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第1話

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 俺は、地べたに座り幼馴染を抱き上げていた。その彼は、血だらけだ!

 「死ぬな! 死なないでくれディー!」

 俺の瞳からは、涙が零れ落ちて行く。
 それを拭くかのように、ディーは手を俺の頬に這わせた。その手は、血で染まっている。

 「レオ……君との旅は楽しかった」

 そう言うと、頬に這わせた手を首に回し、体を起こそうとする。

 「大人しく……」

 俺が言葉を発しようとすると、ディーはそれを止めた。
 ディーの唇が、俺の唇に触れたのだ。
 何が起きたか一瞬わからなかったが、初めてのキスの味は血の味がした。

 「お……ま……」

 頬が熱い。

 「ごめんね……」

 ディーはそう言うと、ぐったりとしてしまう。
 相手は男だ。俺も男だ。それでも嫌じゃなかった……。

 そうじゃない! このままだとディーが死んでしまう!
 そうだ、兄さん!

 顔を上げれば、兄さんは魔法と剣で何かと戦っていた――。

 あれ……これって――。

 ―――― ――― ―― ― ・

 目が覚めた。体は、汗でべったりで、心臓はバクバクとしている。
 夢? いや、これって予知だろう?
 マジか! じゃ未来に訪れるかもしれない出来事じゃないか!

 俺は、ガバッと体を起こす。
 ディーって、俺の事を好きだったのか?
 ――いや、そこじゃないだろう。このままだと、ディーは死ぬ!
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