク様と私の三人だけに。
「ありがとう、フランシスク子息。お陰で助かった」
「はい……」
「猶予は、君達が卒業するまで。では、私は一旦お暇する」
フランシスク様に告げると、プロンテヌ侯爵が軽く手を振り執務室を出て行った。
って、猶予って何の話なの!?
「彼らは関係ないでしょう」
確かにこの状況だと、ルトルン伯爵しか罪に問えない。
「今の件に関してはそうですが、ガストン子息には偽証を行った罪があります。レネット嬢が書類を提出していますからね」
あ、そっか。役所の怠慢だとしても、ガストン様が嘘をついた事には変わりはない。
「そして、エルダ夫人は、偽造未遂です」
「な、私が何を偽造しようとしたというの?」
「ガストン子息が偽造しようとした形跡がなかったので、よくよく調べてみたところ、あなたがレネット嬢が書いたと言って持ってきた書類を差し戻している事がわかりました」
エルダ夫人が、表情を強張らせた。心当たりがあるのね。
そう言えば、ガストン様がレリーフを押せと持ってきた書類には、サインはなかった。
また一から書き直して持ってきたとは考えづらい。
レリーフの事を言えば、サインをして持って行った事がわかるのだから。
ガストン様だったら、私に一から書き直させるはず。
とすればエルダ夫人が、ガストン様にそう言って渡せと言ったという方が、しっくりくるわ。
しかも学園へ行かなくてはいけないから、ちゃんと話を聞けなかった。
「業務報告書というものがあってね。なかには、担当を変え同じ事を繰り返す者もいるから、そういう事もそれに記載して、共有するそうだ。悪質な場合は、通報する仕組みになっている」
「………」
エルダ夫人は、マスティラン侯爵の話を黙って聞いている。いや、言い訳できないのね。事実だから。
「あなたには、グリンマトル伯爵の殺害容疑が掛かっています」
「なんですって! 実の兄を殺したと言うの!」
エルダ夫人が驚愕の声を上げた。
え? てっきりガストン様かと思ったのにエルダ夫人なの?
「お母様がそんな事をするわけないじゃない! 事故の日だって、叔父様を見て気を失ったんだから!」
「「………」」
アンナが庇うもガストン様もルトルン伯爵も何も言わない。
もしかして、そうなの?
「だからですよ。殺す気などなかった。足止めするつもりだった。なので彼の姿を見て気を失った」
マスティラン侯爵がエルダ夫人を見つめそう言った。
「今ここで、本当の事を言わないと、狡猾な彼に陥れられますよ、ウルミーシュ子爵夫人」
プロンテヌ侯爵がそう言うと、驚いたように振り向く。
「私では――」
「それって! 私の事ですかな? プロンテヌ侯爵」
エルダ夫人が口を開くと同時に、ルトルン伯爵がプロンテヌ侯爵に反論した。
「そうです。マスティラン侯爵がそう思っているのならそれを利用するのが、あなたでしょう」
「私ではないわ! 殺すわけないじゃない! 娘のアンナが卒業するのに一年あるのよ?」
エルダ夫人が、叫ぶように早口言った。かなり焦っているわね。
「ではあなたは、隠蔽に協力しただけだと?」
「そうよ! 犯人はガストンよ! アンナが見ていたのよ!」
「な……」
やっぱりガストン様だったのね!
実の兄が殺されたのに、ガストン様を庇っていたの? どうして? アンナにお願いされたから?
「え? 私知らないわ! お母様どういう事?」
うん? アンナがエルダ夫人の袖を引っ張り聞く。
「僕を騙したのか! アンナが見ていたって言ったじゃないか!」
ガストン様が、爆弾発言をした!
「このバカが!」
ルトルン伯爵の怒声で、ガストン様がハッとする。自白してしまったと、口をぱくぱくさせていた。
何か言い訳をしたいのだろうけど、思い浮かばないのね。
「え……ガストン様? お、叔父様を殺したの?」
「ち、違うんだ! あれは天気が悪くてそうなっただけで! 雨さえ降らなければ、馬車の故障で来れなくなるだけのはずだったんだ!」
それを聞いたアンナは、両手で顔を覆い泣き崩れる。アンナが泣き出したのを見たガストン様は固まった。
「息子の事を黙っている代わりに、グリンマトル伯爵家を乗っ取るのを手伝えと言って来た。もちろん息子は、殺すつもりなどなく、今言った様に足止めするつもりだった。まあ足止めしたからと、知れるのが遅くなるだけだと気づけない愚息だがな」
ため息交じりに、ルトルン伯爵が吐露した。
まさかグリンマトル家を乗っ取る為に協力を迫っただなんて。
四人は連行され、マスティラン侯爵と一緒に執務室を出て行った。
その後すぐに、ウルミーシュ子爵が入って来て、泣き崩れているアンナを連れて出て行き、プロンテヌ侯爵とフランシスク様と私の三人だけに。
「ありがとう、フランシスク子息。お陰で助かった」
「はい……」
「猶予は、君達が卒業するまで。では、私は一旦お暇する」
フランシスク様に告げると、プロンテヌ侯爵が軽く手を振り執務室を出て行った。
って、猶予って何の話なの!?
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