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第25話
しおりを挟む好きだと言うだけあって、レオンス様はコーヒーケーキをパクパクと食べていた。幸せそうだ。頬をほころばせて食べているのを初めて見たかもしれないわ。
まあティータイムをご一緒したのは、数度だけど。
「聞きましてよ。今日は学年末テストの合格祝いだとか」
「……はい。ありがとうございます」
「ファビア嬢は、属性は何ですの?」
「いえ、私はないです……」
「え?」
「母上。彼女は、無属性なのです」
「まあ。それで魔法学園に合格して、ちゃんと上の学年に行けるなんて凄いですわね」
目をぱちぱちとして驚きを表現するタカビーダ侯爵夫人。
「それだけはありません。彼女は来年『B』クラスです」
「なんですって!?」
Bクラスだと聞いたタカビーダ侯爵夫人は、私を凄い目で凝視する。
「Bクラスってそんなに凄いの?」
エメリック様の質問に、レオンス様が頷く。
「私と同じで、2属性の魔法を使える者が入るクラス。Aクラスになると3属性以上になる。ほとんど存在しないけどね」
あははは。ここに存在します。
って、魔法学園に通う生徒なら教われば使えると思う。呪文自体は、教科書に載っている。
出来ないと思っているから試してないだけだと思う。
「えぇ!? 水属性を使えるようになったって聞いたけど、他の属性も使えるようになったって事?」
「うーん。元々素質がないと学園では扱わない」
「うん? どういう事?」
「彼女は元々、その素質を持っていたって事だね」
両側から凄い視線が注がれている。
「あなた、無属性とおっしゃいませんでした?」
「そうなの?」
はい。無属性です。どう説明すればいいだろうか。
「えぇと、無属性にも二通りありまして。一つは何も扱えない名の通りに属性がなし。もう一つが、同じぐらいの素質がある属性が複数あって、その為、結果的に無属性って出るタイプ。私は、後半になります」
「まあ。それでは、レオンスより優れているとおっしゃるの?」
「え? そうなの?」
「いえ、えーと……」
もしかして私、言い方間違えた?
これではまるで、属性持ちより優れているのよって言った様に思われているわよね。
「秀でた素質を持っていないって事だよ。後は学校で頑張れば、両方とも伸ばせるって事」
レオンス様が助け舟をだしてくれた。
私は、そうそうと頷く。
「そもそも2つ目の属性の素質を持っていたとしても、あのテストをクリアできるまでに持っていくのには、根性と言うかやる気がないと無理だろうね。1属性できれば、次の学年に行けるのだし、魔法博士になるのにも問題ないのだから」
「そ、そうですね……」
レオンス様の解説に私は、消え去りそうな声で相槌を打つ。
11歳でこの解説。凄すぎる。
「なるほど。ファビア、頑張ったんだね」
「えっと……レオンス様を目標に頑張っています!」
「まあ。それで2属性を使えるようになるんて、努力家なのね」
ふう。何とか、この場は収まったかな。
「そうだ。レオンスの試験はどんなだったの?」
「私のは、的に当てるだけだよ」
だけだよって。
的は動かないとはいえ、魔法を飛ばし当てなくてはいけない。
物を投げて的に当てるのって、思ったより大変じゃない?
2年次の試験を見ていたけど、3回投げて1回当てられればいいというテストだった。
距離は10m。太さ30cmの棒に当てるというもの。
コントロールが問われるテストよ。
レオンス様は、3回とも見事に当てていたけどね。
「へえ。ファビアのより簡単そうだけど難しいの?」
「コントロールさえ上手くいけば、さほど難しくない」
「……でも、3回外したら退学になるから皆真剣だったよね」
「まあね。授業は、魔法を手元に出すだけではなく、飛ばす方法を学ぶんだ。それが出来るようになると、後は試験の為に的当てになる」
「え? それだけになるの?」
「魔法はね。後は魔法陣を覚える。かな? こっちは筆記試験だけど」
「な、なんか難しそうだね」
私達の会話を聞いていたエメリック様が、小難しい顔つきで言った。
その後、なぜかタカビーダ侯爵夫人の趣味のバラの話になって、ほどほどの所でお開きとなった。
「ご馳走様でした」
って、言っていいんだよね?
「ケーキ、堪能できた?」
「はい。とても美味しかったです」
「それはよかった」
私達が玄関へと向かうと、私達が乗って来たのとは違う馬車が止まっている。
よく見れば、タカビーダ侯爵家の家紋がついた馬車だ。タカビーダ侯爵でもお戻りになったのだろうか。
「まあ、アマート、どうしたの?」
「お客様ですか……あ、エメリック。久しぶり。少し体調が悪かったので、早退してきました」
そう言った彼は、レオンス様同様金の髪に金の……いや少し赤が入っている金の瞳。
「大丈夫か」
「はい。兄上。えーと……」
アマート様が私を見た。
慌ててカーテシーをして礼をする。
「アマート。具合が悪いのなら部屋へ行きなさい」
「はい。母上。失礼します」
名乗ろうと思ったけど、タカビーダ侯爵夫人が急かす様に言ったので、彼には名乗らなくていいって事よね。
アマート様の方が、レオンス様より少し背が高いから兄なのかと思ったけど、レオンス様を兄と言っていたので弟よね。
兄弟がいるなんて知らなかったわ。
「では、気を付けて帰ってね。また学園で」
「はい。今日はありがとうございました」
「失礼します」
私達は、馬車へと乗り込んだ。
レオンス様が軽く手を振っている。私達も手を振り返した。
バラのアーチをくぐり、タカビーダ侯爵邸を後にするのだった。
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