【完結】ケーキの為にと頑張っていたらこうなりました

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
24 / 83

第24話

しおりを挟む
 このスマイルは、令息の仮面ではないですか。
 この前の子供らしい屈託のない笑顔の方が好きだけど仕方がないよね、貴族なら。

 「ご招待頂き、ありがとうございます」

 私は、カーテシーをして挨拶をする。

 「制服も似合っていたけど、今日のドレスも素敵だよ」

 殺し文句か。って、貴族って大変ね。そういう誉め言葉も言わないといけないなんて。

 今日のドレスは、リサおばあ様に選んで頂いた淡い黄色のドレス。オレンジ色や金色のアクセントの模様が描かれている。
 髪はハーフアップで、横髪をオレンジのリボンと一緒に編み込んである。

 今までで一番、おしゃれをしたのではないだろうか。
 これもリサおばあ様の指示。
 失礼があってはいけないものね。

 「ありがとうございます」
 「こっちだよ」

 屋敷には入らず、庭園の奥へと進む。
 色とりどりの花達が、道の脇に植えられている遊歩道。凝っている。

 「素敵ね」
 「あ、気に入った? 殺風景だから植えたんだ。って植えたのは庭師だけどね」
 「え? これって、レオンス様の案なのですか」
 「案というか、私は素朴な花がすきだからさ、そんなの花壇に植えてくれないんだ。だから脇に……」
 「なるほど」

 貴族ともなると、それなりの花しか愛でないって事か。

 「さあ、どうぞ。母上も一緒だけどね……」
 「はじめまして。ファビア嬢。レオンスの母ですわ」

 茶色の髪に瞳のご婦人がそこに居た。
 レオンス様の母親だと言うだけあって、顔立ちが似ている。うん。レオンス様は、母親にね。髪色が違うからそこは父親かしらね。

 「お初にお目にかかります。ファビア・ブレスチャです」
 「さあ、お座りになって」

 四人で丸テーブルを囲う。
 タカビーダ侯爵夫人の左隣にレオンス様、その隣がエメリック様で更にその隣が私。なので、私の左隣はタカビーダ侯爵夫人だ。緊張するわ。

 「エメリックも久しぶりだこと」
 「はい。ご無沙汰しております」
 「私は、たまに会っていたけどね」

 エメリック様は、学校に行っていないけどレオンス様が魔法学園に通っているから、たまにしか会えなくなったって事よね。

 紅茶が注がれいい香りが漂うけど、それよりも目の前のケーキが気になる!
 やはり見た事がないケーキがあるわ!

 「っぷ。そんなガン見しなくても」

 っは、しまった。
 レオンス様が、クスクスと笑っている。

 「ケーキがお好きと聞いておりましたが、それほどとは。どうぞ、遠慮なくお召しになって。彼女の皿に取って差し上げて」

 使用人に私の皿に乗せろと命じたところを見ると、ここでは自身で取ってはダメなのね。
 って、タカビーダ侯爵夫人は自分で取っていらっしゃる。

 という事は、私の分はこれだけって事か。味わって食べなくてはいけないわね。

 「いただきます」

 パクリと一口食べれば、口に広がる贅沢な味と香り。ブルーベリーが美味しいわ。こういうベリー系って、そうそう食べられないのよね。

 うん? 正面に座るレオンス様が私を凝視している。
 食べ方が変だったかしら。

 「教えたの?」
 「うん。学校で流行っているんだってね」

 『いただきます』と言うセリフかぁ。
 あわわわ。学校で流行ってなんていないから変に思われちゃう。

 「それもおいしいけど、あれもお薦めだよ」

 スルーしてくれた。まあどうでもいいのかもしれないけど。
 レオンス様が薦めたのは、一番シンプルなケーキ。他のケーキにはフルーツが乗っているのに、これにはない。

 ブルーベリーのケーキを食べ終わると、違う皿にレオンス様のお薦めケーキを使用人が取ってくれて、私の前に食べ終わったケーキ皿と交換して、置いてくれた。
 ごくんと生唾を飲み込む。

 ジーっと、レオンス様が私を見つめている。
 早く食べて感想を聞かせろって事だろうか。

 「いただ……」

 おっとまた言う所だった。
 誤魔化すようにパクリとケーキにかぶりつく。

 これは!!!
 この鼻に抜けるコーヒーの香ばしい香り。甘さ控えめなコーヒークリームにスポンジ。
 チョコレートケーキより薄い茶色のスポンジだと思ったらコーヒーケーキだったのね。クリームも良く見れば、白ではない。

 「どう?」
 「はい。美味しいです!! 大人の味がします」

 私が感動して言えば、レオンス様が満足そうに微笑んだけど、両隣が笑いを殺して笑っている。なぜに?

