異世界で奏でるルーンと猫とフェアリーの三重奏

すみ 小桜(sumitan)

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第8話 生足最高!

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 隠れて行動しないといけないから精霊王を探すところじゃないだろう。はぁ……。死亡フラグが立ったな。

 「そんな顔しないの。あなたさえ変装が完璧になれば、わからないんだから」

 ヒトミンがそういうと、うんうんとまたヒナが頷いている。二人の変装? は完璧だ。一人は猫だもんな。

 「まさかフェアリーの恰好になれとか言わないよな?」

 絶対嫌なんだけど……。

 「それはないわ。赤居がそれを知っているからね。すぐに見つかっちゃうわよ」

 ヒトミンが言うと、うんうんとヒナが頷く。

 「でもねぇ。何着てもマントでばれちゃうのよねぇ」
 「そうね。マントを脱げないからそこが問題なのよね」

 今度は、ヒナの言葉にヒトミンが頷いている。

 「そう言われてもなぁ」
 『では色を変えるルーンを授けよう』
 「え? ありがとう。樹霊様」

 樹霊様って……。
 フフフと嬉しそうに不気味な笑い方をするヒナは、僕に振り向いた。

 「な、なに!?」
 「マントを脱いで。裏にルーンを描くから」
 「はい……」

 大人しく従っておこう。
 マントを手渡すと、銀色だったマントは紺色のマントに色が変わっていた。

 「すご。本当に色が変わった」
 「ちょっとだけ見てまわったんだけど、紺色が普通みたいなの。目立たなくていいでしょう」
 「ありがとう、ヒナ」

 僕は、さっそく羽織る。羽織っても色は紺色のままだ。

 「じゃ後は、ズボンをまくってもらうかな」
 「え……まくるの?」
 「せめてそれぐらい隠してよ。後ろから見えるの」

 マントの長けは、膝ぐらい。後ろからじゃなくてもひざ下は見える。ヒトミンに言われた通りに僕は膝上までまくった。

 「もっとまくるのよ!」
 「うわ~! 自分でやるから!」

 突然二人が、ぐいっとズボンを掴んだ。ヒトミンが右をヒナが左をぐるぐると巻いてあげていく。股座まで二人は僕のズボンをまくったのだ。なんかめちゃくちゃ恥ずかしい事をされた気分だ。
 二人は満足げに僕を後ろから見ている。

 「こうやって見ると、女の子ね」
 「靴がスニーカーなのがマイナスだけどね」

 二人がそう話している。僕が振り向くと二人は親指を立て突き出した。

 「「生足最高!」」

 なんだそりゃ。

 「制服なのがばれる前に着替えを買いましょう」
 「それがいい」

 ヒナがうんうんと頷き返す。

 『……マオ、頑張ってな』
 「あ、ありがとう」

 ヒトミンが黒猫に変身すると、ぴょんとヒナの肩に飛び乗った。

 「では、樹霊様行って参ります! また何かあったら宜しくね」

 それは、ルーンを授けてほしいという事だろうな。

 「行ってきます。とりあえず連絡は取り合おう」
 『そうだな。気を付けてな』

 僕らは手を振り、樹霊がいる湖から森へと入っていく。
 ……って、めちゃヒナが走るのが速いんだけど!

 まるで山で暮らすヒョウみたいだ。いやそんな場面見た事はないが、木々の間をすり抜けあっという間に見えなくなった。あれは、人間のスピードじゃない!

 「ちょっと遅いんだけど!」
 「ぜはぜは……人間のスピードで走ってよ!」

 僕の足が遅いとかそういう問題じゃないだろうに。

 『どうせ森の中だし、そのマントも手に持ったら? 飛んで移動の方が早いはずよ』
 「……そうする」

 そうしろと二人は、目で訴えていた。ヒナのマントと帽子はなぜか僕が持ったまま。そこに脱いだ自分のマントも足して持つ。杖を握りマントを抱えて僕は飛んで移動する。
 ヒトミンが言ったようにヒナの速さについていける。二人で行った時に戻りが早かったのはこのせいか。
 見られなければこれで移動もありかも。もう二人にこの姿を見られる事にためらいがなくなってきた。慣れって恐ろしい。

 驚く事に10分ほどで森を抜けた。僕はマントを羽織って歩く事になるので、スピードダウン。

 「今、何時なのかしらね」
 「同じ24時間だといいんだけど」

 ヒトミンが言うと、ぼぞっとヒナが呟く。まあ24時間かどうかは別として、人間が暮らしていける環境なのは間違いない。
 気候は穏やかのようだけど、凄く乾燥している。地面のひび割れがあちこちにある。日は差しているけど汗ばむほどの気温はない。このひび割れは、雨が少ないからかも。現に空には雲一つない青空だ。

 「いい天気ね」

 僕が空を見上げていると、ヒトミンが言った。

 道を歩くのは僕らだけじゃなかった。荷物を背負った団体が歩いているのが遠くに見えた。

 「あの人達、まだあんなところにいる」
 『帰りに森に入るぐらいに出会ったのよね。驚いて振り向いていたわ』
 「もしかして、森だけじゃなくて道もあの速さで走ったの?」
 「うん? あれよりは遅いけど走った」

 それじゃ驚くだろう。それにそうじゃないと、あの時間には戻ってこれないよな。
 今、僕らが移動するスピードもかなり速い。走っているんですか? というぐらいのスピードで早歩きしている……。

 僕らは、また驚かれながらも荷物を担ぐ団体さんを追い越した。
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