1 / 84
001 プロローグ
しおりを挟む
「で、僕に話って何?」
僕の部屋として使っている錬金部屋に、僕が所属する『晴天』のギルドマスターのトムが入って来た。
この頃は、僕を置いてギルドメンバー全員がクエストに向かっている。今日もそのはずだ。
「この部屋も見納めか」
僕の質問に答えず、部屋を見まわしている。
うん? 見納め?
「見納めって? 拠点を移すの?」
「いいや。この部屋ごと錬金ギルド協会に売る事になった」
「え……。なんで!? ここの存在を隠してきたのに?」
「金になるからさ。これはメンバーの意向だ」
「メンバーって。彼らはここの事を知らないじゃないか!」
正確には、この部屋の秘密をだ。
それを隠す為に、僕にこの部屋を与えたんだよね?
ごちゃごちゃはしているけど、普通の個室の倍ある部屋の為に、贔屓だと言われ無能のくせにとメンバーから厄介者扱いされる始末。
冒険者でありながら僕は戦えない。
だから無能と見られても仕方がないけど。
でも、僕のスキルはかなり役に立っている。メンバーが知らないだけで。
「わかってる。だが、君を追い出さないと半数が抜けるといいだした」
「え……」
そこまで厄介者として見られていたの?
「待って。僕が作ったポーションをメンバーは使っているよね? Eポーションと変わらないって」
「そうだな。それは感謝している。けど……Eポーションではない」
「それは、Eランクになれなかったから……」
「あぁ。錬金術師としても無能だと……」
は? 錬金スキルを取得したのは僕の意思じゃないじゃないか!
そして、Eランクになれなかったのも僕のせいじゃない!
それに……。
「僕は、冒険者だ! クエストに連れて行ってくれないからポーション作りをしているだけじゃないか」
「しかたないだろう。今や君のテリトリーは必要ないのだから」
そうかもしれない。
僕のスキル『テリトリー』は、敵の攻撃を阻むものでなく邪霧を退けるだけ。それに範囲が狭いのでメンバーが多くなれば、彼らが戦いづらいのも確かだ。
そして、邪霧を退ける魔道具がギルドから貸し出されるようになり、僕がクエストに参加する意味はなくなった。
「……シューさんとノガさんはなんて」
「彼らもメンバーと同じ意見だそうだ」
「そう……」
二人は、この拠点を購入した時からいるメンバーだ。
そして、僕のスキルに一番あやかった人たちでもある。その2人も僕に出ていけって言ってるのか。
悲しいけど、なら仕方ないかな。
僕は戦闘以外でかなり貢献したと思うのだけど。
そこは評価してもらえなかったんだ……。
「確認だけど、拠点は解除する事になるけどいいんだよね?」
僕の固有スキル『テリトリー』は、邪霧を退けるだけではなくテリトリー内に色んな効果をもたらすものだ。
その一つに、固定した場所を拠点とする能力があって、その場所を自動的に修繕する効果があった。
ギルド『晴天』の拠点の建物は、森の麓のギルドタウンに建っていて、中古で売り出されていたのを二束三文で買った。
普通に修繕すれば、凄くお金がかかったはずだ。それをトムに頼まれて僕のスキルを使って修繕した。
だが、メンバーはそれを知らない。
「あぁ、もう必要ない。なにせ、この部屋を売れば魔道具を格安で買えるからな」
「え……」
この部屋を売ったお金や修繕費用が浮いた分を邪霧を退ける魔道具に使うっていうの? しかも1年では、ここまで修繕できないはずだ。
やっぱりトムは、僕を利用しただけだったんだ。
成り行きで、錬金スキルを取得する事になったけど、そうなるように仕向けた。
確かに、Fランク錬金スキルのお金は出してくれたけど、それさえ彼の思惑だったのかも。
「契約のせいで、みんなに説明できなくてわるかったな」
そうだ。そのせいで、拠点の秘密は言えない事になっている。しかしその契約は、今日で切れたはずだけど。
でもメンバーに言う気はないって事だよね。
「この部屋いくらで売れるって?」
「魔十金貨1枚」
嬉しそうにトムは、手直にある魔道具に触れた。
魔十金貨1枚だって!? それなら錬金部屋を売って邪霧を退ける魔道具を買っても、約束通りEランクスキルを買うお金が出せるよね?