 「うふふ。美味しいでしょう? この国にはないコーヒーと言う食べ物なのよ。旅行に行った時にね、食べて感動したから取り寄せて作らせたのよ。レオンスも大好きでね、ケーキと言えばこれなのよ」
 「僕も普通に食べるから、別に大人用ではないよ」

 っは! この世界では大人の飲み物ではないのね。
 って言うか、11歳のレオンス様のお薦めだったわ。
 余計な一言をって恥をかいたぁ!
 私は真っ赤になって俯く。

 コーヒーって存在していたのね。タカビーダ侯爵夫人の話し方だと、飲み物として存在していないかもしれないけど。

 「笑ってごめん」
 「可愛らしいお嬢さんね」

 うううう。ケーキが少しほろ苦いわ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約者が最凶すぎて困っています

白雲八鈴
恋愛
今日は婚約者のところに連行されていました。そう、二か月は不在だと言っていましたのに、一ヶ月しか無かった私の平穏。 そして現在進行系で私は誘拐されています。嫌な予感しかしませんわ。 最凶すぎる第一皇子の婚約者と、その婚約者に振り回される子爵令嬢の私の話。 *幼少期の主人公の言葉はキツイところがあります。 *不快におもわれましたら、そのまま閉じてください。 *作者の目は節穴ですので、誤字脱字があります。 *カクヨム。小説家になろうにも投稿。

【完結】義姉上が悪役令嬢だと!?ふざけるな!姉を貶めたお前達を絶対に許さない!!

つくも茄子
ファンタジー
義姉は王家とこの国に殺された。 冤罪に末に毒杯だ。公爵令嬢である義姉上に対してこの仕打ち。笑顔の王太子夫妻が憎い。嘘の供述をした連中を許さない。我が子可愛さに隠蔽した国王。実の娘を信じなかった義父。 全ての復讐を終えたミゲルは義姉の墓前で報告をした直後に世界が歪む。目を覚ますとそこには亡くなった義姉の姿があった。過去に巻き戻った事を知ったミゲルは今度こそ義姉を守るために行動する。 巻き戻った世界は同じようで違う。その違いは吉とでるか凶とでるか……。

悪役令息(冤罪)が婿に来た

花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー 結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!? 王女が婚約破棄した相手は公爵令息? 王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした? あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って…。 その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た。 彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す。 そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を。 彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を。 その数日後王家から正式な手紙がくる。 ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」 イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する。 「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」 心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ! ※ざまぁ要素はあると思います。 ※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております。

“足りない”令嬢だと思われていた私は、彼らの愛が偽物だと知っている。

ぽんぽこ狸
恋愛
 レーナは、婚約者であるアーベルと妹のマイリスから書類にサインを求められていた。  その書類は見る限り婚約解消と罪の自白が目的に見える。  ただの婚約解消ならばまだしも、後者は意味がわからない。覚えもないし、やってもいない。  しかし彼らは「名前すら書けないわけじゃないだろう?」とおちょくってくる。  それを今までは当然のこととして受け入れていたが、レーナはこうして歳を重ねて変わった。  彼らに馬鹿にされていることもちゃんとわかる。しかし、変わったということを示す方法がわからないので、一般貴族に解放されている図書館に向かうことにしたのだった。

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

【完結】引きこもりが異世界でお飾りの妻になったら「愛する事はない」と言った夫が溺愛してきて鬱陶しい。

千紫万紅
恋愛
男爵令嬢アイリスは15歳の若さで冷徹公爵と噂される男のお飾りの妻になり公爵家の領地に軟禁同然の生活を強いられる事になった。 だがその3年後、冷徹公爵ラファエルに突然王都に呼び出されたアイリスは「女性として愛するつもりは無いと」言っていた冷徹公爵に、「君とはこれから愛し合う夫婦になりたいと」宣言されて。 いやでも、貴方……美人な平民の恋人いませんでしたっけ……? と、お飾りの妻生活を謳歌していた 引きこもり はとても嫌そうな顔をした。

元アラサー転生令嬢と拗らせた貴公子たち

せいめ
恋愛
 侯爵令嬢のアンネマリーは流行り病で生死を彷徨った際に、前世の記憶を思い出す。前世では地球の日本という国で、婚活に勤しむアラサー女子の杏奈であった自分を。  病から回復し、今まで家や家族の為に我慢し、貴族令嬢らしく過ごしてきたことがバカらしくなる。  また、自分を蔑ろにする婚約者の存在を疑問に感じる。 「あんな奴と結婚なんて無理だわー。」  無事に婚約を解消し、自分らしく生きていこうとしたところであったが、不慮の事故で亡くなってしまう。  そして、死んだはずのアンネマリーは、また違う人物にまた生まれ変わる。アンネマリーの記憶は殆ど無く、杏奈の記憶が強く残った状態で。  生まれ変わったのは、アンネマリーが亡くなってすぐ、アンネマリーの従姉妹のマリーベルとしてだった。  マリーベルはアンネマリーの記憶がほぼ無いので気付かないが、見た目だけでなく言動や所作がアンネマリーにとても似ていることで、かつての家族や親族、友人が興味を持つようになる。 「従姉妹だし、多少は似ていたっておかしくないじゃない。」  三度目の人生はどうなる⁈  まずはアンネマリー編から。 誤字脱字、お許しください。 素人のご都合主義の小説です。申し訳ありません。

【完結】母になります。

たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。 この子、わたしの子供なの? 旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら? ふふっ、でも、可愛いわよね? わたしとお友達にならない? 事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。 ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ! だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。

処理中です...