心配性の婚約者がこっそり覗き見していますがバレバレです

すみ 小桜(sumitan)

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003一緒にスタート地点に立てました

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 「うん。思った通り似合ってる」

 頬を染めてリュデロさんが私を見て言った。
 私は、マール魔法学園の真新しい制服を着ている。
 上着にはマールル国の紋章入りのボタンが四つ着いている。袖にも小さいボタン。スカートはふんわりしていて上下とも水色。
 そして、驚く事にマントのような羽織りものがある。これは白色で、丈は腰ほど。
 学校の制服というよりは、魔法使いとかの衣装みたい。

 「行って来ます」
 「いってらっしゃい。頑張ってな」
 「はい」

 二人に見送られて私は学園へと歩く。
 私と同じ格好の人達がいっぱい。ドキドキする~!
 あんな事やこんな事を目の前で見れちゃうのね!

 うん? チラッと斜め後ろを見るとリュデロさんが物陰から私を見ている!?
 怪しさ満点だから止めて!
 でもまあ、学園までだろうし、放っておこう。

 期待を胸に私は、学園の門をくぐる。

 「新入生の方はこちらです」

 そう声が聞こえ、私はその声の方へ進む。
 あぁ! あの人は!
 ふんわりウェーブの黒髪は胸まであり、クリッとした瞳。スーッと伸びた背筋。
 魔女もといアリサリアさん! いわゆる悪役令嬢役!
 っと、それは後の呼び名だったわ!
 始まりの時は、聖女サリア様!
 私は、どちらなのか聞きに走った。
 いや、年齢をね。

 「あの! 何年生ですか!?」
 「え?」
 「あ……」

 しまったぁ。いきなりこんな質問したら驚くよね……。
 って、今思い出したけど新入生の受付をしてるって事は、中等部二年だわ。じゃ、ゲームの始まりじゃない! すごーい! 初めから堪能できるなんて!
 って、喜んでいる場合じゃなかった。サリア様が驚いて目をぱちくりしてる。

 「おい、君!」

 げ!! これって取り巻き達だわ!
 男女数人に取り囲まれた~!

 「おやめなさい。私は、中等部二年よ。アリサリアといいます。あなたは?」
 「え……えっと。リンです」
 「中等部一年のリン・キュードルさんね。どうぞ」

 彼女は、ポンッと手品の様に右手にお花を出した。白いユリの様な感じ。
 それを私の髪に止めた。いやそれ本当は、胸に付けるんじゃなかった?

 「あの……」

 うん? あ~~!! ヒロインの登場!
 サリア様とは対照的に、髪は肩ぐらい短い銀の髪。
 そして、私と同じ庶民!!
 名前は……主人公は、自分で名前を決められたからなぁ。

 って! ずっと先の木の陰にそわそわして、こちらを心配そうに伺うリュデロさんの姿がぁ!!
 学園内まで入って来たのね……。
 放っておいて大丈夫かしら?

 「私、中等部に入学するビアンカです」

 そうそう! デフォルトはビアンカよ!

 「はい。ビアンカ・マーチアさん」

 そう言って、サリア様はビアンカの胸に花を付けたのだった。
 あれ? 私だけ頭?
 うん? そう言えば、このくだり……主人公の脳内セリフじゃなかった!?
 私がヒロイン? ……ないない!
 取りあえず、目立ってるからリュデロさんを帰そう!

 私は、くるっと振り向くと、スタスタとリュデロさんに向かう。彼は、ハッとしておろおろしている。

 「何をしているの?」
 「大丈夫だった!?」
 「……大丈夫だけど」

 そう思っているなら助けに入るとかすればいいのに。
 はぁ……。

 「もう、大丈夫だから仕事に戻って」
 「うん……。迎えに来るからね!」
 「だから、いらないって……」

 私の言葉が聞こえなかったのか、手を振り門から出て行った。
 よし! これで心置きなく堪能できるわ!
 私は、入学式の会場へ向かった。
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