「それなら約束通り、魔法陣スキルのお金くれないかな?」
「無理だな」
「なんで!?」
「元々買うならお金はかからないから」
「………」
そっか。僕の分も彼が買うならタダだった。だから気軽に出してやるって言ったんだ。だから手元から出したくないと。
「仕方がないだろう。3年修行しろって言うんだから。まあBランクギルドに籍を置いていたっていう実績があればなんとかなるだろう。ただし、違う街でだけどな。ここに残っても宛てはないだろう」
この街を出て行けって事か。
『こんなやつ、こちらか見限ってやりましょう』
チャルの言葉に僕は静かに頷いた。
僕の足元に、僕の髪色と同じシルバーグレーの毛色の猫がすりよる。瞳も僕と同じ銀色。
この子は、僕の使い魔だ。
チャルの姿は僕にしか見えない。
――拠点を解除しますか?
はい。
――拠点を解除しました。
「お世話になりました。僕は、この街を出ます」
「街から出て行くのが賢明だ。君の噂はあまりよくないからな」
トムが、頷きそう言う。
噂ね。このギルドに入る前からデマが流れていて、後から入って来たメンバーによい印象がなかった。
そして、戦えない僕はただついて来るだけの魔石泥棒と言われるようになった。
トムに頼まれて、魔獣が落とす魔石を拾ってるだけだったが、錬金に魔石を使うので全て奪ってると思われていたみたいだ。
僕は、建物を出て振り返る。
本当に立派になったよなぁ。あんなにボロボロだったのに。
『ラシル様。あんな奴の事なんて気にする事ありません。私は戦闘も出来ますので、ラシル様をお守りします!』
「うん。ありがとう。さあ、まずは旅の準備でもしようか」
『はい』
僕は決心した。この子達の為にスキルを使おうと――。
僕の部屋として使っている錬金部屋に、僕が所属する『晴天』のギルドマスターのトムが入って来た。
この頃は、僕を置いてギルドメンバー全員がクエストに向かっている。今日もそのはずだ。
「この部屋も見納めか」
僕の質問に答えず、部屋を見まわしている。
うん? 見納め?
「見納めって? 拠点を移すの?」
「いいや。この部屋ごと錬金ギルド協会に売る事になった」
「え……。なんで!? ここの存在を隠してきたのに?」
「金になるからさ。これはメンバーの意向だ」
「メンバーって。彼らはここの事を知らないじゃないか!」
正確には、この部屋の秘密をだ。
それを隠す為に、僕にこの部屋を与えたんだよね?
ごちゃごちゃはしているけど、普通の個室の倍ある部屋の為に、贔屓だと言われ無能のくせにとメンバーから厄介者扱いされる始末。
冒険者でありながら僕は戦えない。
だから無能と見られても仕方がないけど。
でも、僕のスキルはかなり役に立っている。メンバーが知らないだけで。
「わかってる。だが、君を追い出さないと半数が抜けるといいだした」
「え……」
そこまで厄介者として見られていたの?
「待って。僕が作ったポーションをメンバーは使っているよね? Eポーションと変わらないって」
「そうだな。それは感謝している。けど……Eポーションではない」
「それは、Eランクになれなかったから……」
「あぁ。錬金術師としても無能だと……」
は? 錬金スキルを取得したのは僕の意思じゃないじゃないか!
そして、Eランクになれなかったのも僕のせいじゃない!
それに……。
「僕は、冒険者だ! クエストに連れて行ってくれないからポーション作りをしているだけじゃないか」
「しかたないだろう。今や君のテリトリーは必要ないのだから」
そうかもしれない。
僕のスキル『テリトリー』は、敵の攻撃を阻むものでなく邪霧を退けるだけ。それに範囲が狭いのでメンバーが多くなれば、彼らが戦いづらいのも確かだ。
そして、邪霧を退ける魔道具がギルドから貸し出されるようになり、僕がクエストに参加する意味はなくなった。
「……シューさんとノガさんはなんて」
「彼らもメンバーと同じ意見だそうだ」
「そう……」
二人は、この拠点を購入した時からいるメンバーだ。
そして、僕のスキルに一番あやかった人たちでもある。その2人も僕に出ていけって言ってるのか。
悲しいけど、なら仕方ないかな。
僕は戦闘以外でかなり貢献したと思うのだけど。
そこは評価してもらえなかったんだ……。
「確認だけど、拠点は解除する事になるけどいいんだよね?」
僕の固有スキル『テリトリー』は、邪霧を退けるだけではなくテリトリー内に色んな効果をもたらすものだ。
その一つに、固定した場所を拠点とする能力があって、その場所を自動的に修繕する効果があった。
ギルド『晴天』の拠点の建物は、森の麓のギルドタウンに建っていて、中古で売り出されていたのを二束三文で買った。
普通に修繕すれば、凄くお金がかかったはずだ。それをトムに頼まれて僕のスキルを使って修繕した。
だが、メンバーはそれを知らない。
「あぁ、もう必要ない。なにせ、この部屋を売れば魔道具を格安で買えるからな」
「え……」
この部屋を売ったお金や修繕費用が浮いた分を邪霧を退ける魔道具に使うっていうの? しかも1年では、ここまで修繕できないはずだ。
やっぱりトムは、僕を利用しただけだったんだ。
成り行きで、錬金スキルを取得する事になったけど、そうなるように仕向けた。
確かに、Fランク錬金スキルのお金は出してくれたけど、それさえ彼の思惑だったのかも。
「契約のせいで、みんなに説明できなくてわるかったな」
そうだ。そのせいで、拠点の秘密は言えない事になっている。しかしその契約は、今日で切れたはずだけど。
でもメンバーに言う気はないって事だよね。
「この部屋いくらで売れるって?」
「魔十金貨1枚」
嬉しそうにトムは、手直にある魔道具に触れた。
魔十金貨1枚だって!? それなら錬金部屋を売って邪霧を退ける魔道具を買っても、約束通りEランクスキルを買うお金が出せるよね?
「それなら約束通り、魔法陣スキルのお金くれないかな?」
「無理だな」
「なんで!?」
「元々買うならお金はかからないから」
「………」
そっか。僕の分も彼が買うならタダだった。だから気軽に出してやるって言ったんだ。だから手元から出したくないと。
「仕方がないだろう。3年修行しろって言うんだから。まあBランクギルドに籍を置いていたっていう実績があればなんとかなるだろう。ただし、違う街でだけどな。ここに残っても宛てはないだろう」
この街を出て行けって事か。
『こんなやつ、こちらか見限ってやりましょう』
チャルの言葉に僕は静かに頷いた。
僕の足元に、僕の髪色と同じシルバーグレーの毛色の猫がすりよる。瞳も僕と同じ銀色。
この子は、僕の使い魔だ。
チャルの姿は僕にしか見えない。
――拠点を解除しますか?
はい。
――拠点を解除しました。
「お世話になりました。僕は、この街を出ます」
「街から出て行くのが賢明だ。君の噂はあまりよくないからな」
トムが、頷きそう言う。
噂ね。このギルドに入る前からデマが流れていて、後から入って来たメンバーによい印象がなかった。
そして、戦えない僕はただついて来るだけの魔石泥棒と言われるようになった。
トムに頼まれて、魔獣が落とす魔石を拾ってるだけだったが、錬金に魔石を使うので全て奪ってると思われていたみたいだ。
僕は、建物を出て振り返る。
本当に立派になったよなぁ。あんなにボロボロだったのに。
『ラシル様。あんな奴の事なんて気にする事ありません。私は戦闘も出来ますので、ラシル様をお守りします!』
「うん。ありがとう。さあ、まずは旅の準備でもしようか」
『はい』
僕は決心した。この子達の為にスキルを使おうと――。
407
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【完結】かみなりのむすめ。
みやこ嬢
キャラ文芸
【2022年2月5日完結、全95話】
少女に宿る七つの光。
それは守護霊や悪霊などではなく、彼女の魂に執着する守り神のような存在だった。
***
榊之宮夕月(さかきのみや・ゆうづき)は田舎の中学に通う平凡でお人好しな女の子。
夢は『可愛いおばあちゃんになること』!
しかし、ある日を境に日常が崩壊してしまう。
虚弱体質の兄、榊之宮朝陽(さかきのみや・あさひ)。謎多き転校生、八十神時哉(やそがみ・ときや)。そして、夕月に宿る喜・怒・哀・楽・愛・悪・欲の七つの魂。
夕月のささやかな願いは叶うのか。
***
怪異、神様、友情、恋愛。
春の田舎町を舞台に巻き起こる不思議。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる